管理型保守企業で思い当たる『モルトケの法則』

プロイセン(旧ドイツ)のビスマルク時代に、参謀として活躍した軍人であり、組織(軍)をまとめる際の人材配置(適材適所)として、モルトケの法則というものを提唱した。
モルトケの法則とは、「やる気」軸と「能力」軸を作り、やる気○✖️、能力○✖️で4つのタイプに分け、どのような人材が最も組織の中間管理職として有能かを述べている。

モルトケは、下記の優先順位で人材配置をすると良いとした。

1 やる気✖️ 能力○
2 やる気✖️ 能力✖️
3 やる気○ 能力○
4 やる気○ 能力✖️

意外なのは、やる気も能力も高い者が3番目だということである。
理由としては、やる気もあり、能力もある者は、
自分の意志もあり、臨機応変に対応できる自信や能力もあるため、
全体の戦略や戦術において、独断専行の行動に出る可能性があり、管理がしにくい。

その点、1、2番目のやる気のない人材は、自分の意志が無いために、こだわりもなく、指示に従いやすい。そして能力が高い場合は、非常に扱いやすく、任務遂行力がとても高い。
やる気も能力も低い人材は、使えなそうに見えるが、しっかりとマニュアル化したり、教育を行えば、意思がない分、言うことを聞くので伸び代がある。

一番タチが悪いのは、やる気はあるが、能力がない人である。
なぜなら、やる気があり、変に自分の意志を通そうとするので、指示を飲み込めず、そして能力も低いため、任務遂行確率が低くなる。

このような理由から、軍のような、統率が取れていることで勝率が大きく上がるような集団は、一般的な直感とは違う適材適所が存在するということである。

このような法則は、大企業の中でも非常に思い当たる。

コミュニケーション力(忖度能力)は高いが、意志(やる気)がない者ほど、
部長、執行役員のようなポジションにいる。
なぜなら、社長や副社長クラスの人の指示をイエスマンとして確実に遂行してきたことにより、評価されているからである。能力がなかったとしても、日本の大企業は、そのような者を切り捨てず、教育を長い期間をかけて行うので、決まった仕事はできるようになるからこそ、課長、部長クラスまでは昇進することができる。

また、特に、やる気もあって能力もある者は、このような評価、管理体制に違和感を持ち、自己主張をしていくが、常に組織の中では少数派であり、自分の意見は通りにくい。
上の指示が聞けない、自分の意見も通らない、ただやる気と能力があるとなるとどうなるかといえば、外に出る(退職する)、という流れになる。

なので、軍のように、市場経済による競争や新陳代謝を必要としない軍のような組織では、モルトケの法則は有効なのかもしれないが、新たな事業を生み出し、変化し続けていくことが求められる企業においては、モルトケの法則を適用すると、優秀な人材ほど消えていくことなる。
もちろん、組織のトップが優秀であり続け、適切な指示を組織全体に出し続けることができるのであれば、有効な法則なのかもしれないが、組織が大きくなればなるほど、指示の精度は低下することを避けることはできずに衰退していくことになるだろう。

つまり、高度経済成長期の企業にとっては、モルトケの法則通りの人材配置でも、勝手に成長することができたが、現代の企業に求められるのは、やる気と能力のどちらもある人材をいかに自由に活動させられるかである。

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