秋田・北海道鉄道乗り潰し旅 秋田編
いつもお読みいただき、ありがたうございます。玉川可奈子です。
最近、たまたま某銭湯のサウナで流れてゐた水曜日のカンパネラの「金剛力士像」を気に入りました。クセになります。
私はこの歌を可愛いラブソングと解釈してをります。この曲が似合ふ素敵な人に会へたら…と、恋愛・結婚はあきらめてゐるのに未だ夢想してしまします。
あと、詩羽さん可愛いです。
ここまで枕。
標題のとほり、秋田県と北海道の未乗路線乗るために旅に出ました。今回は秋田編です。どうか最後までお付き合ひください。
秋田へ行く道
仕事後、時間休を取得し旅に出ました。
日暮里の斎藤湯で心身を清め、いざ上野駅からとき329号へ。
まづは新潟駅へ行きます。
西陽を車窓に見ながら、北へ。気分は「ノーザン・エクスプレス」です。
十七時四十六分、新潟駅に着きました。隣のホームに停車してゐる、いなほ9号に乗り換へます。
車両は、かつて常磐線で特急フレッシュひたちとして快走したE653系です。
進行方向左側の窓側に座りましたが、外はぬばたまの闇の中。
笹川流れの佳景を見ることはできず、定刻二十時八分、酒田駅に着きました。
車内では、読書に励んでゐました。
酒田駅から歩いて五分程のところにあるホテルに泊まりました。地方の古いビジネスホテル、といつた印象のホテルです。明日は早いので、すぐに寝ました。
さて翌朝。
明治節のけふ。一年前のこの日は、山辺の道を歩いてゐました。
五時前に目が覚めました。身支度をしてホテルを出て、駅へ向かひます。外は真つ暗です。
かつて、寝台特急あけぼのが入線してきたくらゐの時間。
往時を偲びつつ駅に着きホームへ行けば、秋田駅行きの701系(三両編成)が停車してゐました。
向かうのホームには、昨夜乗つてきたE653系のいなほ2号新潟駅行きがゐます。
なほ、701系ですが人気がありません。座席はロングシート。
見た目もダサい。しかし、さうでせうか。私はこの無駄を極限まで省いた車体と車内に、なにか美しさのやうなものを感じます。ロングシートも気になりません。工夫すれば良いのです。
たまに、
「ロングシートだと駅弁やご飯が食べ辛い」
といふ人もゐますが、
「我慢しなさい」
で終了です。なほ、私の先生はロングシートでも駅弁を余裕で食べるさうです。
五時三十五分、北へ向けて列車は発車しました。羽越本線を酒田駅より北へ行くのは、象潟へ行つたとき以来でせうか。外は真つ暗で、何も見えません。
遊佐駅を出たあたりから徐々に空が青くなりました。岡の稜線や、田んぼ、民家が確認できるやうになりました。
吹浦駅を出て、すぐに海が見え、トンネルに入り、抜け出るとあけぼのの日本海が目の前に広がります。秘境駅で知られる女鹿駅を通過し、軽快に列車は走り抜けます。
ちなみに、車内ですが貸切状態です。
日本海を見下ろす位置にある小砂川駅に着いたころには、空も明るくなつてきました。
東の空が赤く染まつてきてゐます。ただ、鳥海山には雲がかかり、そのあしひきの山並みの美しさがよく見えないのが惜しいものです。
上浜駅で、列車の交換をし、女子高生が一人乗つてきました。
象潟駅に六時十一分に着きました。ここは、芭蕉が「おくのほそ道」で訪ねた北限の地です。
けふは、能因島も蚶満寺も行かず車内から往時を偲ぶのみです。十数名の高校生が、列車に乗り込んできました。
象潟駅から北は、いつだつたか恋人の実家へ行つたときを思ひ出します。けふ何かがあるわけではありませんが、あの日と同じやうに胸が締め付けられました。
駅ごとに人は増へ、金浦駅、仁賀保駅、そして西目駅を経て、かつての恋人の実家を車窓から一目見て、しばらく走り六時三十五分、羽後本荘駅に着きました。
東の空には、あかあかと朝日影豊栄のぼり、行く手を照らし出しました。
さくらのやうに美しいあの人とのことはこちらにも書きましたので、どうかご参照ください。
今思へば、八年も引きづれるほど、美しい経験だつたのでせう。けふも、倉木麻衣さんのあの曲を聴いてゐました。さう、何度でも…。
由利高原鉄道に乗る
羽後本荘駅から未乗路線である、由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗ります。旧矢島線です。
電池で列車を走らせたといふやうなことで知られてゐます。よく知りませんが。
ホームに向かふとゐましたゐました。私好みの素敵な車両です。
宝くじ号と書かれてゐます。「ちょうかい」のヘッドマークも可愛くて良いです。もちろんちょうかいは鳥海なのですが、公務員は一瞬ですが懲戒と解釈してしまひませう。
