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旦那様はサンタクロース(4)

 今日は12月22日、火曜日。
 明日は天皇誕生日でクリスマスイブイブ。

 多分今年のクリスマスは今夜盛り上がっている人が多いのだろう。忘年会とかも含めて。…私はと言えば残業になってしまった。明日は休みたいし。

 彼はここ一週間ばかり家に帰ってきていない。日本サンタクロース協会の関東エリア南支部の詰め所に泊まり込み中だ。

(はぁ…もう8時か。片付けて帰るか)

 帰り支度をしていると、隣の部署の2年後輩の並木君が声をかけてきた。

「二倉(にくら)さん、今帰りですか?」

「え?…ええ。並木君も今上がりですか?お疲れ様です。」

「これから飯でもどうですか?」

「え、でも…」

「あ、二倉さんは新婚さんでしたね。失礼しました。早く帰って旦那さんと晩ご飯だ。お疲れッした!」

 体育会系の並木君は元気よく挨拶すると、さっさと帰ってしまった。

(まぁ、それでいいんだけど)

(でもこれから帰ってご飯の支度して食べるってちょっと面倒だな…ん~、たまにはいいか。)

 1人で外食なんて、結婚してからは一度もしてなかったので、ちょっと久し振りだけど、なんだか無性にラーメンが食べたくなって、昔行きつけていたラーメン屋に私は1人向かった。

 久し振りに行ってみたら、そこにラーメン屋は無かった…。代わりにお洒落なバーができていた。

(嘘ぉ…。お腹すいたよ…。)

 もう9時になってしまう…。どうしようかと逡巡していたら、お客さんの出入りでバーのドアが開いて中がチラッと見えた。マスターはなんと、ラーメン屋の元店主だった。

(えっ、なんで?まぁいっか、飲んで帰ろう。)

 マスターにクラブハウスサンドを作ってもらい、カウンターで1人で飲んでいると、知らない男が声をかけてきた。普段なら話しかけられても無視するのだけれど、少し酔っていたのかもしれない。

「おひとりですか?」
 年の頃は40前後…といったところだろうか。身長は大きい感じで、170cm後半か180cm位か。スラッとしたイケメンだ。

「…ええ。」

「お隣いいですか?」

「どうぞ。」

「ご結婚されてるんですね。」
男は私の左手の薬指の指輪を不躾に指差してそう言った。

「あ、ええ、はい。」

「でもこんな時間にこんな場所でおひとりで飲んでいる。」

「ええ、今日は夫が仕事で帰らないので、私も楽して外で済ませているんです。何かおかしいですか?」

「いいえ。ずいぶんお若く見えるので、少し不似合いだな…と思って。」そう言って男はクスクス笑った。

「童顔なんで、中学生位にしか見られませんが、これでも27歳です。別に誰にも咎められるようなことはしてませんよ。」酔って個人情報を漏らす私…。あちゃー。

「ふうん。27歳なんだ。若いね…。」
そう言ってそのイケメンのオッサンが近づいてきたので、私は慌てて席を立った。

「マスター、お代これで!」
 店を出ると4センチヒールで駅まで走っていた。

 駅前はクリスマスイルミネーションがキラキラと輝いて祝日前の賑わいを見せている。

(はぁ、もう何やってるんだろう、私。)

 酔った頭で矢野顕子の「ラーメンたべたい」を思い出しながら家路についた。

 男もつらいけど 女もつらいのよ
 友達になれたらいいのにね
 くたびれる毎日 話がしたいから
 思いきり大きな字の手紙 読んでね

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(5)へ続きます。
※ただしまた明日以降です。本日はここまで。もうしばらくおつきあい下さいね(*^^*)

旦那様はサンタクロース(5)
kanekyo12|note(ノート)

ありがとうございますサポートくださると喜んで次の作品を頑張ります!多分。