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宇都宮ライトレールの旅

 いつもお読みいただきありがたうございます。玉川可奈子です。

 思ひ立つたら吉日といひますが、今朝、起きて急に宇都宮に行かうと意を決し出掛けました。どうか、最後までお付き合ひください。

一、指定席券を求めて

 とりあへず、東武浅草駅に向かひました。今年の七月十五日に運用を開始したスペーシアXの指定席を確保するためです。

 浅草駅に着き、券売機で指定席の状況を見てみると、満席でした。仕方がないので、発想を転換し帰りの列車(スペーシアX6号)の情報を窓口で聞いてみると、ぞんざいな口を聞く対応職員に、

 「申し訳ありませんが、満席なのでお売りできません」

と言はれました。
 泣く泣く、銀座線で上野駅に向かひます。新幹線に乗ることにします。
 上野駅で八時五十四分発のやまびこ53号の自由席に乗るためのきつぷを買ひ、地下のホームへ行きました。

行先標示板を見て、胸を熱くするのは小学生のころからです。盛岡、山形、新青森、秋田、金沢、新潟、長野…その地名が並んでゐるのを見てワクワクします。

 E5系とE6系の二十両編成のやまびこが入線してきました。さういへば、E6系に乗るのははじめてかも知れません。秋田駅まで行く、こまちで使つてゐる車両ですね。

E6系

 十五号車の自由席に乗りました。

座席

 上野駅発車の時点で、乗客は十名程度です。

車内

 万が一、寝過ごして盛岡駅まで行つてしまつたら…と考へつつ、車窓を眺めながら朝食をいただきました。

万かつサンドと商売道具のiPad Pro

二、宇都宮の思ひ出

 ところで、宇都宮は実は私が三十代になつたばかりのころ、三年ばかり働いてゐました。某私立学校で非常勤講師をしてゐました。私が初めて教員の仕事に就いた場所です。給与面や待遇面で厚遇していただき、感謝しかありません(新幹線通勤をさせていただきました。しかし、実際は…)。

 この三年間は過去に就職したどの組織よりも楽しく、思ひ出深いものでありました。私に和歌を作つてくれた子(このことはここに書きました)、

仕事後のサウナ(南大門といふスーパー銭湯によく通ひました。広くて大きなお風呂とサウナが魅力的でした。職場の友達と休日にムームーを着て、休んでました)、

フィールドワークで二荒山神社を参拝して郷土の偉人である蒲生君平の話をしたこと、なほ、蒲生君平は「前方後円墳」の名付け親です。

 学校のHPには私が撮影した写真が未だに掲載されてゐること、ある生徒に恋心を抱かれて出勤時間に待ち伏せされたこと、いろいろな思ひ出があります。

 さうした楽しい記憶もあり、宇都宮は私の好きな街です。

 大宮駅で数名の乗車がありました。そして、列車も大宮駅を出発してから気合ひを入れ、速度を上げました。
 遠く、筑波嶺はひさかたの雲に隠れその美しさの霞む中、小山駅を通過して行きました。

三、LRT乗車記

宇都宮駅到着!

 わづか四十五分の乗車で宇都宮駅に着きました。目的は、一つ。さう、宇都宮ライトレールに乗ることです。

 実は、開業当日に乗る予定でしたが、不覚にも武漢熱により行けませんでした。

 久し振りの宇都宮、気分が昂まります。そして、懐かしい。

宇都宮駅西口の景色。

 駅の東口はあまり行つたことのない場所ですが、けふ来てみるとをかしきもので、ものすごい人です。宇都宮市内の全人口といつたら明らかに言ひ過ぎでせうが、カツプル(邪魔)や親子など、多くの物珍しさに集まつたけふだけの客がゐます。

宇都宮駅東口

 九時四十七分ころ、列車がホームに入線してきました。人が多過ぎて、写真を上手く撮れません。

きたきたー!宇都宮LRT

 中には、いはゆる「足」として利用してゐるであらう人もゐました。
 車内は満員です。もちろん、座れませんでした。九時五十二分に、私を乗せたLRTは発車しました。車窓を動画撮影する者が数名ゐます。
 列車は思つてゐたより加速性能がよく、かつ静かで揺れも少ないのが良いですね。
 最初の停車駅である東宿郷駅では、誰も降りませんでした。私の隣ゐる鉄ヲタ二人組が五月蝿く、話し声が耳障りです。男性に限らず、人は群れると気が大きくなるものなのでせう。私は群れるのが嫌ひです。
 気に障るので、ヘッドホンを着けました。