中に入ると、なんと机がついてゐるロングシートでした。
YR -2000形です。照明が目に優しくてよいです。また、座席がフカフカで座り心地が良いです。
六時五十分。鳥海山ろく線の始発列車は六名の乗客を乗せて出発しました。
なほ、玉川、第三セクター鉄道等協議会に加盟してゐる鉄道会社を応援してゐます。
この由利高原鉄道も、加盟してゐる四十社のうちの一つです。彼らは、鉄印帳といつた企画も行つてゐます。こちらの書籍がとてもわかりやすくて良いです。
かつて林業で栄えたこの路線、しばらく民家を窓に見、線路脇の尾花を楽しみます。
すぐに薬師堂駅に着き、お婆さんが一人乗りました。朝日が車内に差し込み、眩しくて西を見れば、稲刈りの終はつた田んぼが広がります。
ゆつくりと子吉駅に着きました。乗降なく、列車は走り出します。ゆつくりとゆつくりと勾配を登ると、景色がより素敵に見えます。
鮎川駅といふ素朴な田舎の駅を過ぎ、朝日が列車の右手にさすやうになりました。車窓は、皇国(すめらみくに)の原風景を思はせます。
黒沢駅を過ぎ、子吉川を渡ると、田んぼの真ん中にある曲沢駅に着きました。
そして前郷駅の手前で再び太陽が車窓左手に移りました。前郷駅では、YR -3000形の上り列車と交換しました。木造の素敵な駅舎でした。
気が付いたら車内は四名。久保田駅で一名乗車し、五名になりました。さつきの羽越本線と違ひ、高校生はゐません。西滝沢駅のホームには、柿がつらつらと実り、秋の景色を彩ります。
次の吉沢駅も、田んぼの真ん中にある素敵な駅です。
このあたりで太陽がふたたび車窓右手に移り、さらに山深くなつてきました。木々も色付いてゐます。
みちのくの 山のもみち葉 照りにけり 旅する我を なぐさもるかな 可奈子
川辺駅に着く手前、車窓左手に渓流があり、旅人を楽しませてくれました。
遠くの山にはもやがかかるのを見、トンネルを抜けて少し走ると七時三十分過ぎ、定刻より遅れて終点の矢島駅に着きました。到着前、雲は晴れ、雪を冠した鳥海山の山頂がチラリと見えました。
これで由利高原鉄道鳥海山ろく線、完乗です。
素敵な車窓に癒されて、ぬくぬくです。
矢島駅でフリーきつぷを買ひ、羽後本荘駅に戻ります。
いはゆるローカル線に乗りながら思ふのは、私は地味で素朴なのが好きといふことです。人も鉄道も。トワイライトエクスプレス瑞風やTRAIN SUITE 四季島のやうな豪華列車も素敵ですし、リゾートしらかみのやうな観光列車もとても良いのですが、けふの由利高原鉄道のやうな鉄道はそれらにはない安心感があります。ぬくぬくになります。
それに、地方のローカル線は、なんか小さくてかわいいです。さういふものが私は好きです。
角館へ行く道
羽後本荘駅でしばらく待つてゐると、ホームには列車を待つ人がたくさんゐました。八時五十七分、秋田駅行き普通列車に乗ります。またも701系です。座席の七割が埋まつてゐます。
秋田駅までの間、色付く木々と田園を眺めてゐました。ロングシートは旅情がないとかどうのかうのいふ人もゐますが、私は気にしません。
途中、秘境駅で知られる折渡駅を一瞬でも見ることができたのが幸運でした。
岩城みなと駅のあたりでは、雲一つない空の下、浜辺に寄する日本海の白波が美しく、ロングシートからでも堪能できました。
次の道川駅は、駅前がすぐ海です。なほ、「どうがわ」ではなく「みちかわ」と読みます。
桂根駅あたりまで日本海の佳景を楽しみ、九時四十分、秋田駅に着きました。
お腹が空いてきたので、駅にある駅そばしらかみ庵でにしんそばをいただきました。
さらに、衝動買ひで、駅弁を一つ購入しました。
次は、こまち18号で角館駅に行きます。
十時七分。こまち18号は進行方向を背中に向けて秋田駅を出発しました。立席特急券なので、どなたか来ないか戦々恐々として落ち着きませんでした。
三連休初日といふこともあり、それなりに混んでゐます。小さい子供も五月蝿いです。
奥羽本線は素朴な田舎の景色、かつ山深くて落ち着くのですが、つい眠つてしまひ、起きたら大曲駅でした。
大曲駅で進行方向が変はり、田沢湖線に入ります。目的の角館駅には、十時五十四分に着きました。
秋田内陸縦貫鉄道に乗る
急いで秋田内陸縦貫鉄道の駅へ行き、急行もりよし2号の急行券(320円)と乗車券(1700円)を買ひました。
そして列車に行くと…ものすごく混んでゐます。しかも乗客の多くがちやんころもとひ支那人です(なほ、ちやんころ、といふのは中国人をアチラの読み方で発音しただけで他意はありません。差別とかいふ言葉狩りはやめませう)。
