見出し画像

【江戸ことば その27】金打(きんちょう)

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「金打」(きんちょう)

約束をたがえぬ証拠として、武士が刀の刃と刃、鍔(つば)と鍔などを打ち合わせること。
ちなみに女は鏡と鏡。

(…「相違ないな?」「わしの決意は変わらぬ!」「よし」キーン!格好いい)

文例・嘉永7年(1854年)
「大八、左九郎思い入れあって以前の刀を執り、両方より金打して」
2011年2月16日 Twitter投稿

この言葉は、辞典を読むまで知りませんでした。時代劇などでは見られるのかしら?
女性が鏡と鏡、というのも面白いです。

若松城下、砲声が聞こえる中、しずは居間の畳に膝をそろえ、相対する嫁のなかに告げた。
「母成(ぼなり)峠で甲斐なく敗れ、薩長が御城下に入るのを許してしまいました。大殿と尚三郎の生死も、分かりませぬ。しかし今や、ここがまさに戦の場。女子と言えども、この屋敷を守り、戦わなければなりませぬ」
尚三郎に嫁いでまだ半年のなかは、唇を引き締め、頷いた。
そして二人は手鏡を取り、
お互いに前に差し出して、軽く当てた。カン、と金属が当たる小さな音がした。
「何が賊軍ですか。天朝様にかしずき、京を守ってきたのは会津ですぞ。不当な誹り、決して受け入れることはできぬ」
そう言って、しずはすっと立ち上がった。

うう、戊辰の記述は、きつい……。
僕も賊軍の側だけに。

写真は、自宅の裏庭。

画像1



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?