マガジンのカバー画像

お探しの眼鏡、おでこに載ってます。 (書架こぶね)

6
読書は孤独。  ひとり揺れる 身の丈の舟。  言葉の海に 漕ぎ出す こぶね。
運営しているクリエイター

記事一覧

『冬至』  朝倉かすみ

冬至には  朝倉かすみの 「冬至」を読む。 短篇集『ともしびマーケット』の 2作品目。 北海道在住 44歳 ひとり暮らし。 パートタイムで働く 門田新子の日常が 慎ましく愛おしい。 帰宅すると コートを着たままストーブをつけ  浴槽に湯を張りながら 二重巻きのマフラーをしたまま  ストーブを背にして 夕刊を読み進め お尻が ようやく暖まってきたら 風呂場に行く。 風呂上がりの晩酌は  沖縄の島豆腐 小松菜 長ネギ 生葛きりの小鍋仕立てと   冷やの

はじめての森茉莉。

たとえば 一日がかりの 病院の付添い。 大人になっても 気鬱な歯科通い。 手に負えそうもない 仕事etc。 靴を履くのも 躊躇うような 外出には  森茉莉の本に 同伴いただく。 文豪・森鷗外に 溺愛され 『お茉莉は上等、お茉莉は上等』と  乳母日傘で育てられた 正真正銘のお嬢様。 父の印税支払期限(30年)が切れる 50代で  生きるために書く手段を選んだ 異色の作家。 幼少時から  身に付けるものは 国内外の超一流品ばかり。 欧羅巴暮らしや 着

『オーケストラの105人』

古本市で  出逢いました。 絵のタッチに魅かれ 手にとって 大正解💕 ウインターシーズンの週末に  読みたくなる一冊です。   拡大して 立ち読み感覚で ご覧くださいね。 コンサートの 大舞台で 優雅に演奏する オーケストラ団員達の 時計を 逆回転させてみたら…という お話 。 あらまぁ  ふっふっふ。 そうそう 私も こんな感じ。 なぁんだ みんな 同じなのねぇ。 シャワーを浴びて  身支度を整えるシーンが 妙にリアルで 微笑ましい。 ありふ

『抱腹! イタリアン・ジョーク』

重箱の隅をつつく…という言葉があるが  図書館の隅っこや 最下段の棚には 掘り出しモノが多い。 まるで この本の熱烈なファンが  いつでも 読めるように  こっそり隠しているのでは…と 思うぐらい。 『抱腹‼️イタリアンジョーク』は そんな運命の一冊。 248のバルゼレッテを 日本に居ながらにして 堪能できる。 {barzellette:楽しい小噺・愉快な冗談話} イタリアでは 老若男女を問わない 身振り・手振りを交えての コミュニケーション手段らしく 

『安閑園の食卓』

人生最後にも 読みたい。 (自力で読めなければ… 息子よ 親孝行だと思って朗読せよ。)  何度 読み返しても 素晴らしい。 安閑園の暮らしに ゆったりと 想いを馳せながら 夢見ごこちで 瞑目したいとさえ思う。  愛おしい 一冊。 裏表紙の解説は 実に上手い。 必要最低限の文字数で 概要を押えている。 読後の興奮を鎮めて  脳裏に浮かんだ映像を 反芻しながら書かれたのだろう。 私なんぞは 拙ブログで紹介する為 再々再…読したら さぁ大変❗️  とても

スタインベック 『朝めし』

三寒四温の頃  なぜか無性に読み返したくなるのが  スタインベック著・『朝めし』 5ページの名作掌編です。 冷気が身にしみる 谷間の夜明け。 灰色のテントのそばの  古錆びた鉄ストーブの裂け目から噴出す オレンジ色の炎。 赤ん坊に 乳を吸わせながら しなやかな動きで 朝食の支度をする若い女。 ジュージュー音をたてて 縮み上がるベーコン。  オーブンから出されたばかりの 褐色の分厚いパン。   熱く苦いコーヒーに 砂糖を入れて始まる  ささやかな朝食