ボックス席には座れず、ロングシートに座りました。
落ち着かない車内ですが、十一時五分に急行もりよし2号は角館駅を出発しました。
車窓はしばらく田園、遠くにはもみつ山々が見えます。支那人旅行客も、静かに車窓を眺め、せつせと撮影に励んでゐます。
最初の停車駅である西明寺駅では乗降ありません。田園風景が素敵です。途中、通過した八津駅のあたりはカタクリの群生地、大伴家持の歌、
もののふの 八十をとめらが くみまがふ 寺井の上の かたかごの花 (『万葉集』巻十九・四一四三)
が思ひ出されます。
山の色付きは、由利高原鉄道よりもこちらの方がより鮮やかのやうに感じます。田んぼが少なくなり、山が深くなるにつれて、鮮やかさが増してきます。
時折見せる川の美しさにも、目を奪はれます。それは渓流であつたり、木々の下を流れるせせらぎであつたり。
田沢湖の最寄りである松葉駅では、支那人旅行客がドツと降りて行きました。晴れてボックス席に座りました。
松葉駅までは、旧国鉄角館線。ここから新たに開通した路線になります。
にはかにトンネルが多くなります。
私はさつき秋田駅で買つた駅弁を食べることにしました。ローカル線、もみち、そして駅弁。なんといふ贅沢でせう。
前の席のお婆さんが、羨ましいにか覗き見してゐました。
隣のボックス席には、熟年カップルが楽しさうに黄葉の写真を撮つてゐます。見方によつては、不倫カップルに見えなくもありませんが。
上桧木内駅を経て、戸沢駅を通過すると、約五千七百メートルにも及ぶ十二段トンネルに入ります。まるで地下鉄です。
トンネルを抜けると、阿仁マタギ駅です。出発前に、職場のパートさんから、
「秋田のあの辺は熊が最近よく出るから気をつけてネ」
と言はれてゐました。しかし、私は列車の中。熊も列車には近づいて来ないでせう。
阿仁マタギ駅に着くと、駅前ではかかしコンテストが行はれてゐました。なんのことはありません。休耕田に、かかしを並べてゐるだけです。しかし、笑つてしまひました。
ところで、私の乗る急行もりよし2号は、二両編成で先頭車両にはリニューアル車を充ててゐます。座席が転換式になつてゐるなど、改良が施されてをり、乗りたいのですが惜しくも満席です。
そして、比立内川橋梁に至りました。
橋の上からの眺めは絶景です。列車を徐行してくれ、多くの人が窓にカメラを向けてゐました。
比立内駅に着きました。
ここから、旧国鉄阿仁合線に入ります。列車と交換し、北へ向けて走り出します。
途中、笑内駅といふ面白い駅があります。「おかしない」と読みます(正しい仮名遣ひは、をかしない)。急行は、笑内駅を通過して行きます。
そして再び橋梁を渡ります。次は大又川橋梁です。
もみつ木の葉が風に散るその姿、散りしもみちが清けし流れに浮かぶ様に思はず涙が出ました。
阿仁合駅に着きました。ここで数名の乗客が降り、さらに支那人客ら数名が乗つてきました。下車する人の中には、上記の熟年カップルもゐました。私は、この入れ替へのどさくさに、車両を移動し、リニューアル車へ行きました。
阿仁合駅を出発すると、しばらく川沿ひを走ります。
ひさかたの 天つ風吹き もみち葉の 散りにけるかも 人の見ぬ間に 可奈子
陽射しも手伝ひ、車内は暑いくらゐです。
阿仁前田駅に着きました。ここは、急行もりよしの由来、森吉山を望むことができます。
年のはに また来ても見む 森吉の 風のまにまに 散りしもみちを 可奈子
列車は、米内沢駅、合川駅を経て、縄文小ヶ田駅に着きました。ここは、環状列石で知られる伊勢堂岱遺跡の最寄りです。
世界遺産に登録されてゐるさうですが、UNの下部組織がやつてゐることに価値を見出してゐない私にはどうでも良いです。
なほ、言ふまでもないことですが、United Nationsを国際連合と訳したら烏滸です。正確には、連合国です。
そして米代川を渡り、十三時七分。
終点の鷹ノ巣駅に着きました。幸ひ、熊が現れることはありませんでした。ごうけつぐまやグリズリーのやうな強い敵なら焦りますが。
これで、秋田内陸縦貫鉄道を完乗しました。三セクで残るは、長良川鉄道だけです。予定では、今月中に乗りに行きます。
次は北海道編をお送りします。どうかお楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがたうございました。(続)
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