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VTuberオタクが見るbillboard YEARチャート~TikTokを席巻した2022年~

2022年度のビルボードジャパン年間チャートが発表された。

集計期間は2021年11月29日~2022年11月27日(2021年12月8日公開分(12月13日付)~2022年11月30日公開分(12月5日付)である。

※本記事で掲載している再生数は2022/12/11時点である。
※TikTokの再生数は#曲名やキーワード名で検索したものであるため、参考値であることに留意されたい。

2022年Vtuber楽曲は「Hot Albums」、「Download Albums」「TikTok Chart」のベスト100にランクインした。

特に、今年一番の衝撃はTikTok Chart1位獲ったぼっちぼろまる「おとせサンダー」。ぼっちぼろまるさんは、すでにVtuberオタクの一部にはその才能が知られていたが、世間的には知名度が低い存在だった。
古参Vtuberオタクの中には2018年V紅白で披露された「タンタカタンタカタンタンメン」の衝撃を強く覚えている人は多いだろう。その才能が今年TikTokによって開花した。

また、Vtuberは数多くのミームをTikTokで残している。本記事の後半ではそちらを紹介していこう。

Hot Albums

DL・販売の全てを合わせた総合アルバム・チャート「Hot Albums」。

61位 ROF-MAO 「Crack Up!!!!」


にじさんじ所属ライバーである加賀美ハヤト、剣持刀也、不破湊、甲斐田晴が結成したユニットROF-MAO。男女問わず愛される「面白くてカッコイイユニット」を目指している。本アルバムは作曲陣にsyudou、広川恵一(MONACA)などが参加したユニット初のミニアルバムでファン待望の一枚であった。

65位 葛葉 「Sweet bite」

葛葉のメジャーデビューアルバム「Sweet bite」が65位にランクイン。
シドやたなかが制作したオリジナル曲6曲+インスト曲が収録されたミニアルバム。先行配信された甘噛みのMVは一週間で100万再生を超えた。

Download Albums

国内主要音楽DLサイトのアルバムチャート「Download Albums」。

43位 星街すいせい「Still Still Stellar」

星街すいせい初となる全国流通アルバム「Still Still Stellar」。
昨年発売のアルバムにも関わらず、ダウンロードチャートでは43位という好成績を残した。まさにロングヒットの名盤である。

95位 ROF-MAO 「Crack Up!!!!」

総合アルバムチャートで結果を残した ROF-MAO 「Crack Up!!!!」が同様にランクイン。

TikTok Chart

TikTok上における楽曲人気を測るチャート「TikTok Chart」。

1位 ぼっちぼろまる 「おとせサンダー」

2022年度のTik Tokチャートを席巻した「おとせサンダー」。
イナズマに打たれましたという歌詞に合わせて、踊るダンス動画がヒット。2022年を代表するVtuber楽曲だろう。

Billboard Yearチャートを俯瞰して

Vtuber業界にはホロライブ・にじさんじという2大グループが存在するが、ホロライブでチャートインしたのは星街すいせいの「Still Still Stellar」のみ。一方にじさんじは、「Crack Up!!!!」、「Sweet bite」というにじさんじの男性グループがランクイン。

また、星街すいせいのアルバムは去年発売であるから新規チャートインしたのはにじさんじのみとなる。これは比較的男性アイドルグループはCDが売れやすいこと、ファーストアルバムであったことなどの要因が考えられる。

そして「Download Songs」「Streaming Songs」などシングル曲におけるチャートインがなかったところから、まだ曲そのものがバズっている状況ではないと言えるだろう。

そのように考えると、2022年Vtuber楽曲単体で最も評価されたプラットホームはTikTokのように思う。TikTokチャートの1位は「おとせサンダー」。歴史的事実としてVtuber音楽がミュージックシーンに跡を残した証拠だ。

また。Billboard TikTok Weekly Top 20に年間を通して多くのVtuber楽曲がチャートインしている。
次項では2022年を振り返り、TikTokにおけるVtuber楽曲の流行を見ていこう。

