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往く年2021年、食らった寿司の数々を。今行くべき寿司屋はどこなのか。

  結局去年は一歩も国外に出られませんでしたから。相変わらず寿司ばかり食い散らかした一年でした。ここ数年寿司を食い過ぎて、正直もう決まったお店何箇所か目星つけてローテーション組んでしまえばそれで良いかなと思えるぐらいに悟ってしまった2021年。コネ無し一見お断りを除いて都内で未踏峰といえば、元日早々半年後の予約をとらせる天本や体内のアルコールが一気に蒸発するほど高いきよ田系列とか、まぁ今更庶民のわいが論評するまでもないやろってところばかり。
  あとは地方か?って感じもするが、今年はもう飛行機の修行はやらないのでせいぜい札幌、金沢、福岡で用事ついでにつまむ程度ですかね。どっちにしてもわざわざ寿司の為だけに出向くような真似はもう無いかもしれない。
 そんな中でこれは皆も行くべきだなってお店、今回も何件かお伝えします。情報過多なご時世、今やちょっと調べれば分かるようで、意外とその渦動にのまれてしまっている我々がいます。その一助になれば、ただあまり知られ過ぎてしまうとこっちも困りますけど笑

きのした(西麻布)
  きのしたは自分の中でも思い出の店だったり。寿司の食い歩きを始めた最初期に訪れた店のひとつで、当初はこの店をある種の基準点として良し悪し判断していたのでした。ここは元々別の方が握りをやっていて、つまみ担当と握り担当の分業色が強い店だった記憶。正直握りに関してはあまり印象的ではなかったのですが、ここで食べた太刀魚の焼物、その後色んなお店を渡り歩いてもこれを超えるものは出てこなかったんですね。
  そりゃ当たり前で、ここの現大将(店長)は数々の和食の名店を歩んできた後によしたけ入店、更に出向という形でこの店のつまみを作っていらっしゃったので、小僧が裏で焼いているその辺の焼き魚とは訳が違うんですよ。
  客の目の前で堂々と魚を焼くお寿司屋さんは案外少なく、大半は裏で焼いたものが客に提供されるケースが多い。確かに江戸前の仕事としてはゲソや平貝を炙る、握った海老の頭をこんがり焼いたり、最近ではわりとポピュラーになりつつある大トロやノドグロみたいな脂の強いネタに炭火をあてるなんてのは「演出」としては結構見られますけど。
  しかし焼物の仕事というのは料亭の懐石みたいなより本格的な日本食の領域であって、その焼き方も店のクオリティを示す重要なポジションのひとつ。本来寿司を握る大将と同様に技量が試される分野でありますが、調理よりもまずは素材のパワーを信じるお寿司屋さんでは元々軽んじられていた分野なのかもしれませんね。
  しかしながら近年は寿司バブルの影響か、ガッツリと和食のエッセンスを持ち合わせた寿司職人というのが多く出現しており、この流れはおそらく今後も続いて行くのではと思います。そりゃそうですよ、カウンター割烹よりも確実に単価取れるのが今の寿司ですからね。職業欄にSUSHI-Chefと書くだけで就労ビザが落ちてくるとまで言われるほどの世界的技術職になっていますから。 
 金が集まるところに人や技術が寄るのは当然の摂理。今後はさらに和食店で長く修業された方が参入してくるのは目に見えているので、時代は古典的な江戸前寿司のつまみ+握り、懐石コースからの〆握り、ではなく和食料理を出せる寿司屋です。これ、試験に出ますよ。
  話はズレましたが、現きのしたの大将は和食の土台がきっちりとしている上に寿司よしたけのエッセンスを持ち合わせている方。出来るに決まっているのです。今回久々に訪れてこの店の持つポテンシャルを体感しました。
  また私のような若輩にも大変気配りいただき恐縮の限り。高級寿司屋の最終的な優劣は大将で決まると思っているクチなので、この方の人柄は特筆すべき点があると思います。
  料理が和食寄りですから、四季を味わえるのも良いですね。お寿司屋さんだと出てくるお魚のラインナップがそのままダイレクトに季節感を示すので。この日はつまみからしてフルに秋を感じさせられるメニューでしたが、是非とも他の季節でも味わってみたいなと感じさせられた一日でした。

いくらとウニが合体。ジャブ一発目で食らわせられる。
ノドグロだが栗のリゾットをイメージした感じ。美味。
鰹カツもこの卵黄酒盗ソースだけで酒が呑めてしまう。
土瓶蒸し。もうこの出で立ちだけで大勝利でしょ。
丁寧に焼かれた鰻、皆で大将が焼くのを眺める笑
よしたけ名物のアレ
このシャリ混ぜがたまらん
キスの握りは美しい
鰤。西国っぽい組み合わせ。
自分は重ねてあるマグロも好きです。

