見出し画像

私たちは「ひとに頼る練習」がたりてない

みなさんの周りには「やたらと頼み事が上手な人」、いませんか?

実はわたしのいとこがそんな人で、しょっちゅう頼みごとをしてきます。

彼は私と同年代ですがパソコンがかなり苦手で、やれメニュー表のデザインだ、航空券の予約だ、とカナダに来た今でもなにかと手伝わされています。

でも度重なるお願いにも不思議と悪い気はせず、たいていの場合「またかよ〜」と言いながら引き受けちゃうんですよね。

こういう人、すごく羨ましい。

私自身は誰かにものを頼むのがとっっっっても苦手です。

人に頼むくらいなら自分でやった方がまし。友達に相乗りをお願いするのですら毎回胃が痛くなる思いで頼んでいます。

もしくは今ならネットで探せば少額の料金で対応してくれるさまざまなサービスがありますから、お金を払う方が堂々と頼めて気が楽。

そんなタイプです。

おそらく、読者の方でも頼むのが苦手、という人の方が多いのではないでしょうか。

頼みづらいのはあなただけではない

実はこれ、人に気をつかいがちな日本人特有のことではなく、世界中のあらゆる文化に共通することなのだそうです。

あの「人間は電気ショックをどこまで強めるか」のミルグラム実験で有名な心理学者ミルグラムが、「ニューヨークの地下鉄で乗客に頼んで席を譲ってもらう」という実験を行いました。

被験者である学生は地下鉄に乗ってランダムな乗客に席を譲ってくれないかと頼みます。

結果を先にお伝えすると、68%の乗客が席を譲ってくれました。割といい数字だと思います。

しかし実験に駆り出された被験者は最低な気分を味わったといいます。

私と同じように胃の痛い思いをした人もいれば、顔面蒼白になって苦しそうに頼むものだから乗客に心配された人もいます。

ミルグラム自身もこの実験に参加してみたところ、強烈な不快感を味わい、ショックを受け、言葉が出てこず、体が麻痺したような強い不安を感じたと言っています。

自分は自立した人間だというプライドや他人に迷惑をかけてはいけないという教えもありますから、たとえそれが簡単なお願いであっても、私たちはこれほどひどい不快感を感じるのです。

人に頼らずには生きていけない

でもぶっちゃけ誰にも頼らずに生きていくのって、無理ですよね。

私たち人間はお互いに支え合わないと生きていけないようになっていて、
どんな仕事も同僚や上司・クライアントとチームで共同作業することは避けられませんし、それは学校や家庭などどんな集合体でも同じだと思います。

前述したうちのいとこがまさに典型で、彼自身は正直学校の成績はあまり良くないタイプのおバカなのですが、人とコミュニケーションを取ったり頼みごとをするのに秀でているのでいろんな人に支えられ、若くして自分で居酒屋を経営しこのコロナ禍でも閉店することなく生き抜いています。(雇用関係の手続きや決算などあまりに本人がわかってないので私が手伝ったこともあります...)

私も、特にカナダに来てからその重要性を感じていて、外国に来るとこの社会で分からないことが多いので人に頼らなければならない場面が多いんですよね。

娘の学校に関しても、日本だったら「こんなに言ったらモンスターペアレントと思われるかな...」と遠慮しがちでしたが、「カナダでは言ったもん勝ち!逆に言わないと動いてもらえないよ!」と先輩ママ達に背中を押されて必要なサポートを受けれるようになりました。(ちなみにカレッジで苦情や交渉をメールでうまく進める方法という授業があり、役に立ちました)

娘もおそらく私に似たのか、どちらかというと人を助けるほう・頼られるほうでいたいタイプで、誰かに頼ることが苦手な様子。

それで学校でわからないことがあっても誰にも聞けないままじっと授業時間が過ぎるのを耐えている状況なようです。

誰かに頼ることは生きていく上で避けられない。でも大の大人でも吐き気がするほどやりたくないこと。

だから小さなお願いごとをしてそれに答えてもらう、小さな頼みごと成功体験を子供の頃から積んでいくのが大事なんじゃないかと考えるようになりました。

じゃあどうやって頼めばいいのか

それが大事だとわかっても、ただやみくもに頼んだりはできませんよね。

せっかく勇気を出して頼んだのに断られてしまったらと考えるとそれだけで怖くなりますし、実際に断られてしまったら2度と同じチャレンジはしたくないと心を閉ざしたくなるでしょう。

