ホームレス生活 4日目

5時くらいにおじちゃんが起きた。
私たちは夜を徘徊して、(時々変な若者も居て、夜の街というものを初めて知った)地下道へ行く階段で夜を過ごした。
段ボールを敷いてくれたけど、やはり結局使わなかった。

この日はおじちゃんが駅に行くということで、することもないから同行することになっていた。なんでも、携帯の充電がしたいらしい。
着いていくと全然違う方向に向かい始める。高速バスが停まるところだ。まさかと思うが、(そして結局これは聞けずじまいだが)おじちゃんと会った頃に話したことを今すぐ実行しようとしてるのか?
__というのも、会った時に私はこう言った。呼子のイカを食べたい。そこで、「行かせちゃる」と言っていたが、半ば冗談で聞いていた。
本当に呼子に行くとしても、私は呼子に詳しくない。地理に疎いところに行くとなると、何かと不便だ。携帯は持っているけど、色々と危ないだろう。多分。
と、いうことでなるべく遠出できないようにしたい。そして私も携帯の充電がやばいのだ。充電することを告げると、マクドナルドへ赴いた。

ここでおじちゃんの素行も見れた。
マクドナルドへ行くと、注文もなしに席のある階へ行く。
お金ないんだな、と。苦笑せざるを得ない。私もだが。
「私、注文しておきますね」と、月見チーズバーガーのナゲットセットを頼んだ。
おじちゃんも結局は注文してた。100円マックがないことに驚いてたけど、ハンバーグ一個と水を頼んでいた。
充電は100%にならないと安心できないタチなので、数時間ずっと携帯の画面と睨めっこ。

ある程度溜まってきた時、Xで私と同じような境遇の方と一緒に支え合っているのだが、その方からおじちゃんの話を聞いてもらい、心配してくれてNPO法人を頼るように勧めてくれた。
自立するまで住居と食事を提供してくれる、いわゆる生活保護という生き方だ。存在は知っていました。ひろゆき氏のおかげで。
ただ、自分はどうなっても良いという自暴自棄のせいもあったからか、視野に入れていなかった。

勧められたURLを見て、全体の概要がわかる程度ではあったが、ホームレスである今の状況、アトピー性皮膚炎は野宿に向いていないという病的な意味でも、住居は必要だ。私は生活保護を受けることに決める。
問題はおじちゃんだ。もうすでに私がいつまでも同行する仲間だと思われているようだ。この後どうするのかわからないし、キスをせがまれた以上一緒にいたくない。だが、一応この人にも勧めてみようと思った。

案の定、断るというより、私をその施設に行かせないように「俺はお金を持っている(日雇いしているらしい)」「俺の寮に住まわせてやる(嫌だし、その前に寮があるならなんで帰らねえ)」「食事とか出るのか?外出もできないんじゃない?(外出できないようにする施設は拘置所くらいだわ)」などなど。
自分と一緒にいる方が楽。施設は辛いよ論が繰り返される。
そして一向に自分は行かないという話はしない。
多分……ホームレスになったのは犯罪歴があるからだろうな。と思い至った。私はよくわからないが、犯罪歴があると逮捕の可能性があるのかもしれないし、逮捕されないとしても施設には入れないのかもしれない。多分。だから話さないんだろうなと察し。

私だけ施設へ連絡した。この日はお休みだったから待つのみ。
それまではおじちゃんは着いてくる。
バスターミナルの椅子を借りて22時までは寝た。そして私はダメ元で計画する。
カラオケで一夜を明かす!もちろんおじちゃんは退ける。
「私、ホームレスになる前にヒトカラやりたくて。行ってきます!」
と言うと
「カラオケ高いんじゃない?」「そうだ、〇〇に行こう(カラオケ一択だったからどこ行くかは聞いてない)」と、譲らない。
「ちなみに、歩いて行きます。(その場からカラオケまで、50代のおじちゃんにとってはきつい距離2キロ。これで諦めるだろうと思って言った)」
「途中までついていく」
(おぅっふ)
まあ、すぐに諦めるだろう。

すぐに諦めた。ものの数分。カフェが見えたところでおじちゃんが
「ちょっと休憩」
多分、私も一緒に休憩という意味だったんだろうなー。と思いながら
「あ、ありがとうございます(途中までの同行ここまでですね!という笑顔で)」その場から一目散に出ました。
後ろを振り返らずに、なるべく早歩きで。
カラオケ店近くで振り向くと、居ないことがわかってホッとしました。

思う存分歌いました。

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