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10年10万kmストーリー 第13回 スバル・レオーネ ツーリングワゴン 1.8 4WD(1983年型)32年16万km「雪道でチェーンを巻いたことは一度もありませんし、スタックしたこともありません。動けなくなったクルマを救い出したことは何度もありますよ」




 スキーに夢中になっていた頃は、往復の移動時間をいかに少なくするか苦心していた。一本でも多く滑るためには、それしか術がないからだ。都心に住んで、休日に雪山に向かうわけだから、早朝や深夜にクルマを走らせて、1分でも長くゲレンデに居る時間を絞り出したい。
 以前は、現在ほど高速道路網も完備されていなかったから、途中で一般道に降りて、延々と走り続けなければならなかった。早朝や深夜だと除雪作業も行き届いていないから、どこか途中でチェーンを巻いて走る必要が生じる。現在のような高性能なスタッドレスタイヤが普及する直前の話だ。
 脱着作業は慣れてくれば素早く行えるようになるが、装着して走ると平均速度はガタンと落ちる。
 積雪路でもチェーンを巻かずに走れるのは、4輪駆動車かスパイクタイヤを装着するしかない。SUVという言葉が生まれる前だったから、4輪駆動車なんてヘビーデューティなランクルやサファリしかなかった。
 ただ、一つだけ解決策があった。スバル・レオーネだ。当時、レオーネは、世界で唯一の乗用車タイプの4輪駆動車だった。
 赤いレオーネ・エステートバンを持っている知り合いに頼み込んで運転させてもらった時の驚きは今でも良く憶えている。
 レオーネ以外のクルマは、駆動輪ではないタイヤが雪の上をフラフラしているのに対して、レオーネはすべてのタイヤがガチッと前だけ向かって走っている安定感があった。雪の上なのに、レールの上を走っているかのようだった。
 その違いは決定的なもので、誰が運転しても即座に感じる類のものだった。加減速に不安がない上に、ハンドルを切っても舗装路と同じように効いた。路肩をソロソロ行くチェーンを巻いたクルマを次々と追い越していった。レオーネの4輪駆動は雪道で無敵だった。

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