豚汁の理由

今度こそ本当に2023年の内からやってることすべてにカタがついた(多分)。特にここ数日のわたしはあまりにも頑張っていて偉かったので、最後の用事を終わらせた後そのまま帰りに松のやに行った。

分厚いロースカツがあったので、こういうのはこういう日に食べるためにあるんだよなと思いながらボタンを押す。そうしたらご飯の盛り具合と味噌汁を豚汁に変更するかのボタンが出てきたので、ちょっと迷ったけど豚汁にしてしまう。


わたしが初めてこの豚汁を飲んだのは、大学1年生の冬の早朝だった。その日は大学の教室で友人と徹夜で課題をやっていて、なんとか明け方頃に終わったので家に帰ろうかと思ったところ、友人が「朝ごはんに牛丼を食べに行こう」と言ったのだ。

実はわたしは牛丼屋に行ったことがなかった。もしかしたら一度ぐらい親がテイクアウトしてきた牛丼を食べたことくらいはあったかもしれないが、少なくとも店で食べたことは一度もなかった。


一緒に自転車でキャンパスから一番近い松屋に行った。その松屋では、当時はまだプレミアム牛めしではなく普通の牛めしが売っていてしかも290円だった。

券売機の使い方すらおぼつかないので先に友人が買うのを見て、自分がやるときもいちいち友人に確認しながら選んだ。友人が「この豚汁がマジで美味いからおすすめ」というので深く考えず豚汁変更を選んだ。この瞬間がなかったら多分わたしは松屋の豚汁を飲まずに一生を終えた。


牛丼屋に初めてきた人間は、まず提供の速さに驚く。豚汁は熱いので蓋だけ開けてしばらく置いておく。牛丼屋の牛肉、柔らかくてめっちゃうまくない!?と素直に驚いた後、たまにしか買わないスーパーの牛肉の値段を思い浮かべて、コスパに驚く。冬の朝の、徹夜明けの体に豚汁が染み込んでいく。

初めて食べた牛めしがこうだったので、少なくとも牛めしがプレミアム牛めしになるぐらいの頃までは、豚汁変更のボタンをよく押していた。


でもいつからかは分からないが最近はそういえば押してなかった。今日は「最近頑張ってたしとにかく寒かった」から豚汁にしたけど、かつては別に理由なんてなくても豚汁にしていたような気もする。しばらくぶりに飲んだ豚汁は、確かに美味しかった。味噌汁も十分美味しいしどっちにしても明日には忘れるんだけど。

理由はなくても豚汁にするのと、頑張ったから豚汁にするの、どっちの方が良いのかは、今のわたしにはちょっと難しい。


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