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【小説・好追感謝】不完全燃焼9

  先日、ファンモンの久しぶりの再結成となったという東日本大震災から10年という歌番組を見てもう10年かということばにできない感情があふれでた。あの日のことは今でも鮮明に覚えているがいつかその日のことを記したいと思う。

 昨日は久しぶりに楽しいサッカーができた。何年ぶりだろうか。卑屈なプライドをさらけ出すことに嫌気がさして中年、おっさんのリーグに何度か誘われたが選手登録を回避していた。ちょうどそのときに「楽しむことが憚れる」サッカーに関わるようになった。高校のサッカー部のお手伝いをするようになり、コーチとは呼ばれるがコーチと呼ばれるほど部員に接する時間はほかのコーチと比べて圧倒的に少ない。なんか微妙な立場の立ち位置だった。ただ、きついトレーニングの中でも楽しいという要素を入れることを常に考えていたので部員からは「楽しい」といわれていたことは今でも少し思い出すと嬉しい。

 そんな自分の高校のサッカーはそのようなものとはほど遠い環境であった。まず、監督がいない。高2になったときには高3の先輩からコントロールされることはなく、好き勝手にしていた。目標は「一番自分が目立つ」ことだった。また、高2なってはじめて彼女と呼べるひとができた。正直、かなり嬉しかった。ラルフローレンのタオルをもらうことがその当時流行っていたのかわからないが家庭の匂いがするタオルではなくよそいきの茶色のラルフローレンのタオルをもらったと思う。そして、毎週土曜日に彼女と待ち合わせて1時間から2時間ただ話すのだった。本当にあっという間に時間が過ぎていく。「こんな楽しいことがあるんだとただ好きな人と話すだけで。」また、高校生定番のデートコースにもいったが本当に恥ずかしいが手をにぎるのが精一杯だったのが今でも後悔している。貧乏家庭でおしゃれなごはん屋など家族で知っているものはいなかった。だから、彼女から教えてもらう店や場所が毎回新鮮で驚きの連続だった。

 一番最高だったのは体育祭の練習のフォークダンス。その彼女とすれ違う前で曲が終わることが何回もあった。曲はブームの「星のラブレター」でこの曲を聞くとその当時のことが最速で蘇るし、つい満面の笑みを出してしまう。この場面は何回も夢で見たが、「神様、また見せてくれ〜」と切に願っている48歳のおっさんは周りから見たらどんな風にみえるのだろうか。

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