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2020年 人生観と育児観に影響を与えたコロナ禍の働き方改革について

今年は社労士事務所を開業してちょうど10年。そんな節目の年であったものの、これまでコツコツと積み上げてきたものが根底からひっくり返されるようなたくさんの試練と向き合った1年でもあった。

子育てのあり方と生き方そのものが変わった1年

プライベートではちょうど一年前の今日、6番目の娘が寝返りをした。当時、頻回授乳に頻回抱っこをしながら合間を見て本を執筆して、1番目と2番目は高校受験と中学受験の真っただ中で二人の進路も気がかり・・・そんな時期だった。いろいろ抱えるものが多すぎて大掃除なんてした記憶もない。
 まさに「精神的にもあの頃がピークだった」・・・と書こうとしたが、いや、違う。今の方がその100倍手がかかる。ついでにお金もかかっている。
 中高生の登校時間が早まったのでお弁当づくりは7時にコンプリートしていなければならない。時間の早さもそうだけど、むしろ私にとって一番緊張するのが、「いかに末娘が目を覚まさないように起きるか」ということの方が重要だ。私と同時に末娘(授乳中)が起きたりしたらすべて調子が狂う。目覚めたらまず授乳しなければならず(ちなみに今、1歳4カ月だけどまだ授乳している)もしも運悪く私と同時に目を覚ましてしまった場合、タイムリミットを優先するしかないので娘はしばらく私の足元で泣かされていることになるからだ。きょうだいが多いため、心優しい姉兄たちがかいがいしくあやしてくれるが、彼女の目的は残念ながらそこではない。母しかいないのだ。(ちなみに夫はというと大量の洗濯やゴミ捨てに追われていてそれはそれで大変だ)
 昨対比100倍の忙しさを自負する今年だが、不思議と何とかやりくりはできている。そんな状況に至るまでの振り返りを長々と書いてみたい。

 春休み前に本格化したコロナ禍。末娘に加えて小学生と幼稚園児まで加わってしまった。緊急事態宣言は出ていなかったものの、この先の世の中の混乱も予想できたため、社労士事務所は全員リモートワークをすることにした。3月末の日曜日、季節外れの雪が降る中、事務所に子どもたちを連れて行ってメンバーのPCを自宅に発送する作業をした。すぐに月初の給与計算ラッシュもあるため、一日もロスがないようにしたかった。 幸い、私の自宅は事務所から徒歩5分ということもあって、私については毎日子どもたちを連れて歩いて事務所に行って仕事をすることにした。久々に電話をたくさん取って役所との対応や自分が担当していない顧問先様とも話ができて新鮮だった。こどもたちについては学校が休みになってしまったものの、多くの企業や個人が秀逸な有料学習動画を無料公開してくれたりと、当時はとても恵まれていて、私も少しでも楽しめるようにと動画をプロジェクタで大画面投影したりとかなり工夫したのに、わが子たちはそれらには全く見向きもせず、よくわからない流行りのユーチューバー動画にどっぷりはまる羽目になってしまった。それでも「ママと一日中一緒にいられることが嬉しい」と言ってくれて、それはそれでギフトだったと思いたい。

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中高生は入学式もできないまま、オンライン授業へ。社交的な長女はSNSを駆使して積極的にまだ会えぬ同級生たちとの交流を図っていて、生きる強さを感じつつも体調の変化が顕著に出ていた。「ストレスを抱えるタイプじゃないないあたしがこんなんだから、他の子はもっとひどいよね」と言っていた。たしかに・・・

 2人ともそれぞれ、一生懸命頑張って入学した学校だったのに、毎日毎日、それぞれの個室にこもってオンライン授業では精神的にも滅入っただろう。
 従来よりも数カ月遅れての学校生活スタートとなったが、それを取り戻すかのように今はとても充実した毎日を送っている中高生を見ていると、子どもたちのしなやかさを感じずにはいられない。子どもたちには何をしてあげられたか?と振り返っても正直何もできていないとしか言えないけれども、安心して学校にゆだねていた時と比べて、確実に子どもたちに意識を向けるようになったことは確か。子どもたち一人一人の素敵な一面を、日々のちょっとしたことから感じられるようになったことは幸せなことだと思う。

事務所の働き方の変化

空っぽになった事務所を見たら無性に悲しくなった。コツコツ積み重ねてここまでの環境を整えたのに。事務所を起点に集まっていたメンバーはきっと居場所を見失って不安になっているだとうと思った私はオンラインミーティングを朝と昼の2回行うことにした。離れていて、雑談もできないでいるから集まると平気で45分、1時間と消費する。私は夜中も仕事をするし、セミナーも顧客訪問もオンラインに切り替わっていたので負担に感じずにいたが、他のメンバーにとっては環境が完全に整っていない自宅での慣れない作業の中、毎日朝と午後に2時間もおしゃべりに付き合わされることは結構なストレスだったようで、途中で意見されて気づくこととなった。
また、仕事を一人で完結できない人にとってはリモートワークは難しいとか、コミュニケーションの取り方がキモで、長々と文章で質問されると聞かれる方はかなり疲れるのでできるだけ電話やオンラインでパパっと説明したいとか、逆に雑談はチャット上でする方がそれぞれの集中が途切れることもなく、仲間とのつながりを感じられる有効なツールとなるということにも気づくことができた。
 今は16人のメンバーのうち、出勤する人が半分、リモートワークが半分くらいになっている。
 私はというと、事務所が徒歩5分という利を生かして一日のうちでも行ったり来たりするようになった。これまで午前10時のアポイント(大体東京)というだけでもバタバタして新横浜~東京間の新幹線やらタクシーを駆使してやりくりしていたのが9時のアポイントでも余裕になったことはありがたい変化だ。週に1~2回くらいあった出張もほぼなくなった。小さな子どもを育てながら働くうえで、この朝のストレスほど悲しいものはない。抱っこしてほしい、自分で着替えてみたい、どうしてもお友達への手紙を書いてから行きたいという願いを「急いで!」「早くして!」と毎朝毎朝、瞬殺で拒絶してきた罪悪感からも解放された。こうした変化は事務所全体の働き方にも反映されていて、私だけでなく、皆が当然に働き方を柔軟に変化させられるようにしている。また、専門的な学びを深めるための研修や打ち合わせも計画的に取り入れるようになり、全体的なレベルアップが図られた。