Vtuber音楽のTikTokミーム

湊あくあ「あくあ色パレット」

TikTok2022年の最初に流行ったVtuber楽曲は、湊あくあ「あくあ色パレット」
2021年12/27日に19位にチャートイン。徐々にチャートを上げ、最高4位。その後も継続的に流行り総再生数1億1540万再生。
530万フォロワーを抱えるおおしま兄妹のしゅんさんが、双子ダンスの振り付け動画を投稿していたことがバズりのきっかけと考えられる。

@oshima_

@sakurao1 | #湊あくあ さんの『 #あくあ色ぱれっと 』の振付をつくってみたよっ!⚓️ #オリジナル振付 #Junky @minatoaqua

♬ #あくあ色ぱれっと - 湊あくあ

七草くりむ「だいあるのーと」

1/24日19位にチャートイン。最高3位。1140万再生。
#たったかたーん というハッシュタグとともに投稿されることが多く、数字を数え上げていく様子を活かしたかわいい動画がバズった要因か。くりむちゃんのかわいい声とハウスの心地よいビートが7秒間に詰められている爽やかな一曲。

@minami.0819

#だいあるのーと 髪の毛パサパサ笑笑笑笑笑笑笑笑

♬ だいあるのーと - Crim Nanakusa

弦月藤士郎「ネコガネコロンダー」

音源として配信されていないためチャートに掲載されていないが、大きくバズった弦月藤士郎「ネコガネコロンダー」を紹介。

にゃんにゃん猫にゃんにゃん猫猫というフレーズに対して、猫のポーズを踊るショート動画がヒットした。普段TikTokを見ている人でもこの曲がVtuber楽曲と知らないユーザーも多いだろう。
有名人では乃木坂4の堀未央奈、King & Princeの永瀬廉などがダンス動画を投稿している。

@horimiona10

😽にゃんにゃんねこ😽🐈🐈

♬ ネコガネコロンダー - _1o46

沙花叉クロヱ「人生リセットボタンぽちーw」

惜しくもチャートインを逃したがTikTokで大バズした沙花叉クロヱ「人生リセットボタンぽちーw」。現在の再生数は5910万再生。
「人生リセットボタンぽちーw」というキャッチーなフレーズとかわいい振り付け、四つ打ちのクラブサウンドが噛み合い中毒性のある楽曲となっている。バズった振り付けはTikTokクリエイター逢花ゆまが考案。後に本家に逆流し、沙花叉クロヱも踊っている。

@cv_yuma_

人生リセットボタンぽちーw 🎣#オリジナル振付 で踊ってみた🎣音源ご本人様タグ付け失礼します。 #沙花叉クロヱ #hololive #おすすめにのりたい

♬ オリジナル楽曲 - 沙花叉クロヱ - 沙花叉クロヱ

ぼっちぼろまる「おとせサンダー」

TikTok年間チャート1位を記録したぼっちぼろまる「おとせサンダー」。
今年の代表的なTikTok楽曲と言えるものがVtuber楽曲から登場した。

6/1日TikTokチャート初週1位で登場。その後継続的にTikTokチャートに顔を出し、年間を通して最大の再生数を誇った。総再生数3億7950万再生。

「イナズマに打たれました」という歌詞に合わせて、指を稲妻の形にするダンスが大流行。振り付けはダンスクリエイターの中野亜紀が担当している。Kaiyouのインタビューでは、TikTokのトレンドを研究し、戦略的に動画を投稿していったという。

長瀬有花「とろける哲学」

脱力系シンガー長瀬有花の「とろける哲学」は柔らかい声質と耳に残りやすいサビが特徴的なVtuber楽曲だ。8/22日14位にチャートイン。最高14位。3860万回再生。
「ここどこだ、あれ宇宙だ、ねこだ」のフレーズに合わせて最後にねこをポーズをするシーンがTikTok上でヒット。

「とろける哲学」はイラストとともに投稿されることも多く、一種のアニメーション動画のようになっている。このようにTikTokシーンはダンスのみではない。バズの始まりも多種多様だ。