基本的に私たちはガラスのハートの持ち主ですから。

でもその心配は無用かもしれません。実はどう頼めば人に断られずにすむのかを研究している人たちがいます。

その研究をまとめた「人に頼む技術」という本で正しい頼みかたが解説されていたので一部抜粋します。

①何を求めているのか、どの程度の助けが必要なのか、はっきり詳しく説明する

「今ちょっと忙しい?」という上司の問いかけを不快に思ったことがある人はいませんか?

ここで忙しいといえばできないやつだと思われるかもしれないけれど、全然大丈夫だといってしまえば抱えきれないレベルの業務が降りかかるかもしれず、返答に困ってしまいますよね。

人は、基本的に誰かのことを助けたいと思っています。

基本的にいい人でいたいという欲求があり、いい人とは親切なものだと思っているからです。

でも、喜んでその人を助けようと思うには自分のできる範囲で、あまり負担にならないということがクリアになっている必要があります。

なのでこちらから「今度メニュー表を新しくしたいから〇〇日くらいまでにデザインを仕上げてくれる人を探してるんだけど」と先に言ってあげると、頼まれた人も検討や調整がしやすくなります。

②妥当な量の助けを求める

1でも書いたとおり、いくら相手があなたのことを助けたいと思っていても、自分のできる範囲を超えたお願いをされてしまうと途端に億劫になり、断られてしまう可能性が上がります。

こちらもこれがこの人に頼んでも受け入れやすい量のお願いかどうかを見極める必要があります。

③求めていたものとは違っていても、相手の助けを受け入れる

こちらが期待していたほど相手が助けてくれなかったり、思っていたものと違うものが返ってきたとしても、あまり不満を持ち出さず感謝を伝えましょう。

そのほうが、あとからもっといいものとして発展し、実際に自分に返ってくる可能性が高いです。

冒頭のいとこのお願いごとですが、そういえば私が作ったものに文句を言われたことがありません。

メニュー表のデザインなどはほぼ素人のころからやっていたのでできあがりが期待外れだったこともあるはずなのですが、彼はなんのやり直しを要求することもなく「こんなものが作れてすごい、ありがとう」と言っていました。

もちろん仕事としてお金を払っている場合はそういうわけにもいかないと思いますが、頼んだ相手に対する期待値を下げておくというのはいいやり方だと思います。

④バカになる

これは本には書いていない私の持論ですが、ときにはプライドを捨てることも大事です。

自分の評判を落としたくないと強がって路頭に迷うよりも、自分にはこれはできないと割り切って正直に自分にはこれはできない、あなたにこれを助けて欲しいと頼んでしまったほうが結果的にはいいものを得られるでしょう。

それに相手も素直に弱みを見せてくれほうがあなたを応援したくなると思います。

(妥当なお願いなら)人は誰かを助けたがっている

今回参照した本はこちらです。

https://amzn.to/3IKGK42

この本に一貫して書かれているのは、人は誰かの役に立ちたい、人を助けたいと思っているということです。

だからもしあなたのお願いが妥当なお願いなら、よろこんで助けてくれる可能性は高い。

なので私たちも少しずつ人を頼る練習をして、相手の人生も自分の人生も豊かなものにできたらいいですよね。

ちなみにこの本には他にもダメな頼み方のパターンやさらに詳しい人間の心理について書かれていますので、気になる人はぜひ読んでみてください。

ちなみにタイトルは私の大好きな野本響子さんの「日本人は「やめる練習」が足りていない」のオマージュです。嫌なことはあっさり辞めてしまうマレーシア人はやめ癖がついてダメな人間にならないのか?など面白い話が盛りだくさん。私もカナダにまで持ってきてときどき読み返す良書です。冬休みの読書にぜひ!

https://amzn.to/3INQBq3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?