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【藝術日記2023】安曇野AIRレビュー

10月7日から10月19日まで安曇野市にて開催されていた安曇野AIRに訪れた。こちらは、東京藝術大学との連携事業で、同大学卒業・修了の若手芸術家によるアーティスト・イン・レジデンスである。臼井仁美さん、及川春菜さん、鈴木希果さんの3人が、7月から9月まで安曇野市内各所で市民との交流や作品制作を行っており、その滞在の成果が展示されていた。


鈴木希果さんの作品は、安曇野市で飼育している羊や牛のフンを使用していた。「羊の夢」をテーマに、自然物と陶芸、紙などが融合した作品だった。展示エリアを入ってすぐに目に入る、磁器粘土と長石、ワイヤーを使った作品が印象に残っている。ワイヤーで繋がれた石ひとつひとつにフンが埋め込まれており、その大きさと制作過程の途方もなさを感じて圧倒された。


作品のひとつに詩が書かれており、鈴木さんの作品全体のコンセプトやイメージが浮かび上がるようだった。また、鈴木さんが安曇野市に滞在していた時の記録が写真で展示されており、安曇野市での充実した生活を感じ取ることができた。
 

臼井仁美さんの作品には、安曇野市の木々や大麦が使われていた。山の上から眺めた安曇野市が、安曇野市の植物によって表現されていた。スギやアカマツが描かれた作品は、大地からの視点と空からの視点の2つの視点から描かれているのが興味をそそった。安曇野市の豊かな自然が表現されており、小さな展示ブースの中で、安曇野市の山並みや川のせせらぎに想いを馳せることができるような作品だった。

      

及川春菜さんは、主にガラスを用いて作品作りをしている。今回は、安曇野市の美しい季節からインスピレーションを受けた作品が並んでいた。ガラスの中に植物を閉じ込めた作品は、ガラス越しの植物がいつもとは違った様子に見え、神秘さを感じた。また動物のような形をした、ガラスの作品がとても印象に残っている。青色と緑色で、対になるように配置されており、私はその様子から山と水をつかさどる精霊のようなものを連想した。精霊が安曇野市の美しい山々と水を昔から守り続けている、そんな物語を想像した。 

 全体を通して、安曇野市の豊かな自然を体感できる展示だった。アーティストと市民とのつながり、そしてアーティストが安曇野市での滞在を楽しみ、愛している、そんな様子が伝わってくるようだった。

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