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少数株主としての戦い(提訴請求~裁判まで)⑭

1.前回のサマリ

みなさま、こんにちは。前回、「少数株主としての戦い(再戦、株主代表訴訟)⑬」で、相手が裁判所のアドバイスを無視し、徹底抗戦してきたので、弁護士から株主代表訴訟を提訴することを提案されました。直接的に株主への損害が回復されるわけではないため、少数株主が提訴する意義、メリットを考察しました。では、実際どうやって訴訟を提起するのかについて、具体的な経験を元に説明してきます。

2.提訴請求

少数株主はいきなり株主訴訟を裁判所へ提訴することはできません。まず、会社へ役員を訴えるよう通知を内容証明郵便で行います。内容は裁判所へ提出する訴状と同じものです。会社は請求日から60日以内に訴えないときは、その理由を株主へ書面で通知します。提訴しない旨通知があれば、ようやく訴状を裁判所へ提出することができるのです。当然、内容証明郵便は一つの証拠となり、提出します。
当然、代表取締役が1人しかいない会社ですと、提訴しないと回答が来るのは当然で、それを前提に速やかに裁判へ移行できるよう準備しておくことをお勧めします。

3.訴状提出と裁判スタート

裁判所への訴状を提出しますが、それは弁護士が行うことで
依頼人は特にすることはございませんでした。唯一確認することは、

・訴状の相手(住所等)は会社ではなく、個人の取締役であるか
・会社の弁護士が、役員の弁護士になってないか

などくらいで、あとは事務的に進んでいきます。

①訴状受理と送達

まず、訴状を提出し受理されれば、被告へ訴状が裁判所から郵送されます。いわゆる特別送達して切手がたくさん貼られた郵送物が送付されるのです。一般的な民事訴訟と全く変わりません。

②口頭弁論期日の指定・呼び出し

送達後、原告・被告へ呼び出しがかかります。原告が出廷するのが一般的で訴状に間違いないことを述べます。
一方、被告は勝手に期日が指定されるため都合悪いことも多く、書面で主張を提出し欠席することが多いようです。

③続行期日

以降は、書面での主張と証拠提出を行い、それを法廷で確認し、裁判所からの質問事項や補足などがあれば、宿題として次の期日までの書面で提出する流れとなり、弁護士が参加し、その報告を依頼者に行う流れとなります。私たちは1か月半くらいの間隔で法廷が開かれており、すべてWebで完結しました。

4.裁判の論点

私たちは、代表取締役X氏が違法行為を通じて会社の議決権を取得し、その違法行為を通じて、また、開催していない株主総会議事録偽造を行い、会社財産を不当に費消したとして、その損害賠償を請求するものです。ざっというと下記の理由での提訴です。

・利益相反行為:定款、会社法の手続きを無視し、代表Xが自身の土地を会社に利益を付けて売却し、その利益をもとに他株主から株を取得し、会社を取締役に居座り財産を費消させたこと。

・株主総会を開催したことを装い(株主総会議事録偽造、総会委任状偽造の疑い)、役員報酬を得ていたこと
土地取引が大きな論点であり、相手は善意であることを主張し、その反論の繰り返しでした。

<主張の応酬>
・代表X氏自身が1,500万円で購入した土地を2,700万円で会社に無断で売却し、その利益で、定款、株主総会の決議を無視し、他株主から株を取得した。そして、会社を支配することで財産を1億円近く費消し、引き続きそれを継続する意思を示している。
・相手は、商品の大量輸送で土地隣接する土地(駐車場)が必要であったと主張し売却価格も時価で評価したと主張。
会社が代表取締役X氏から土地を購入後に売り上げが右肩下がりに落ち込んでいることやその土地を購入後に駐車場として外部へ賃貸していたことからその主張に合理性がない点を指摘。
・また、平成27年度の株主総会は開催されていない(そもそもほとんど開催されていない)こと点について指摘。(相手は株主総会議事録、委任状写しを提示)
・裁判外交渉時には、代表X氏は、その時期は株主でないことを主張、その年は母が株を相続した時期であり、株主名簿の掲載されていない点からして、議事録・委任状共に偽造である点を指摘。
・他株主や関係者の陳述書でその事実を援用。

といった形で、主張・反論の応酬がなされ論点が上記のところまで絞られていきました。主張の応酬だけではなかなか裁判所もこちら側に動いてくれません。調査している中で、まだ、相手の矛盾点を発見しましたが、それを確認すべく動くことにしました。



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