簡易書留を送った日

大学を卒業して社会人になる前の2月に、今の家に引っ越してきた。

新卒で入った会社は私の勤めている業界ではややめずらしく、どちらかといえば社員を出社させたいという情熱を持っていたので、6年住んだ街、5年住んだマンションを離れて、初めて東京で暮らすことになったのだ。

学生時代はありがたいことに親に家賃を払ってもらっていたので、初めて自分の仕事で稼いだお金で借りる部屋に住むことになる。というわけで、私は「なるべく最高の部屋を借りるぞ」と意気込み、たしか3つの別々の不動産屋さんと1日に会い、朝から暗くなるまで初めての街を歩き回った(もちろん車にも乗った)。

そのとき最後に会った不動産会社の方があまりにもすばらしかった上、紹介してもらって住むことを決めた部屋にもとても満足であったため、昨年弟が同じく就職のため上京する家を探していると聞いたとき、その人を名指しして弟の家を探してもらった。

それで今回家を探そうと思った時も、真っ先にその人を頼ろうと思ったのだが、残念ながらもうその職場を離れてしまったらしく、結局同じ会社の別の方にお願いすることになった。その方もすばらしかったので、新しい家で暮らすのが楽しみだ。



新しい家を借りるということは、今住んでいる家とお別れをしないといけない。

本当にすばらしい部屋だったのでそう考えると惜しいような気持ちになったが、日割り家賃はもっと惜しい。

そんなわけで急いで今住んでいる家の解約手続きをすることになった。

手続きと言っても、この部屋に住んでからちょうど2年になるところなので、年末に更新のための書類が届いており、その中に解約のための書類も同封されていた。

書類にはまず管理会社へ連絡するように記されていたので、朝一で電話をかける。今住んでいる部屋の情報を伝えると、書類の内容を軽くなぞる程度であっけないほどスムーズに話は進み、一度電話は終わった。

その後書類を書いているうちに2、3点ほど気になる点があったため、昼過ぎに再度電話をかける。書留で郵便を送るのが確か初めてで、「これは簡易書留でも大丈夫ですか」と尋ねたら「消印を書類の提出日として扱うために書留である必要があるだけなので、簡易書留で大丈夫です」と教えてもらった。

郵便局で書留を受け付けてくれるのはどうやら17時までらしいので、16時半ごろ仕事を途中で休憩して慌てて近所の郵便局に向かう。

窓口で「この封筒を、簡易書留で送りたいのですが」と伝えると、おそらく重さや大きさを測った後に値段を教えてもらったのでその通り支払う。

お金のやり取りの後、封筒の画像が白黒で印刷された初めて見るレシートを受け取ったら割とすぐに局員さんは封筒を持って奥に行ったので、手続きがそこで終わったのか、それともここで待っていた方がいいのか分からなくて、仕事に戻らないといけないという気持ちもあったからか慌てて「あっ、もう大丈夫ですか?」と尋ねてしまった。

解約の電話も、簡易書留も、私の人生の中では結構なレアイベントなので、何となく緊張感を持って臨むのだが、そこで働く人たちにとっては当たり前のことなので、話の速さに拍子抜けする。


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