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「ひっひっふー」とりんごちゃんを押さえつける映像をみたときの気持ち

テレビの演出のなかで、女芸人を笑いものにする、女性芸能人をお飾りのように配置する、若い女性を無知な象徴としてバラエティの対象にする、など前々から少しずつ、違和感を覚えるようになっていた。

自分が助産師として働き始め、ジェンダーや女性の健康問題、男女差別に、より敏感になったからかもしれない。

そんななか、こんな嫌な気持ちにさせられることが不意にくるのなら、テレビのバラエティー番組は観たくない、と決定的に思わせられる番宣があった。

芸人のりんごちゃんを、複数の男性が「ひっひっふー」と言いながら、押さえつけている場面だった。

りんごちゃん

ぞっとした。
その瞬間、不快感と絶望感と嫌悪感で、いっぱいになってしまった。

後からそんな場面になった経緯を調べてみた。
番組は2019年8月19日にTBSの『人生イロイロ超会議』で、仕事の幅を広げたいというりんごちゃんにゲームを、そして不正解の罰ゲームとして足つぼ激痛マッサージを行うことに。しかしあまりの激痛に倒れこみ、スカートがめくれてしまう。共演者の男性たちは激痛に耐えさせようと複数人で羽交い絞めにし、「でる!」と叫ぶりんごちゃんに「ひっひっふー」と掛け声をかけたらしい。

人生イロイロ超会議

経緯を知っても、なんでこれを放送できると思ったんだろう、と思う。
なんでこれで笑いがとれると思ったんだろう。

なぜ私がこんなに不快な気持になったのか。
ひっひっふーという時代遅れの掛け声。
痛がる様子を男性たちが押さえつけて、出産シーンのように演出したこと。
ふくよかな女性姿をした人を、妊婦として扱っていること。
出産を笑いの対象としたこと。
たくさんのことが一気に頭を駆け巡ったのだ。

ひっひっふー、なんて呼吸を実際のお産ではしない。
助産師として働いている身からしたら、社会ではまだこの認識のままなのか、と幻滅した。
お産の経験がある女性なら、またはお産に立ち会ったことがある人ならば、違うとわかると思うのに。
テレビドラマの妊娠、出産シーンも現実と違うのに、その知識はアップデートされないまま、出産ってこういうものでしょ?というなんとなくのイメージのまま。

ひっひっふー

女性が痛がる=出産というイメージを、とっさに抱いたのか、そうやってりんごちゃんを羽交い絞めにした男性たちにも腹が立った。
女性姿をしたふくよかなりんごちゃんを、どうやったら笑いにできるかという考えの行き着く先がそれだったとしたら、あまりにも下品だと思う。

テレビ番組などで芸人さんが身体を張って笑いをとるのが面白い、というのはメディアのなかに一般的にあるのかもしれないけれど、
私がみたのは、女性姿のふくよかな人が痛がって身体をよじられせているところを、複数の男性が押さえつけて、時代遅れのお産の呼吸法で、出産シーンにして笑いものにしているようにしか見えなかった。

テレビなどメディアを観て、他人のこと、古い価値観、制作側の常識、固定観念に影響されて卑屈になったり、疲れたり、気分が落ち込むなら、観ないほうがいいんだと思う。

でも何も思わずテレビなどのメディアを観ている人たちが、知らず知らずのうちに、そのような価値観を植え付けられていくだろうかと思うと、悔しく切ない。

身体を張る笑い、女性や女性姿をした人への扱いとかは、変わっていくのは時間がかかるかもしれない。
とりあえず出産シーンを、ひっひっふーで表現しようとするのは止めてくれないかな、と思う。
それくらい、調べたら、経験した人に聞いたら、すぐにわかることだから。

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