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【ワーホリ国際恋愛体験談】 ⑭ 真夜中の訪問者 パースのイケメンマッチョ (前編)

☆前回までのあらすじ☆
29歳、初ワーホリでオーストラリアへ!
いろんな出会いと別れを経験した後、パース郊外のシェアハウスに引っ越し、日本食レストランで働き始めて…

☆用語解説☆
・ワーホリ: ワーキングホリデービザ(若者の異文化交流を目的とした就労可能なビザ)、またはその保持者。
・パース: 西オーストラリア州の州都の美しい町。
・オージー: オーストラリア人、又はオーストラリアの○○。

※この記事はほぼノンフィクションです。誰かに迷惑が掛からないようちょっとだけフィクションを混ぜてます。

***
(本編ここから)

パースの冬といえば雨。毎日毎日、これでもかと冷たい雨が降る。

それでも靴も何も履かずに裸足で歩いていたり、半袖やハーフパンツなオージーは結構居るから驚かされる。
子供の頃からのびのびと育てられる彼らは基本的にとても逞しく、薄着だ。

パース近郊の日本食レストランで働いていた私は、当時職場のシェアハウスに住んでいた。

シェアハウスは閑静な住宅街にあり、部屋は中地下にあった小さな一人部屋。
お給料は少なかったけどとても快適に暮らしていた。

ある夜、いつも通りベッドに入りながらノートパソコンでネットサーフィンをしてると、窓がコツコツと音をたてたのに気づいた。

人影を見つけて、このシェアハウスに住む誰かを訪ねて来たのかなと思い、「ちょっと待ってね」と玄関のロックを外しに行った。

しかし玄関を開けても誰も居ない。
ちょっと呼んでみたけど誰も出てこない。

おかしい…。

「誰か居るの?」

リビングで一人お酒を飲んでいたシェアメイトの友人(オージー)に声を掛けられた。
いつも通りカウチ(ソファー)で寝ていくつもりだったのだろう。
ヤバい仕事をしているというその友人は、そろそろ家賃をもらっても良いんじゃないかと思う頻度でシェアハウスのカウチを占領していた。

「私の部屋の窓をノックしてきた人が居たから、誰かの友達かと思ったんだけど」

同居人の友人は「こんな夜中に?」と驚く。
時計を見るともう深夜0時を回っていた。

確かにアポなし訪問にしてはかなり常識はずれな時間だ。
流石のオージーでも非常識な時間っていう認識はあるのかと内心思った(失礼)。

まあいいや、来ないんなら寝ようと、部屋に戻ってベッドに入ろうとしたときにまた窓がコツコツ言った。
窓の外には知らないガイジンさんが居た。

「なんだ、やっぱり居たんだ。さっき玄関のドア開けに行ったのに」
窓を開けて声を掛けた。

冷たい冷気が部屋に入り込んできたのでさっきまで着ていた上着をまた羽織った。
それだというのに彼はこんな寒さでも半袖。
流石オージーだ。
たぶん日本人とは体の出来が違う。小学生か。

ちょっとお酒の匂いがしたので、酔ってるからさっき玄関開けたのも気づかなかったのかなと、警戒心も何もなく考えていた。


「違うんだ。君に会いに来たんだ!」
蒸気した顔でそうのたまうオージー。

…私、あなたのこと知りませんが。

ちょっと意味が分からなくて呆然とする私。
彼はバーッと勢いよく喋り始めたけれど、ごめんなさい、私英語がからっきしなんです。

私の英語力を察知したのか、少し落ち着いて彼は簡単な英語でゆっくり自己紹介を始めた。

「僕はクリス。
この前のパーティーで僕もここに来てたんだけど、覚えてる?」

そう言われ注意深く彼の顔を見てみたけれどやっぱり思い出せない。

だが確かに先日、このシェアハウスでパーティーがあった。

主催はシェアメイト、ではなく、シェアメイトの友人であるオージーのベン。
ベンはここに住んでもいないくせにこのシェアハウスでパーティーを開き、たくさんの彼の友人のオージーたちも引き連れてきた。

ちなみに私は当日の日中に、パーティーの存在を知らされた。
オージーは果てしなく自由だ。

正直パーティーの時はそれどころじゃなかったし(『⑪ その男、獣につき パースの男』参照)、クリスのことは全く欠片も記憶になかった。

ピンときてない様子の私を見て、彼は説明を始めた。

「君の部屋より今僕が立ってるところが低くなってるからちょっと分かりづらいかもしれないけど、僕は身長が高くて、196あるんだ。
覚えてないかな。」

「ああ!」
身長が高い人!そういえば居た。


あの日、確かに飛びぬけて背の高い人が一人、なぜか両手にダンベル持って筋トレしていたのを思い出した。

「こいつの筋肉スゴイな!」
友人たちが代わる代わる彼の胸筋を揉んでいて、

「ほら触ってみ。」
と言われて私も揉んだのを覚えている。

すごかった。

でも顔は分からなかった。
彼の背が高すぎて、160cmと少しの私にはよく見えなかったのだ。

そうか、こんな顔をしていたのかと、まじまじと見てみた。
改めて見てみると若いらしくスベスベの肌に美しいブロンド、青い目、シュッとした鼻筋で整った顔立ちをしている。

私が思い出せたのを察知して、更に自己紹介が続いた。

「僕は大学生で、この州でも有名な一流大学に通ってるんだ。」

「あとね、モデルのバイトもやっていて、今パソコンはある?
そこで○○っていうモデルの会社があるんだけど検索してみてよ。
僕が載ってるから。」

彼の通う大学の説明が始まったかと思えば今度は片手間でやっているモデルのバイトの話が始まった。

なるほど、なるほど。

どうやら自分はとても頭が良く周囲からの評価もある人間で、表にも出ている仕事をする不審者ではないと言いたいようだった。


しかし、なぜこの深夜に?


深夜に外国人の女の子の部屋にいきなりやって来ておいて不審者でないと言い張る。

流石オージー。
日本人の私の常識を鮮やかに覆してくる!

そんな説明は日中の酔ってないときにしてくれれば説得力も見る目も格段に違うのに…。
オージーはいろいろと残念な人が多い(偏見)。

「ダメだ。ちょっと寒すぎる。中に入れて!」

この日雨は降っていなかったとはいえ、真冬の深夜に半袖の彼。
大きな体をガタガタ震わせていた。
どんなに胸筋が厚かろうがやっぱり寒いのか。

どうしよう、確かに寒いだろうけど…
じゃあ帰ればいいのに。

どうしたもんかと迷っている間に窓から大きな体が中に入ってきた。

「はー寒かった!」
と窓を閉める巨人のオージー。

なんて自由!

同じところに立ってみてしっかり思い出した。
やっぱりパーティーのとき背が高すぎて顔が見えなかったあの人だ!
こうなると胸筋に阻まれてやっぱり顔は見えない。

「これ使っていい?
さっき話した僕の通う大学とモデルエージェンシーのページ見せてあげるよ。」

机の上で開いたままの私のノートパソコンを指差し、何やらキーを叩き始める。

うん、そうね、確かに良い大学みたいだし、モデルさんやってるのね。そうね。
うんうんと、それぞれのホームページを見ながら話を聞く私。

で?
っていう。

(続く)

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