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解決することよりも大切なこと


こんにちは。
私は訪問看護ステーションlifeで看護師をしている田代さとみと申します。
お腹が空くと無口になる傾向があります。
そんな私が好きなお菓子はグリコのポッキーです。極細が好みです。

私は去年の8月から管理者になりました。
自分の看護師人生の中で訪問看護ステーションの管理者になるとは思っていなくて。
私はもともとは内向的な人間で、みんなの前で大きな声で話したり、作戦を立ててみんなを引っ張ったりするタイプの人間ではありません。
1人で考え事をしたり、本を読んだりしている方が好きです。
「静かな人の戦略書」を読んで、共感できるところがたくさんありました。
真面目なので、リーダーになったりクラス委員になったり生徒会に所属したりしたことがありますが、自分からやりたい、と言うよりは、立候補者が出なくてシーンとする雰囲気に耐えられないとか、周りに勧められたからとか、そんな理由で役割を果たしていたように思います。

そんな私なので、管理者になったばかりの頃は不安で不安で、業務をなかなかスタッフに委ねられなかったり、管理者たる者ミスがあってはいけない!と準備に準備を重ねて永遠に仕事をしていたり、自分も相手も許せなかったり、不安定な日々を送っていました。20代のスタッフとの世代の違いに悩み、言いたことがちっとも伝わっていない気がする…と悶々とすることもありました。
でも今は、若いスタッフの成長に貢献したい。
そして、自分も一緒に成長したい、と思っています。
そんな話を文章にしますね。


抱えている苦しい胸の内を話してくれた時。
痛みに苦しみ、のたうち回る姿を目の当たりにした時。
生きる意味を見失っている人に出会った時。
何もできない自分の無力さに打ちのめされる。
そんな経験をすることがあると思います。
在宅生活を送る利用者さんの中にも、解決できない苦しみを抱えている方はたくさんいらっしゃいます。
先日、そんな利用者さんを目の前にして、
「なんて声をかけたらいいかわからなかった」
「あまりにも重い空気に、耐えられなかった」
と、訪問から帰ってきたスタッフが話してくれました。

わかるなぁ…と。
目の前で苦しむ人を助けたい。
それが使命だと思って一生懸命向き合っているのに。
楽にしてあげたい。
その苦しみを解決したい。
解決できない自分であってはいけない。なぜなら自分は看護師だから。
そんな思考で、自分を苦しめているんじゃないかな…と。

私はこれまで、看護師や保健師としてたくさんの方と出会って、たくさんの方の人生に触れてきました。
健康の課題は人生の課題でもあり、その奥深さに触れるたびに、私が解決できるものではないな、と思うようになりました。
もっとこうしらいいのに…とか、なんでわかってくれないんだろう?と思うことはたくさんありました。痛みに苦しむ患者さんに「なんとかしてよ、どうしたらいいの?」と肩を掴まれ、何も答えられずに固まったこともあります。
悔しくて、苦しくて。
力になれない自分を認めたくなくて。
じゃあどうする?何ができる?と自問する。
そばにいる。信じる。応援する…
私にできることは、その人のいのちに真剣に向き合うこと。
看護の基本を徹底すること。これしかありません。
どんな看護をするべきか試行錯誤するうちに、想像もしなかったような力を発揮する人や、希望を見出したりする人をたくさん見てきました。
そのような経験から、人生の意味について答えを出すことや、苦しみを解決することだけが大切な能力ではないと思うようになりました。
じっと辛抱して、じっくり話を聞いて、その人の力を信じて回復を待つことも、援助する専門職として育むべき、大切な能力だと思うようになりました。
まさに、ネガティブ・ケイパビリティ。

ネガティブ・ケイパビリティとは
答えのない事態に耐える力。
性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力。
「ネガティブ・ケイパビリティ 答えのない事態に耐える力」



lifeでは週に1回木曜日にスタッフミーティングをしています。
しょんぼりするスタッフの姿を見て、ミーティングではこの話をしよう。
そう決めて、水曜日の夜、本とノートに向き合いました。

看護とは何か?はナイチンゲールが教えてくれる。伝え方は、方眼ノートに書きながら考える。


私にも明確な答えがあるわけではありません。
でも、苦しむことはないんだよ、と否定するのは違う。
利用者さんとの対話に悩み、苦しむその経験に、どんな意味があるのかを一緒に考えたい。
そう思ったのです。
今はこの苦しみに対峙していないスタッフも、いつか必ず同じような経験をすることになる。
そんな時に、この話を思い出してほしい。
その一心で、考えました。


苦しむ人を目の前にすることは、とても苦しい。
支えになりたいと思っているからこそ、苦しい。
でも、人は1人で苦しむのには耐えられないけれど、その苦しみをわかってくれる、見てくれている人がいると耐えられる。


話を真剣に聴く。
労う。
承認する。
そして、
「いつかは死んでしまうけれど、私はあなたのことをずっと覚えている。」
「今、あなたに出会えて嬉しい。」
この言葉を心から伝えられる。
伝えられる関係を作ることができる。
こんなに素敵なことって、あるでしょうか。
人の病の最大の薬は人。
そんな存在に、私たちはなり得るんだよ。
大丈夫。
今の苦しみは苦しみとして抱えたままで、いいんだよ。
いつか必ず、必要な経験だったと思える日が来るからね。


ノートを書き終える頃には頭の中はスタッフのみんなでいっぱい。
胸もいっぱい。
寝不足で迎えた朝。
ドキドキしながら通勤し、ドキドキしながら伝えましたとさ…
きっと、伝わったと信じています。


スタッフ自慢
lifeのスタッフは、利用者さんやご家族の強みを見つけるのが得意です。
訪問から帰ってくると、持っている力や訪問中の面白かったエピソードなどを話してくれます。
困ったことがあっても、誰かのせいにしたりしないで、
どうしよう?と、改善策を考えています。これって、すごい力だと思います。
ある日、膀胱留置カテーテルを抜いてしまった利用者さんがいて、臨時訪問をお願いしたことがありました。
行ってきまーす!と出発したと思ったらすぐに戻ってきて、どした?と声をかけたら、
「テープで固定してみようかと思って」と。
ご家族にもちゃんと説明して、同意をもらって、固定して帰ってきました。
(それ以降、トラブルなく経過されています。)
利用者さんの暮らしをしっかり把握し、ご家族とも対話できる関係を築くことができているからこその実践。
スタッフの成長に大感動。
ありがとう!!!ありがとうね!!!!!と胸を熱くする新米管理者なのでした。
こういうキラキラした衝撃が、しょっちゅう巻き起こっています。
若いスタッフと働くって、楽しいです。成長率がすごいです。

おわりに
挑戦の毎日は、苦しみと隣り合わせなのかもしれません。
でも苦しいのはきっと、真剣に生きている証。
私自身もすぐに答えを出そうとしないで、耐える力を大事に育てたいと思います。
大丈夫。私もあなたも、そのままで素晴らしい!
それにしても2月は短すぎる!


最後まで読んでいただきありがとうございます。
幸あれ〜!

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