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2億年の神秘 大歩危峡はなぜ美しいのか

「大歩危峡を流れる川はなぜエメラルドグリーンなのか」「大歩危峡の森はなぜ美しい紅葉が残るのか」。今回は、動く大地が生み出した神秘に迫ります!

観光遊覧船からみる大歩危峡

大歩危・小歩危って知ってる?

四国に流れる吉野川の中流に8kmほどの峡谷、大歩危峡・小歩危峡がある。千と千尋の神隠しに登場するハクの龍の姿のように、美しく深い谷間を流れている。ゴツゴツした岩肌は、「大股で歩いたら危ないよ」「小股で歩いても危ないよ」。そのような可愛らしい語源で大歩危(おおぼけ)・小歩危(こぼけ)と呼ばれるようになったという。

神秘の川 と 美しい紅葉

ゴツゴツした岩肌を観察すると、特徴的な筋がある。「エメラルドグリーンの川」「大歩危峡を彩る山々」の美しさの秘密は地質深く関わっており、「岩石」にそのヒントが隠されている。さっそくみていこう!

引用:阿波ナビ 大歩危峡の紅葉

大歩危峡の"川"はなぜ美しいのか

エメラルドグリーンの正体

エメラルドグリーンの水が流れていていると思われる方も少なくないよう。美しい色の正体は、川底に沈む緑色の石である。

エメラルドグリーンの川

四国を横断する三波川帯という地質帯。この地質には2割程度、緑質片岩という緑色の片岩が含まれている。太陽の光は海底の緑質片岩に反射して、美しいエメラルドグリーンを浮かび上がらせているのだ。

三波川帯(引用:山口大学地球科学標本室 ゴンドワナ資料室)

ここからは、大歩危の岩石がいかに壮大な冒険をしてきたのか。そして岩石からわかる美しい紅葉スポットを紹介します!

層状の模様をもつ岩

2億年前の話。赤道近くにあった島がアジア大陸にぶつかり、一部は、大陸の下に深く沈み込み、一部は、大陸との狭間で横からの強い圧力をかけられた。地層は湾曲し、峡谷をつくる。地層もまたミルフィーユ状の波打つ岩が生まれた。

大歩危 背斜構造の岩肌
奥祖谷の道中に露出した岩壁

高い圧力をかけられると砂岩は砂質片岩に、泥岩は泥質片岩に、礫岩は礫質片岩になる。岩石の名前はわからない…という方。安心してください。今日は、硬い「砂質片岩」柔らかい「泥質片岩」だけ覚えててください。

ボロボロと剥がれ落ちる泥質片岩

大歩危峡の"山"はなぜ美しいのか

祖谷川の紅葉

美しい紅葉が見れる場所

大歩危峡に「国見山」という1400mの山がある。この周囲の河岸では美しい紅葉が見える。なぜか。国見山は砂質片岩でできた山だからである。どういうことか。

砂質片岩(道の駅大歩危 石の博物館)

戦後、林業が儲かると知り、綺麗な紅葉の見れる山は次々にスギやヒノキの山へと移り変わった。では、なぜ大歩危峡には美しい紅葉が残るのか。

ズバリ、その地質にある。砂質片岩は硬く、切り立った岩壁は、剥がれても剥がれても常に断崖絶壁である。人々が近寄ることができないのだ。

祖谷川沿いの断崖絶壁

柔らかく脆い泥質片岩は、周期的に土砂が崩れ、緩やかになった斜面地に人は住みつく。泥質片岩の土地には植林ができるが、砂質片岩の土地にはそもそも植林が困難である。砂質片岩の土地は戦後の林業から、自然の地形で守ってきたのだ。

泥質片岩(道の駅大歩危 石の博物館)

泥質片岩が多く含まれる地質には、所狭しとスギやヒノキが植えられている。裏を返せば、山を遠くから見て、どこが砂質片岩でどこが泥質片岩かわかるのだ。

「龍宮崖」や「ひの字峡谷」など祖谷川沿いは美しい紅葉が見える名スポット!

まとめ

大歩危峡の神秘的な風景に日本列島ができるはるか前、2億年前からゆっくりと動き続ける地質が大きく関わっていた。緑質片岩が露出する大歩危では川底の緑色の石が反射し、幻想的なエメラルドグリーンに染め上げていた

色付きはじめの大歩危峡

人を寄せ付けない切り立った崖が森林を守り、大歩危峡をはじめ、祖谷川沿いでは今このシーズン美しい紅葉を見ることができるのだ。

今もなお大地はゆっくりと動いている。数億年の地球の歴史に触れられる場所が、ここ大歩危にはある。そして今が一番見頃の時期。ぜひ秋の旅行に大歩危峡はいかがでしょうか!


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