 駅東公園前で、親子三人組が降りて行きました。
 思ふに、親子で乗る人は、乗り通す人は少ないでせう。理由は、子供がすぐに飽きるからです。
 峰駅の手前で陸橋を渡りました。陽東3丁目駅までに、二回ほど列車とすれ違ひました。
 宇都宮大学陽東キャンパス駅で数名の乗り降りがありました。駅前にショッピングモールが見えました。
 そして、平石駅の手前では田んぼが見えるやうになりました。

 車窓を見てゐて、数店の商店にはLRTを歓迎する張り紙がありました。思ふに、LRTに反対する人は車が大好きな人でそれ以外の交通手段とマクロ経済の分からない人でせう。宇都宮で働いてゐる時、LRTに反対する教員がゐましたが、彼らの主張は聞くに堪へないおよそ教員とは思へない自分勝手なものばかりでした。

 今思ふと教員時代は露骨な反安倍の人(「アベ政治を許さない」といふ廃人もとゐ俳人の金子兜太が書いた汚いヘタクソな字の印を付けたあたをかな人、恥づかしいことに気付いてゐない惨めな人)もたくさん見てきました。

 なほ、念の為、私は反アベでもないし、産經新聞のやうな親安倍でもありません。私は頭のイカれた左翼も嫌ひですが、学のない阿呆な保守(呆守)も嫌ひです(学はそこそこあつても無礼な者もゐます。さういふ人も相手にしません)。

 スペーシアXもさうですが、LRTの混雑はしばらく続くでせう。そして、混雑が去つた後、如何に地域の人らの足として機能するか、そこが課題でせう。果たして、富山のやうに成功するでせうか。私は成功すると信じてゐます。

 運良く、平石駅で座れました。ここから景色が都市から田舎へと変化しました。

平石中央小学校前駅 田んぼが見えます。

 稲穂のよく実つた田、空を飛ぶ千鳥が見え、鮎を釣る人の多き鬼怒川を渡りました。

鬼怒川

 飛山城跡で目の前の親子が降りて行きました。車との共存をはかるためか、駅前には小さな駐車場がありました。

飛山城跡駅を出てからの車窓

 グリーンスタジアム前駅の近くにある清原球場はかつて来たことがありました。かつて、ここで日米の大学野球の親善試合が行はれました。当時のわが皇国の四番は福岡大学の梅野(現・阪神)でした。なほ、私は当時の梅野からは全く猛虎魂を感じず、むしろ明治大学の岡大海(現・ロッテ)から勝手に猛虎魂を感じてゐました。

グリーンスタジアム前駅のあたりの車窓

 車窓にはしばらく住宅地と企業の工場が見えます。いはゆるロードサイド店舗のお店も目立ちます。
 終点前のかしの森公園前駅で鉄ヲタ二人組含め、かなりの乗客が降りて行きました。何かあるのでせうか。

 そして、やまびこよりも長い乗車時間を経て終点の芳賀・高根沢工業団地駅に着きました。

終点です。

 十時五十分、定刻よりもかなり遅れての到着です。ここから折り返して宇都宮駅に帰ります。この駅にも、ホームにラーメン二郎級の列ができてゐます。

 帰りは来た時と反対側に座りました。すぐに車内は混み出しました。上り列車もかしの森公園駅でそれなりに降りて行きました。
 車窓を見てゐると、Canonや久光製薬など多くの企業の看板が見えました。かうして見ると、栃木県の経済規模の大きさを思はされます。ところで、玉川、混雑した車内で酸欠になつたのか、頭が痛くなりました。

