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未知の世界、インド:hello, my new destination. India #1

「ホテルの人いわく、朝の6:30にはここを出た方がいいそうです。」

そんな旅の仲間の言葉を聞いて、思わずため息が出た。

パンデミックが明けてから初めての海外旅行。乗り継ぎを一回経て、トータル約13時間のロングフライト。旅のスタート地点であるインドの首都デリー、インディラ・ガンディー国際空港に到着した頃には、短時間の日本国内フライトに慣れきった私の身体はガッチガチに凝り固まっていた。

現地到着時刻は22:00。久しぶりの海外、あまり治安はよくないと聞いていたはじめて訪れる国、夜遅い到着、海外はほぼ初めてだという連れ。それだけでドキドキが止まらないのに、空港のWi-Fiも日本で事前購入していったe-simも繋がらないというハプニング!ホテルまでの送迎を依頼していたタクシードライバーとの連絡が取れず、合流するのに非常に手間取ったことで、ビビりな私の気持ちはだいぶ疲弊していた。

それなのに

それなのに朝の6:30出発??
Oh my goodness!なんでそんなに早いの?

その時はそう思った。1日早くインド入りし、ホテルで合流した仲間の「6:30出発」という死刑宣告のような言葉を聞いて確かにそう思った。そう思ったけれど、現地の人がそう言うのであればそうなのだろうと己に言い聞かせ、翌朝6:30出発でUberを予約して、その日は早々に寝ることにした。

ホテルスタッフがなぜこんな朝早い時間を指定したのか、インド初心者の我々が知るのはまた後日…。

6:30AM

予約したUberは時間通りにホテルの前にやってきた。

この日最初の目的地はニューデリーの南の方にある「Nizamuddin Railway Station(ニザムディン駅)」。この駅を8:10に出発する特急電車に乗って、タージ・マハルで有名なアグラという街に向かう。

うっすらとピンク色の色づいていく空。

タクシーの窓から見る夜明け前のニューデリーの街は薄くぼやけ、光はにじんでいた。それはどこか幻想的で美しい光景だったのだけど、でもそれが意味するところは「空気が汚い」ということで。日本から遠く離れた異国の現実を見た気がした。

7:00AM

ニザムディン駅に到着した頃には空はすっかり白んで、駅前に立てられた大きなインド国旗が空に翻っている。

インドの駅に到着したらまずやることは「自分が乗る電車がどのプラットホームから発車するのか」の確認。

(少なくとも私たちが使った)どの駅にも写真のような大きな電光掲示板があって、そこにどの電車が何時にどのプラットホームから発車するのかが出ているので、その中から自分たちの乗る電車を見つける。

ちなみにこちら↑が事前にwebで電車のチケットを購入した際に発行されるPDFの一部。青枠部分に発車駅と発車予定時刻、赤枠部分にTrain Noと電車の名前、黄色い枠に予約した電車の座席情報が書いてある。
プラットホームを探す際は、赤枠のTrain Noを電光掲示板の中から探せばOK!もう一つ目安になりそうな発車予定時刻はよく変更されるので、あまりあてにしないことをオススメする笑

はじめてみるインドの駅に多少興奮しながら写真を撮っていたらゆっくりと登ってくる太陽。外はすっかり明るかったので、太陽は登った後だと思っていたのだけどそうではなかったらしい。日本ではなかなかお目にかからない、輪郭がはっきりと見える太陽をぼんやりと眺める。

インドの駅に必ずいる赤い服のポーターさん
エスカレーターもエレベーターもないので荷物を運んでくれるポーターさんが必要なわけだ

電車の発車時刻が近づいてきたのでプラットホームへ。ホームの電光掲示板を見ると、我々の乗る電車の発車予定時刻は変更なし。よし!

