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Ka na ta への手紙

2023年12月1日。記す。

加藤哲朗から Ka na taへ向けて。




あなたはいつも、ただの布でありたいと願うので

なるべくあなたが、記号にならないように努力しました。

あなたの名前は、Ka na ta ですが、服の上にはそれを証明するタグはありません。

服が、衣服を超えて特別な意味や価値を持たないように、ただひたすらに纏う身体に寄り添うように、あなたと歩んできたつもりです。

あなたはとても優しい。

僕とあなたは、念じるように、その身体はきっと大丈夫、

と、服に込めたけど、届いたのかな。どうかな。

僕と同じなら、届いた瞬間もあれば、鏡の前でそれを否定する日もあるか。


僕は服が好きな人も大事にしたいけれど、あなたはどちらかというと、服に対して臆病で、服が苦手な身体に興味を持っていたので

僕はいつも板挟みでした。板挟みになりながら、僕は僕を弱めようとしてきたつもりです。

あなたの方が、この世界に足りないと思っていたから。

僕は人間だから、やっぱり形を追いかけてしまうときがあります。

あと少し、もう少し、こういう形にしたい、とか

こんな形みたことない、から、あの人もびっくりしてくれるかもしれない、とか

でもあなたはずっと身体を追いかけてきたから、僕はふと、あなたを想うと

僕が作りかけた形が全てゴミに見えるのです。

感動しては、感動したはずの形が、翌日にゴミに見える。

あなたのそばにいると、その繰り返しでした。

それでもやっぱり

僕はあなたに近づきたくて、目を閉じ、布の声を聞いて、身体に耳を澄ませて

なるべく布と身体だけで生まれた服、僕が消え落ちた服を、作れるように、と、願ってはきました。

ずっと願って、続けてきたけれど、なかなか難しいものですね。うまくできなかったかな、最後まで。

うん。でも少しだけ、聴けるようになったよ、身体と布の声。

そしたら思いました。

あなたは、たまたまそうでなくてはならないこと、が好きですね。

だから、僕もそれを作りたかった。




2023年11月3日。

あなたは18歳になりました。

僕はあなたに別れをつげます。

もっと僕がちがうのならば、あなたとこの先もずっと歩めたはずなのに

気付いたらあなたはもう見えないくらい遠くにいて、僕は追いつくことができなくなってしまいました。

でもいつか、また必ず迎えにいきます。

僕ね、39歳になって免許も取ったんだよ。

だからきっと大丈夫。

あなたに出会えて、ここまで一緒に歩んでこれて、本当に幸せでした。

ありがとう、Ka na ta。

最後に一緒に作った服が、色んな身体を照らしてくれたらいいね。

ほんとうに、そうおもってるんだ。

加藤哲朗より。





Ka na ta さいごの服たち
以下の日程で、開催されます。
良かったらお越しくださいませ。

12月2日-3日
会場 shucof 神楽坂
13時open 19時close

東京都新宿区築地町6 北星ビル4F
東京メトロ神楽坂駅1出入口より徒歩約7分
東京メトロ江戸川橋駅4出入口より徒歩約7分

12月8日-10日 ★1日増えました。
会場 京都 bijuu gallery
13時open 19時close
600-8019 京都市下京区木屋町通四条下ル船頭町194村上重ビル

全ての会場において、初めての方も、知ってくださっている方も気軽にお越しください。Ka na ta のことまだ知らない人に、届けること、手伝ってもらえたら嬉しいです。

https://forthedoby.com