@maru_o_7

天使になったことに気づかない少女#イラスト#おすすめ

♬ とろける哲学 - Yuka Nagase

ぼっちぼろまる「タンタカタンタカタンタンメン」

8/29日登場。初週18位。最高5位。1億2710万再生。

ぼっちぼろまるの代表曲である「タンタカタンタカタンタンメン」。過去の代表曲がTikTokにてぼっちぼろまる二度目のバズを生み出した。
ダンスの振付はおとせサンダーと同じく中野亜紀氏が担当。

後にバズを受けてシン・タンタカタンタンタンタンメンを投稿。おとせサンダーと同じような美しいアニメーションMVとなっており、現在Youtube再生数228万再生の大ヒットとなっている。

笹木咲 / 椎名唯華「さくゆいたいそう」

さくゆい体操は惜しくもチャートインを逃したが、この曲がバズったことに疑いの余地はないだろう。現在2950万再生。

さくゆい体操はキノシタさんらしいダンスミュージックで、腕を大きく振るサビの箇所が印象的だ。TikTokでもこの箇所が強調され、にじさんじライバーを始め多くの人がダンス動画を投稿している。

宝鐘マリン「I’m Your Treasure Box *あなたは マリンせんちょうを たからばこからみつけた。」

ここでチャートインしかかった曲を紹介。通称マリ箱。840万回再生。
振付はわた氏。
公式から振付動画をアップしており、最初からTikTok的バズを狙った動画と考えられる。ちなみに、宝鐘マリンはこのダンス動画でTikTokデビューをしている。

[feat. 花譜, ツミキ] トウキョウ・シャンディ・ランデヴ / MAISONdes

11/30初登場18位。現時点での最高17位。1870万再生。

言わずとしてたアニメ作品「うる星やつら」のED。
花譜とツミキのコラボ曲であり、ツミキさんのポップなビートに乗せて体を揺らすことのできる一曲。
だが、Tiktokでは帝京平成大学の空耳をきっかけにバズリ中。元ネタはニコニコ動画。なんでなんだ。

番外編 白上フブキ「ARクレー」

掲載した動画は弁護士で有名な岡野タケシ事務所が投稿したもの。
なぜか白上フブキの声ネタを元にした#ARクレーがTikTokでバズっていた。総再生数は1880万。

原神のクレーちゃんと白神フブキの声ネタを合わせた謎に中毒性のあるショート動画だ。白神フブキのビートを刻む声が妙に面白い。思わず色んなところにクレーちゃんを登場させたくなるTikTokらしいミームだ。

まとめ

TikTokチャートを振り返ると、ホロライブ所属のVtuberも大きく数字を残している事がわかる。今年出たVtuber楽曲で「Hot Albums」、「Download Albums」にチャートインしたのはにじさんじの男性ライバーだけだったこととは対象的だ。ホロライブはTikTokで使いやすいように秒数が少ない楽曲を発表するなど戦略的にTikTokに力を入れている。

そして、何よりも最大のサプライズは、ぼっちぼろまる「おとせサンダー」の大ヒットだ。2022年のTikTokチャートに足跡を残し、日本の音楽の歴史にVtuberの名前を確かに刻んだ。ぼっちぼろまるさんは今年「タンタカタンタカタンタンメン」もヒットさせている。プレステのCMに採用されるなど今後彼が出す曲に注目が集まることは間違いない。

また、七草くりむ「だいあるのーと」や長瀬有花「とろける哲学」などまだ一般的には知られていないVtuberをTikTokは掘り出した。その他チャートでは考えられないことだ。TikTokが新人Vtuberに向いている市場であることには間違いないだろう。

最後に、現在バズリ中のトウキョウ・シャンディ・ランデヴ。
楽曲発表当初はTikTokチャートに乗らなかったものの、ここに来てバズりの勢いを感じる。果たしてこれからどうなるのか……年末までTikTok Weekly Top 20を追っていこう!


TikTokは今や音楽的バズを最も生み出せる市場だ。
Vtuberは何度もTikTok市場に挑戦し、上手く乗りきれなかった過去がある。しかし、2022年はTikTok市場に大きな足がかりを作る事ができただろう。これからTikTok内で新たなVtuber文化が生み出されていくことを楽しみにしていきたい。


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