暮らし方の変化

約2年前に購入した家も、これまでは日中に在宅することなんてなかったが、庭の自然を感じ、書斎の環境を整え、暮らしを豊かにする楽しさを感じられるようになった。中古で購入した家は、引っ越した時から庭にたくさんの木々、花々が植えられ四季折々の自然を感じられる。仕事着にお金をかけていたこれまでのお財布事情もどことなく日々の生活にシフトしていくこととなった。この1年で庭でのバーベキュー環境が整い、ガーデニングのために植木屋さんに師事して木々の植え替えもし、書斎にはPC環境がかなり充実した。これまでだったら「子どもが小さいから」と諦めていたたくさんのことが、実は仕事と暮らしの境界線をぼかしていくことで可能になるということを実感できた。

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保育園との関わり

私たちの事務所は多くの保育園のお客様がいる。さらには自分でも別会社で保育園を運営している。コロナ禍においては「エッセンシャルワーカー」と呼ばれた彼らは上記に書いたような私たちの柔軟な働き方の対極にいる人たちだ。ニュースでは保育士の過酷な状況や不安な胸の内をつぶさに伝えていた。私の保育園でも社労士の子どもたちを預けていたこともあり、「社労士事務所の人たちは在宅勤務をしているのになぜ保育園に預けるのですか?」「医療従事者の子どもを預かるのは不安です」といったことを訴えられた。他の顧問先の園でも同様だった。まだコロナの全貌が分からない時期でもあり、不安も大きかっただろう。ただ、保育園にも休園や登園自粛の動きが広まってくると、少しずつ状況が整理され、保育士たちにも余裕が生まれてきたようだ。あまり報道されていないが、これまで忙しくて手が回らなかった打ち合わせやオンライン研修、園内環境の整備などが実はこの期間にとても多く実施されたように思う。他業種では雇用調整助成金で事務所メンバーが奔走する中、実は同じくらい保育園からの就業規則・賃金規程の見直しや業務改善の相談、保育士面談の実施のご依頼が殺到していた時期でもあったのだ。
 春先に不安を訴えていた保育士たち。でも実は子どもの数が減り、今までにない余裕ができた時期でもあった。保育士たちとの面談の中で「今までになくゆったりとこどもに寄り添えています」「子どもの大切な瞬間瞬間を捉えられたときに、保育士で良かったと思うんです」という声が出てきた。
 この時期を逃すまいと思った。

保育園を作ったのは子どもたちが安心して過ごせる環境をつくりたい、私のキャリアをしっかり継続させていくために。そんな思いからだった。でも実際に保育園を作ってみて思ったのは、「作るだけでは何にもならない」ということ。
保育士が人間関係で悩み、少ない人数でとりあえずけがをさせないことを第一に保育を「回す」のに精一杯、ベテランが多くて安心と思いきや実は体力の衰えに悩み子どもにきつい言葉を投げてしまっている、保育のレベルアップのために研修をたくさん受けるように言われているが忙しすぎて余裕がないし、学んだことを還元することもできない・・・
経営者側からは処遇改善で給与がどんどん上がってきたが額面1万2万で転職されたり賃上げ交渉でホトホト困っている。保育士不足だから言いなりにならざるを得ない、働き方改革が進んだのは良いことかもしれないが保育士たちは少しでも給与が高くてラクな園を選ぼうとするようになってきている・・・そんな保育士・経営者双方の胸の内を仕事を通して丁寧にヒアリングしていくうちに、こういう園にはわが子を預けたくないな、と思うケースがさまざまな園に行くたびに感じられてしまった。
 子どもが幸せな環境にいること、それが親たちの原動力になり、日本の将来を大きく変えていくことになるのだとしたら、保育の担い手である保育士もまた、働くことに幸せを感じられなければならない。コロナ禍はそんなことも想起させてくれたと思う。
 保育園における働き方改革を「保育士確保のため」と言われることが多いが、単に仕事が楽になれば保育士が集まるかというと、そこまで保育士のプライドは低くない。やりがいを感じたいから、保育士になってよかったと思いながら日々子どもたちと向き合いたいから、そのために働き方を変えようとしているのだ。

 企業の働き方、子どもたちの環境、保育士の意識、すべてが変わり始めている。
 どれもそれぞれバラバラの事象のようで、実は繋がりの深いものたちだ。そんな大切なことを気づかせてもらい、事務所全体で奮起して学びを深めながら突き進んだ1年だった。

「子どもが真ん中」という言葉をよく耳にする。これは子どもが最優先で親や保育士の犠牲のもとに成り立つというものではない。子どもを真ん中に据えて、親の働き方も保育園の働き方にもアプローチできる社労士事務所でありたいと思う。

#子育て
#保育園の働き方改革
#社労士

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