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【堺シュライクス】花田清志の全力~笑顔で駆け抜けた1年~

引退の理由

9月、花田清志の今季限りの引退が発表された。
20歳。今季堺シュライクスに移籍。30試合に出場していた。

引退する理由について、肘の状態を挙げていた。
「中学の時、投手やっててフォークを投げまくってたら肘を痛めまして。でも三振をたくさん取れるから調子に乗って投げ続けてたら骨が変な角度でハマっちゃったんですよ。ネズミ(遊離軟骨)もあります。今僕の右腕は曲がってこれ以上伸ばせないんですよ」

万歳をする花田。右腕は左腕に比べ曲がっている

肘に痛みも抱えながら野球を続けていたが、ついに日常生活に支障が出ると医者からも言われた。
「だましだまし長く続けるより、今年1年全力でやってやろうと思っていました」
そうして花田清志の最終章が始まった。

トレーナーの施術を受ける花田

しかし肘が曲がっていようがお構いなしだった。
「スローイングだけは負けたくないんで」とノックでも全力でボールを回していく。
「オダさん(小田原将之)!俺がレフトのレギュラー取っちゃいますよー!!!!!」
試合中、大声であえて聞こえるようにアピールする。20歳の若者は試合の動き1つ1つにオーバーリアクションを取っていった。ヒットを打てば、それが普通のシングルヒットでもベンチに向かって叫びガッツポーズを見せた。

ヒットを放ちベンチに向かって叫ぶ花田

ベンチからも、守備に就いている時にも大きな声を出し、チームを鼓舞していく。今シーズン、そんな花田の姿が何度も見ることができた。

ホーム最終戦はキヨシの日

9月24日、堺のホーム最終戦となる06BULLSとの試合では8番一塁でスタメンの機会を得た。
一打席目はショートの後ろに落ちるヒット。3打席目、4打席目はそれぞれレフトへの二塁打。当然、花田も叫ぶ。

試合は8回表に06BULLSが追いつき、9回には06BULLSが勝ち越した。
9回裏、先頭のじゅんせーが四球で出塁すると、続く田谷拓央がタイムリー二塁打で同点。花田にサヨナラ勝ちの好機で回ってきた。

「なんか今日はキヨシの日な気がするなぁ」
ベンチにいる選手が口々に話す。シーソーゲームになった試合。どうせなら花田に決めてほしい。そんな感じの空気が漂った。

しかし、花田は四球。続く小田原は三振、1死一三塁で白水大雅。
白水が打った打球はセカンド前に転がった。三塁ランナーの田谷は三塁に戻り、二塁手は一塁に転送で1アウト。しかし、ゴロになった瞬間二塁にスタートを切らないといけなかった花田は完全にスタートが遅れていた。

ベンチからの「あー!」という悲鳴にも似た声。しかしその直後、一塁手の送球が花田の肩に当たった。ボールが転々とする間に田谷がホームイン。堺がサヨナラ勝ち。結局「花田が決めた」試合になった。

花田に水をかける亀井翔太

「あのままだったら『大戦犯』だったんですけど……岡田(竜汰)さんの方向に走っていっただけでした。戻ってから『肩痛ぇ』ってなりました」と試合後に花田は振り返っていた。

笑顔が好きだ

そのあとのセレモニーで引退の挨拶をした花田。「あ、だめだ、こういう空気苦手なんだよなー……」と漏らしていたが、チームメイトに胴上げされた。

「高所恐怖症なのであんまり上げないでください」とリクエストしてからの胴上げ

「堺での1年は人生経験もたくさんできて、本当に充実していました。」

この1年、花田を見て思ったことがあった。
練習、そして試合には当然だが真剣に取り組む。引退を決めた後も練習に手を抜く様子はなく「いつも通り一生懸命」だった。先輩たちに煽りながらかける声にずいぶん笑わせてもらった。ほかの選手のインタビュー中に割って入ってくることも多かった。その場にいるだけで空気をいい方向に変えることができる「才能」を花田は持っていた。

バトスタデーで「甲子園特集の雑誌の表紙みたいにお願いします」と言われて撮影したもの。
右は後藤真希投手

今後は就職する予定とのこと。
「笑顔が好きなんです。誰かに喜んでもらえる、コミュニケーションを人と取れる仕事をしたいです」

大西宏明監督も「野球が好きで、一生懸命で、次のステージでも輝けると思います。できればうちの店(笑ぎゅう)に来てほしい」とラブコールを送っていた。

その一生懸命さがあればきっとどんな世界でも輝くことができるはず。
花田の次の舞台での活躍を祈りたい。

(文・写真 SAZZY)

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