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『数学ギョウザ』

「我が社は満を持して宇都宮に進出する! 明日から気合を入れていこう!」
 具と皮の比率、羽のよれ具合に由来する食感の統計、膨らみの曲率の許容範囲など、全てが計算し尽くされた“数学ギョウザ”が売りだ。
 いくら宇都宮が餃子の本場と言えど、数学には勝てまい。

 営業開始からすぐ、物珍しさのためか数学ギョウザは飛ぶように売れた。半期には販売計画を大幅に上方修正し、新規店舗をどんどん建てた。


 ところが、1周年を迎える頃、来客数が激減した。蓄えておいた資金で広告を打ちまくったが、効果は見られない。

「社長、数学ギョウザ……飽きられてしまってるようです」
「お客様アンケートの結果を反映して再計算だ! ついでに販売計画も全て見直し! 社内改革だ!!」

 チェーン店は全て閉鎖し、その資金で宇都宮に新しい店舗を建てた。従業員は全て新店舗に異動。そして、新店舗の看板には我が社の売りをデカデカと……

“一つ一つ、丹精込めて。手づくりギョウザ!”



(おしまい)

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