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【江戸ことば その29】帳消し

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「帳消し」

帳面の記事を墨を引いて消すこと。
転じて、かれこれ相殺すること。

(息子がぐれて家出した。どんな事件に巻き込まれるか…連座を避けるため勘当帳に登録した。数年後、息子が改心し家に戻ってきたので、帳消しにした)

文例・慶応元年(1865年)
「尽くした悪事の帳消しに、千葉の茶入れも此の如く質受けしてここにあり」
2011年2月17日 Twitter投稿

仁左衛門が代官所から戻ると、番頭の三郎兵衛は涙ぐんで出迎えた。
「お帰りなさいまし」

3年前に飛び出してた息子は、諸国放浪の末、ボロ雑巾のようになって戻ってきた。性根を入れ替え、家業に励むことを誓った。
勘当帳に書き込んだ息子の名を、仁左衛門は今日、消してきたのだ。
「文字通り、これで帳消しだ。
これからは、いなかった時の分まで、精を出してもらわねぇとな」

写真は今年4月、自宅の庭で父撮影。

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