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【江戸ことば その7】縵面(なめ)か、形(かた)

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「縵面か 形」

銭を投げ、裏表のいずれが出るかを言い当て、あるいはそれに賭けて事を決すること。
裏が縵面(なめ)、文字のある表が形(かた)。
「なめかた」とも。

(…江戸時代のコイントス)

文例・明和9年(1772年)
「闇の夜に何やらぐにゃと踏みつけ、糞か泥かわからぬ折ふし、向こうより提灯来たる、是さいわいと懐より銭を出し、提灯の側へ行き、なめなら糞だぞ」
2011年1月17日 Twitter投稿

縵面。
現代人には、「なめ」とはとても読めません。「縵」の字は、ゆったりだったり、たるんでいる、さらには「布」という意味もあるようです。いよいよ、なぜ「なめ」と読むのかわかりません。

「形」は、銭の図柄のある方の面を意味する。これはなんとなく分かります。こちらが、銭の表の面です。

表と裏という意味ならば、「なめ」「かた」は、当時は誰でも知っている言葉だったのだと思います。
古銭の特徴をまとめたサイトには、こんな写真がありました。

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確かに、文字のない「背」は、なめらか、縵面(なめ)ですね。なめらかな面というニュアンスなのかな、と思いました。

何となく、そんな気がしてきません?

村の若衆宿にたむろする若人たちは毎夜、うわさ話に余念がない。たいていは、村の女衆の品定めだ。
この夜は、おさよの話になった。腰つきがいいだの、でも気が強いだの。
では、誰が夜這いをかけるのか。儀作と茂吉が、最後まで譲らず言い争いになった。兄貴分の三左衛門は呆れて、
「仕方ねぇな、手前らは。盛りのついた犬か」と水を差し、一文銭を放り投げた。
「なめかかただ、後腐れなしに決めろ。ま、どっちが行っても、おさよに追い出されるだけだろうがな」

写真は、2007年8月撮影。
父のブログには「雨上がりの花」とありました。

7縵面か形


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