見出し画像

【江戸ことば その8】むすこびや

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「むすこびや」

[オランダ語モスコビアの訛]
オランダ人の舶載したなめし革のひとつ。
いんでん革に似て皺文(しぼ)あるもの。
ロシアのモスコー産なれば言う。

(…江戸の町人が、モスクワという言葉を使っていたとは!)

文例・安永8(1779年)
「むすこびやの巾着に、珊瑚樹の根付(ねつけ)」
2011年1月18日 Twitter投稿


これは、『江戸語の辞典』に掲載されている言葉3万の中でも、かなり驚かされた言葉の一つです。
「印伝」は私も好きで、歌舞伎座の売店で買った印伝の安い小銭入れを持っています。同じようなものでも、しわしわの革で作られた外来ものだと、お江戸では「モスクワ」と呼ばれていた…
驚愕ですよ!
訛って「むすこべや」とも呼ばれていたそうです。

大旦那の悪いところだけを嗣いだ茂兵衛さん、これがどうもいけない。遊び癖は抜けず、仕事にもちっとも身が入ってねぇっていうんでさ。
巾着は印伝、あるいは息子部屋、持ち物にも金をかける。万事、吉原でちょっと気取ってみせたいがため、だってんだから。
お袋のおせいさんは、ため息の付き通しだってよ。

写真は2007年8月、村の公園の紅葉だそうです。
父のブログより。

8むすこびや


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?