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花鳥風月、消えていく日本の四季~レンゲ畑にヒガンバナに

 子どもの頃、レンゲ畑で寝転んでいた。田んぼの中だけど、芝生の上にいるようにレンゲが敷き詰められている。
 今はレンゲ畑がない。
 もともとはレンゲやクローバーのマメ科植物を田んぼに植えて、根にある根粒菌でチッソを作り肥料とするのが目的だった。今は全て化学肥料を利用しているので、レンゲが必要なくなった。

手に取るな やはり野に置け 蓮華草(れんげそう)

 江戸時代の滝野瓢水の句だが、野原に咲いてこそ美しいレンゲが消えていく。
 実はレンゲは中国原産で、日本には江戸時代頃に伝わったと思われる。日本古来のものではない。純日本産ではない。けれどもレンゲ畑は日本の風景の一部となっていた。
 その風景が消えていく。

 花の句といえば、

歩きつづける彼岸花咲きつづける  種田山頭火

を思い出す。
 自由律の句で、リズミカル。一面の菜の花やレンゲ畑と同じように、一面の彼岸花の景色も今は見られなくなった。
 彼岸花(ひがんばな=曼珠沙華まんじゅしゃげ)は、レンゲと同じく中国原産だが、こちらは古く、稲作が伝わった頃に日本に伝わったと言われる。(稲作だって日本古来のものではないが、棚田の風景など、日本の風景として当たり前すぎる)
 日本に伝わった彼岸花は、種ができない三倍体なので、人の手によって球根が植えられた。球根が毒を持っているので田んぼのモグラよけにし、飢饉のときには毒抜き(あく抜き)をして食糧としていた。そんな彼岸花も必要性がなくなって消えていく。


 日本原産だけでなく、外国産だが日本の風景となった植物、渡り鳥、いっぱいある。日本の風景となった。いろんな自然が消えていく。
 夜の星も見えなくなった。

 そんな自然を少しでも見ていこう。見つめ直そう。少しでも自然の魅力を伝えていきたい。


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