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【ワーホリ国際恋愛体験談】 ⑯ 真夜中の訪問者 パースのイケメンマッチョ (後編)

☆前回までのあらすじ☆
29歳、初ワーホリでオーストラリアへ!
いろんな出会いと別れを経験した後、パース郊外のシェアハウスへ引っ越し。
ある夜、部屋の窓からイケメンマッチョのクリスがやって来て…

☆用語解説☆
・ワーホリ: ワーキングホリデービザ(若者の異文化交流を目的とした就労可能なビザ)、またはその保持者。
・オージー: オーストラリア人、又はオーストラリアの○○。

※この記事はほぼノンフィクションです。誰かに迷惑が掛からないようちょっとだけフィクションを混ぜてます。

***
(本編ここから)

向かい合わせで降ろされたクリスの膝の上、彼の腕の中で私は何も出来ずに困惑していた。

Tシャツの裾がよれて、腰を抱く彼の大きな手が少し肌に触れ、その触れた指先が肌をゆっくり撫で始めた。
かと思ったら彼の唇がまた接近してきた。

私は息を飲み横を向いてかわす。
彼は私の唇を追いかけ、行く場を失って、首筋に熱い吐息と共に甘く長くキス。

腰に触れる指先は一本から二本に。
かすかに触れる程度で動いていたそれらは次第に力強さを伴い、手のひら全体で肌を掴むように動き始めた。

やがてそれが腰から背中へ。
片方の手が忙しく私の背中の上を滑り、もう片方はがっちりと私の腰を抱いて逃がさない。
なんなら大きな手には腰と共におしりも若干つかまれている。

必死で押しのけようとするも彼の筋肉の前には何の効果も得られない。
力は多少ある方だと思っていたけれど、自分の無力さを思い知るだけだった。

「ダメ…」

恥じらい、というか、情けなさでほとほと参ってしまった。

こういうときなんて言うの。
Noしか言えない自分が情けない。

こんなシチュエーションでの英会話なんて習ってない!

というか、こんなキレイな顔で、私好みの大きな筋肉で、こんなエッチな女性向けマンガみたいなことになってて、こんな人からの逃げ方なんて知らない!

しばらく背中をなぞっていた手が下に滑り、ジャージー素材のズボンの中に入ろうというそぶりを見せた。

やばい。
やばいやばいやばい。

力では敵わないことは分かっている。
じゃあどうしたらいいの!?(泣)


「止めてってば!」

両手でバチッとクリスの頬を押さえ、彼をしっかり見据えた。

一体全体、何が起こっているのか…。
10も下の大学生相手に!

私の顔はきっと、これ以上ないくらい真っ赤だったに違いない。
恥ずかしくて、どうしていいのか分からなくて、泣きそう。
体全体が心臓みたいにバクバクいってる。熱い。

彼は一瞬私の行動に呆気にとられた後、その整った顔をくしゃっと歪ませ、苦しいくらいに力強く抱きしめてきた。

抱きしめられて、今度は押し倒され私が彼の下になった。
私は決して体重が軽いというわけではないけれど、彼は何でもないように私の体を移動させたのだ。

そんなに軽々と持ち上げられちゃったら私にはどうすることも出来ないじゃないかと、自分の置かれたた状況に途方に暮れた。

上に乗ったクリスの視線に焼かれそうだった。
また美しい顔が近づいてきた。

やっぱり顔をそむけ、その唇から逃がれた。
彼は無理に口にキスしてこようとはしなかった。

その代わりに彼の口付けは首筋に、Tシャツの上から胸元に、はだけたTシャツの裾から見えるお腹に移動した。

キスと一緒に、彼の右手がわき腹に触れた。
かと思えば、そのままシャツの中から上にあがってこようとしている。
彼の左手は私の右手を捕らえていた。

どうしようどうしようどうしよう!


咄嗟にTシャツの上から左手で胸の下を力いっぱい押さえ、彼の右手が胸へと上がってくるのを寸前でくい止めた。

「ダメ。無理!
だって私、クリスと知り合ったばかりだもの。」

そむけていた目をクリスに向け、彼の熱っぽさに負けないようにこれまでにないくらい強い調子で言った。
甘い声にならないように意識して。

私のお腹にキスしていた彼は、そこからしばらくじっと私を見つめ、ふうっと大きなため息をつき、彼の頭が私の胸の間に落ちてきた。

彼の頭が埋もれるほどのものは私には備わっていないので、彼の頬骨が私のささやかな谷間にあるあばら骨に当たった。
そこは、申し訳ない。
いや申し訳なくなんかないんだけども。

年上らしく、よしよしと彼の頭をポンポンした。
透けるような美しいブロンドの髪の柔らかさにため息がでそうだった。


しばらくその状態からクリスは動かず、ちょっと会話している内に、外が明るくなってきた。

「そろそろ帰るよ。」

ふっ切れたような爽やかな顔で、私の手を握ったままクリスは言った。
もうその頃には、私はなんだか彼が可愛らしくなってしまって、髪に軽くキスをした。

「唇にはしてくれないの?」
と拗ねるクリス。
やだ可愛らしい。

ハハっと笑って誤魔化した。

「君はやっぱり年上だね。
ズルイ人だ。」

会ってすぐに体を許せるほどハタチの若造に流されたくはない。
でも一晩一緒に過ごして、この時にはクリスを可愛いと思い始めていた。
これがズルイということなのか。知らんけど、そうなのか。

最後にぎゅうっと押しつぶされそうなほど強く抱きしめられて、朝日を背負って彼は窓から出て行った。
見えなくなるまで何度もこちらを振り返っては手を振っていた。

若いな…。

ホッとして、見えなくなった彼に思わず言葉が出た。
何が起こったんだ一体…。


甘い余韻に浸る時間を惜しんで、その後仕事が始まる時間ギリギリまで寝た。
クリスから連絡先を教えてもらったけど、私から連絡することはなかった。

首筋にいつの間にか付けられていた彼の痕跡が熱く感じられたけれど、やがてそれも消え、あれ以来窓が叩かれることはなく、彼とはそれで終り。

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