陽キャクライマー集団がやばい

陽キャって言うかパリピみたいな感じなんですけど、なんでこんな人たちがジムにいて集団でマットの上に陣取ってるんですかね。

金曜の夜、郊外のジム、こんなとこにいるはずもないのに、願いがもしも叶うなら今すぐ渋谷のクラブへ、できることはもう何もない、せめて避けてよオブザベさせてよ。

もうオブザベとかそういう次元ではない。無理矢理にでも入り込まなければ一生順番が回ってこない可能性すらある。一見空いているから許されるとでも思っているのであろうか。

要領の良いクライマーは「いいっすか」みたいな感じで、陽キャ側も「どうぞどうぞ!」って和かにやりとりをしているけれども、言うまでもなくインターネットクソ雑魚ナメクジには無理なのである。

完全に世界が形成されている。マットの上で「一番行きます!」の掛け声でようやく課題に取り付くかと思いきや「と見せかけて行かな~い!」一拍置いて「からのやっぱり行く~!」で、爆笑を誘う陽キャ1号。その流れを汲んで同じことを繰り返し再び笑いを得る2号。あえて何もしないことでツッコミと笑いを享受するV3。

Oh・・・完全に領域展開してる。あの空間に入ったら何か一芸を披露してから登る羽目になりかねない。

なるほど。陽キャはそのテンションが一定のラインに達すると衣服を脱ぎ捨てて高いところへ登り始めると言う。

その様子を写真や動画に収めておいて、将来的には結婚式のプロフィールムービーで流し「あの頃は馬鹿やってたよな」なんて思い出に浸るのである。勿論流れるのはGReeeeNの「キセキ」である。絢香の「にじいろ」でもいい。

なればこそ、ここで私が披露する芸は一つ。

高次元に接続し意識を宇宙へと飛ばして自身の存在を矮小化しパリピになりきって、まずは一歩を踏み出すのである。そこはマットの上だ。陽キャたちはそれに気がつき、私へと視線を向けるだろう。そこですかさず咆哮する。

いええええええぇぇぇぇぇい!!!

その魂の籠った咆哮に陽キャ達は共鳴を示し、同じく声を上げるだろう。一気にボルテージは引き上がる。頃合いを見て彼らに先んじて衣服をかなぐり捨てれば、なんの疑いもなく追従するに違いない。マットの上に全裸の陽キャが大集合だ。もはや私たちはこの世の理の外側にいると言ってよい。

各々が目の前にあるホールドを掴み上を目指す。課題に囚われず好きに登って構わない。そして最上部に達した時、私たちの存在は遥か高みへと到達する。そこはどんなクライマーであろうと至ったことのない終了点だ。

やった。私たちはついにやったのだ。歓喜の声が上がる。と、同時にジムのスピーカーから流れるあいみょんの「ハルノヒ」。

・・・いつからだ。

それは陽キャとの圧倒的な力の差が見せた幻。このジムに足を踏み入れたその瞬間から私の脳は既に支配されていたのだ。

陽キャたちは相変わらずマットの上で騒ぎ、私はそれを遠くから眺めている。これは紛れもなく現実だ。背筋に冷たいものが走る。もうダメだ。耐えれそうにない。

うるさすぎて一時間で帰った。

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