大幅な電車遅延が当たり前のように発生するインド。とにかくその日の始発電車に乗れば、遅れる可能性も少ないし、遅れたとしてもそこまで大きな遅れにはならないはず!ということで朝8:10なんて早い電車を予約して、朝早起きしたのだ。その苦労が報われて一安心。

駅の売店で朝ごはんを購入して、電車に乗り込む。

乗り込んだ電車は満席で、頭上の荷物棚には一切の余裕がない。我々がホーム上で嬉々として写真を撮っているうちに、他の乗客はほぼ全員電車に乗り込んでいた模様。仕方なく座席の中に大きなスーツケースを押し込み、座席とスーツケースの間にできた狭い隙間に足を捻じ込む。

席についてから数分後、電車はゆっくりと動き出した。

電車の窓の汚さと、空気の汚さと、朝日の光ですべてが夢の世界のようにぼんやりと霞んだ世界を車窓から眺めながら、売店で買った朝ご飯を食べる。辛いものが苦手な友人が「no spicy?(辛くない?)」とたずねて購入したパイは、中にマッシュされたじゃがいもが入っていて辛かった。

見渡せば電車の中は眠りに落ちた人たちばかりで、気付いた時には私も目の前のスーツケースに身を預け、夢の世界に旅立っていた。

10:00AM

目覚めたら「Agra Cantt(アグラカント)駅」に到着する直前だった。慌てて立ち上がってスーツケースを押しながら、アグラカントで降りるであろう人たちの列に並んで降り口の方へと進む。そしてふと気付く。

ん?
なんか身体が軽い?

カメラバッグ!!!!!!!!!

荷物棚に上げたカメラバッグのことをすっかり忘れていた私。スーツケースを友人に見ててもらい、座席の方に戻ると後ろの席に座っていた男性が無表情にこちらをチラリ、それから私のカメラバッグをチラリ。私の全機材が入った重たい重たいカメラバッグを棚からおろすのを手伝ってくれた。ありがたい。ありがたいんだけど、気付いていたなら声掛けてくれ!

こんな時、現地の言葉で「ありがとう」が言えればいいのに、咄嗟に口をついて出たのは「Thank you!」だった。それでも彼は、ニヤリと笑ってくれたのだけど。

「世界遺産であるタージ・マハルがあるだけあって、観光客も多いんだろうなぁ…。」そんなことを思ったのは、アグラカントの駅を出た瞬間。我こそは!我こそは!!と客引きの声をかけてくるトゥクトゥクドライバーたちの山を見て、ここが観光地であることを実感する。

そんなトゥクトゥクドライバーの後方に見えたのが「Kanae」と書かれたwelcomeボード。

今回、アグラを観光するにあたり、インド訪問歴のある友人にカーンさんというガイドさんを紹介してもらっていた。日本にいる頃から「WhatsApp」というメッセージアプリを使ってやりとりし、この日は我々の到着に合わせてアグラカント駅まで来てもらったのである。(ちなみにこのwelcomeボードは、カーンさんの娘さんが作ってくれたらしい。感謝。)

カーンさんが用意してくれていたウェルカムフラワーの首飾り。ローズとジャスミンで作ったというそれは、日本では出会ったことのないぐらい甘い香りがしっかりと香るもので、気分とても華やいだ。

なんてHappyなお出迎え!

カーンさんはもう1人、別のインド人男性と一緒だった。彼が今回アグラの街をガイドしてくれるのだという。そんな彼らに案内されて駐車場へ。

カーンさんたちは2週間分の荷物が入った大きなスーツケースを3つ、あっという間にトゥクトゥクに詰め込み、我々に乗車するように促してくる。トゥクトゥク内の配置はこう

・後部座席後ろのスペース:スーツケース2つ
・後部座席:スーツケース1つ、乗客2名
・助手席:ガイドさん
・運転席:ドライバー(カーンさん)
・助手席横にもうしわけ程度に置かれた椅子:乗客1名

1人半ケツ!!!!笑

「え!?これ大丈夫!!?」と心配する我々日本人をよそに、「大丈夫!お前らならやれる!」と適当な返事のカーンさん。3つのスーツケースと総勢5名の人間を乗せたトゥクトゥクは意気揚々と出発した。

