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【江戸ことば その18】桂馬の釣褌(つりふんどし)

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「桂馬の釣褌(つりふんどし)」

桂馬を打って両当たりとすること。
転じて、二股をかけること。

(…異性2人を①引っかけ②自分に結わえるから「釣褌」か)

文例・文化11年(1814年)
「おや、桂馬の釣褌」
2011年2月7日 Twitter投稿


桂馬は、2つ先の左右両隣をどちらでも狙える、器用な動きをする将棋の駒です。狙いを両当たりで選ぶことが出来ます。「桂馬の釣り褌」には、滑稽な語感があります。

単語の後ろに言葉を付けて転がしていく「口遊び」は、よく江戸語にあります。釣り褌はまだ意味がありますが、全く意味のない言葉でころころと言葉を転がしてしゃれることが多いです。
例えば、「ありがた山のほととぎす」。「あー、ありがたや」という時に、それだけでは終えないんですね。
これを面白がるセンスは、昭和中期のギャグ「当たり前だのクラッカー」とも、共通しているように思えます。

あの馬鹿息子、よりによって、株仲間のお店(たな)の娘たちに手を付けおって。二人の娘とも、親父はよく見知った同業。その娘たちに、桂馬の釣り褌を仕掛けるほどの馬鹿だとは……
明日の株仲間の寄り合いで、双方の親に会わせる顔がない。

写真は2011年8月、立秋のころに撮った、桜の古木です。
自宅の庭を美しく彩ってくれましたが、去年残念ながら枯れました。

18桂馬の釣褌


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