宇都宮LRT座席

 宇都宮駅に戻りました。LRTのホームは相変はらずの混雑です。

宇都宮駅東口に帰ってきました。

 用事も済ませたので、今度は普通列車で帰ります。帰りは、普通列車のグリーン車です。

東北本線グリーン車

 ところで、LRTはなぜ黄色を使つてゐるのでせう。これは私の勝手な思ひ付きですが、レモン牛乳の色ではなく黄ぶなが製作者の深層にあつたと見てゐるのです。

 黄ぶなは、郷土玩具で無病息災を願ふものです。遠いむかし、宇都宮で天然痘が流行つたときがありました。古へ人は神様に病ひが治ることを一心に願ひました。ある日、名も無き古へ人が田川で釣りをしたところ、黄色い鮒が釣れました。そして、病人がその鮒を食べたところ、病ひが治つたといひます。
 ぬくぬくな絵本とその読み聞かせもありますから、見てみてください。

 お土産に、栃木限定のなんか小さくてかわいいやつも買ひました。

黄ぶなとなんか小さくてかわいいやつ

四、寄り道

 小山駅以北の東北本線に乗るのは久し振りです。新幹線と並走しつつ、懐かしい景色を眺めていました。車窓左手には、行きときによく見えなかつた筑波山が見えてゐました。
 熊沢蕃山が幽閉されてゐた古河のあたりで、雲が出てきました。

 利根川を渡り、埼玉県に入り、栗橋駅を経て十三時十二分、東鷲宮駅に着きました。ここで降りて、駅近くの百観音温泉に行きます。

百観音温泉

 掛け流しの温泉で、茶色く濁つた塩化物泉です。よくあたたまります。

 百観音温泉に行くのは何年振りでせう。私は、この湯の香が好きで、落ち着きます。良い湯とは、香が良いといふのが私の直感です。
 サウナに三セット、あとはお湯と水の交互浴をしました。湯上がりは、お肌が締まつた感じがして、ツルツルです。しばらく汗が止まりませんでした。
 駅に戻り、太陽光で手ぬぐひタオルを乾かすと…、なんとほぼ乾きました。十分程度です。

 「修学旅行」と表示されたE257系が走り去り、次に来た伊東駅行きに乗りました。

E257系

 ここから、伊東駅まで行けるといふのに驚かされます。

これに乗ります。
駅前にあつたイオンがなくなつてる!?

 車内の冷房で汗がひき、手ぬぐひタオルも完全に乾きました。ところで、ファミリーマートで買つた今治タオル、これオススメです。一千円ちよつとですが、程良くホワホワで大きさもちやうど良い。最近、好んでゐます。

 大宮駅で一旦降りました。次は、ニューシャトルに乗ります。

 ニューシャトルは昭和五十八年に開通した新都市交通で、埼玉版舎人ライナーといへば伝はるでせうか。

ニューシャトル、これに乗ります。

 鉄道博物館駅を出ると、車窓に「ロヂャース」の看板が見え、埼玉県であることを実感します。「ヂャ」の表記が好きです。

 車窓は住宅。そして遠くに山々。面白味はありませんが生活感に満ちてゐます。
 吉野原駅の手前で鷲のマークが見えました。大正製薬の工場か何かでせうか。武漢熱にかかつた時、リポビタンDのお世話になりました。他にも工場らしきものが車窓に見えました。

 沼南駅に近くの原市沼に古代蓮が咲くさうです。
 丸山駅のあたりから木々の緑が増え、都心部から郊外に出てきた感じがします。
 羽貫駅に着く手前で車窓右手を見ると、E7系が通過して行きました。この路線、面白いことに東北新幹線と上越新幹線と並走してゐるのです。新幹線通過時が最大の見ものでせう。
 そして終点の内宿駅に着き、ニューシャトルを完乗しました。

ニューシャトル、内宿駅。

 これで、また一歩、国内の鉄道全線乗車に近付きました。

内宿駅

 来た列車に再び乗り、折り返して大宮駅に帰ります。志久駅の手前で再びE7系とすれ違ひました。こちらはノロノロと運転してゐますが、相手は一瞬で駆け抜けて行きます。

 読書をしてゐる間に、大宮駅に着き、再び東北本線に乗り家路へと急ぎました。


新たに通ぜし宇都宮の鉄道に乗りて作る歌一首幷て反歌
 とりがなく 東の国の 下野の 秋の盛りに あらたしき このまがな道 人さはに 満ちてありけり この国の さかゆるがごと この道の いやますますに 玉匣 二荒の神の 恵みありこそ

反歌

 下野の まがなの道は けふのごと さかゆるぞよき いや年のはに 可奈子

 最後までお読みいただき、ありがたうございました。

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