12:00PM

ここからは大充実な午後の始まり。
まずは翌日のタージ・マハル観光に向けてサリーを購入。

続いて、メヘンディを体験しにカーンさんの妹さんのご自宅へ。

メヘンディとはヘナタトゥーの一種。タトゥーとは言っても2週間程度で消えるので「タトゥーだけはマジで許さない」という頭の硬い親がいる私でも、気軽にチャレンジできる笑 メヘンディの紋様を描くためのヘナは、幸運の女神ラクシュミーが最も愛する植物で、メヘンディには幸運を呼ぶ力があると信じられているそう。

カーンさんの妹さんがスマホで様々な紋様を見せてくれて、どれがいい?とカウンセリング。好きなタイプの紋様を選んで、手のどの範囲に描いてもらうかを決めてスタート。精緻な柄があまりにも流麗に描かれていく。

描き終わったあとのメヘンディはヘナのペーストが乗ったままなのでこんな感じで黒い。施術後しばらく時間をおいて、ヘナペーストが完全に乾いたらそれを水で洗い流す。そうすると、完成形の茶色いメヘンディが出現!美しい〜〜〜!

翌日撮ってもらった写真

連れの施術中は、お家の周りをブラブラさせてもらった。

2:00PM

つづいて案内されたのは、カーンさんのご自宅。「おいしいランチを食べたい!」という我々のリクエストに対して、なんと、この日のランチはカーンさんがご自宅で振る舞ってくださるとのこと!現地の方の家でご飯をご馳走になるなんて、めったにない機会…!

細い路地の奥の方にあるカーンさんのご自宅は決して大きいものではなかった(思う、というのは我々は自宅内の一室に通されただけで、家全体を見たわけではないのであくまで私の所感で)ご飯を食べる前にメヘンディを水で洗い流すといい、と言われ台所後ろの水場へ案内される。インドは水が豊かな国のイメージがなくて、水をジャブジャブと使わせてもらうことに気が引けたので、サッと流す程度にとどめ、持ってきたハンカチで手を拭いた。

そこに上がって、と言われるがままに大きな台の上に座ると、次々と料理が運ばれてきた。チキンビリヤニ、チキンカレー、チャパティ、ミックスベジタブル、タンドリーチキンに生野菜!なんて豪勢なの!

この日は我々が客人としてやってくるということもあってか、カーンさんのご自宅にはカーンさん一家だけでなく、カーンさんの親族までたくさんの人が集まっていた。

あとで調べてみたら、インドでは「大切なお客様は自宅でもてなす」というのが古くから美徳とされているらしい。

数年前にたまたま出会い、一度だけ観光案内をした日本人がいて、その友人が彼らの紹介を受けてやってきた。カーンさんと私たちのご縁なんて、その程度のものなのだ。その程度のご縁の我々をこれだけ歓待してくれるインド人の懐の深さというか、いい意味でのフレンドリーさは一体どこから来るのだろう。(もちろん、私たちは彼にとって大切なツアーガイド客、というのはあるのだろうけど)

ありがとう、カーンファミリー

4:30PM

朝6:30から未知の世界に触れ続け、そろそろお腹いっぱいなこの日の最後は、地元の人々から「ベイビー・タージ」という名称で親しまれているイティマードウッダウラ廟へ。

タージ・マハルより前に作られたというこの霊廟、タージ・マハルと同じ白い大理石で作られている、その大理石の装飾の仕方もタージ・マハルと同じ、四つの庭に四つの門がある作りがタージ・マハルと一緒、という理由で「ベイビー・タージ」と呼ばれているんだとか。

職人たちが一つ一つ手で掘っていったという装飾はどれも細かく美しい。(細かくて美しいんだけど、お酒とお花が大好きなパリピ王様のための廟なのでお酒を入れるカラフェみたいな瓶とか、お花の柄がたくさん掘られてた。なぜ写真を撮らなかった自分。)

歩いて30分程度でサクッとイティマードウッダウラ廟を見終え、最後はヤムナ河の対岸にタージ・マハルをのぞむスポットへ。

大きな河の対岸から離れて見ているにもかかわらず、夕日に照らされたタージ・マハルは静かにその威容を誇っていた。

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