一二郎(泉大津)
 大阪の方がこれを見たら激昂するかもしれんけど、ぶっちゃけ町中の寿司屋は大したことないんすよ。北新地古来の有名店や、やま幸のマグロを神のように崇める的な店がありますけど、そんなものは東京でも普通に食えるのでわざわざ新幹線に乗り数重ねて出向く理由が関東人にはないんですね。
 関西で寿司屋が良くないと言われる理由がやれ押し寿司・箱寿司文化だの、シャリが甘いからダメだの巷で言われいるわけですが、個人的にはいまいちピンと来ません。というか今の江戸前寿司って、もはや何を以て江戸前なのか分からない状態ですから、単純に回らない寿司を食う層のボリュームや回転の問題だと思いますけどね。和食は関西が圧倒しているわけですし。
 我々寿司ならば何でも慾る系の人間と、寿司は良く分からないけど産地の寿司屋さんなら鮮度が良くて美味しいと勘違いしている連中との共通認識は、ズバリ「安い」という点です。北から南までちょっとした繁華街に行けばその土地で愛されている安くて美味い寿司屋さん、おそらく日本中にあると思うんですが、産地の寿司屋=鮮度があり美味いは絶対的な間違いなので気をつけてください。正確に表現するなれば、多少の粗をスルーできるほど値段が圧倒的に安い。品質がトップという話ではないのです。
 なぜこの話をしたのかと言うと、大阪だってコスパで見れば地元に愛されている素敵なお店が数多く存在していて、そのうちの一つが今回たまたま旅行で訪れた一二郎という話でした。
 泉大津という土地は正直住んだことはないので具体的生活感の中身までは分からないのですが、だんじりで有名な岸和田の隣。港があり、昔から繊維業盛んとのことで西の下町とも言うべき地域でしょうか。関東でもこの手の中小企業者がいるエリアは地元客相手の良い店が多いので、そこで愛されているお寿司屋さん、美味しくない訳がないのですね。
 一二郎の魅力は何と言っても圧倒的なコストパフォーマンス。結構呑んでお会計がだいたい14,000円ぐらいだったのでおそらく料理は余裕で1万円切るレベルなのですが、それでも洗練かつ満足度の高いラインナップ。これは凄い、都内じゃまず無理。下丸子の波づきみたいに究極までロスを無くしサービスのグレードを落としてようやく実現できる価格と品質の料理が普通に出てくる。
 というか私達の方がむしろ今のスタンダードと言われている「おまかせ」に毒されて過ぎてしまっているのかもしれません。高級酒・食材を並べただけで5万近く請求してくる寿司屋の言いなりになってはいけない。世間と剥離しすぎない為にもやはりコスパ感は全てにおいて重要
 金沢や福岡もそうですが、マグロやウニにさえ拘らなければ良いお寿司というのは普通に巡り合えるわけでありまして、それが地場のお客さん相手の街寿司みたく好きなように切った張ったで食わせる店がやはり攻守最強だと思うんですよね。
 大阪は特に食べ物の値付けに対してはシビアな土地柄ですから、バキバキの高級志向よりもこれらの価格帯の店がより洗練されているのは明らかです。
 一二郎はそんな大阪の下町でしっかりと地元に根付いた良いお寿司です。私なら下手に新地で火傷する前にまずはこちらをおすすめしますよ。

いきなり謎の器にメジマグロが載ってくる。
最近こういう洋っぽいのが増えたね。玉ねぎおいしい。
ここでふぐの白子丼は豪気。
つまみで色々出してもらえる。
ジュンサイにハモという関西らしい椀。
ちゃんと焼物もあるよ。
しっかりとした江戸前仕事のコハダ
ハマグリも江戸前
思わず見惚れてしまう立ち姿
海苔で巻いてあります。
トロタク手巻きに海ぶどうは新食感。
脚が出ているアラ汁って久々だわ。


閑 話
 今更感はあるのですが、今年初めて訪れた店、印象に残った有名店をいくつか挙げてみたいと思います。行くべき店にはピックアップせず若干グチっぽくはなっていますが、基本どれも凄いお店ですので訪れて損はないです。

・島津(白金高輪)
 どこかの大将があのネクタイ締めた料亭板前スタイルを滅茶苦茶バカにしまくっていたせいで、板場を見る度に思い出し笑いをしてしまう呪いにかかった。そこは置いて、見た目若くもしっかりしている印象があったことから、あれはあれで衣装含めそういうイメージ戦略なのかもしれない。トイレがとてつもなく綺麗な空間で、おそらく店作りから身の回りの感じまで全て奥様が仕切ってやっているのだろうね、男の発想じゃないよ。店のコンセプトが修行元のりんだ、らんまるとは明らかに毛並みが違う。コロナ真っ只中の年明け一発目で行ったので、まだまだ新店特有のサービス期間だったかもしれないが、この価格帯で良いものがバンバン出てきて強気だなと感じた。
 今後はさらに予約が取れなくなり、値段も上がるだろうなと思っていた矢先にOMAKASEで1人予約不可になってしまった。早くも縁が切れる泣。 

・さわ田(銀座)
 銀座の有名店といえばここ。実際にこの日のマグロは本当凄かった。ただ今は一回転5席限定ですし、酢飯の感じも含めラインナップは一世代前の江戸前かなって感じの料理が出てきます。若干時代に取り残されている感は否めないのですが、あと10年ぐらいすればすきやばし次郎(当然親父の方)みたいなポジションになるのかもしれない。大将は意外とひょうきんでかわいかった。でも普段使いはちょっと無理かな。写真は撮れないし、周りの客との緊張感がありすぎるので、次行くときはもう少し自分が大人になる必要があるのかもしれない。清水に魚棲まず的な。

・きざ㐂(赤坂見附)
 大将が客とバトることで有名な店。単に写真や動画を撮って飯食うだけの一見には死ぬほど冷たい。だけど創造力があり、しっかりと確実な仕事と、本当に良い寿司を食いたい客に対しては誠心誠意を尽くしてくれる男気ある方。大将若いんですが、昔の江戸っ子気質な寿司職人を体現しており、波長が合えば絶対に楽しい時間を共有できる店。何回も通ってしまっているあたりやっぱ自分はドMなのかもしれない。わい体育会系じゃないのに。ちなみに奥様は超素敵な方です。

・なか條(関内)
 これもネット上ではあまり評判の良い店ではない。ただ前項の木崎大将から話を聞く分には普通に会話が通じる良い人っぽいので行ってみた。
 なるほどと思ったのだが、ここは呑み屋のお姉ちゃんと同伴ビフォーアフターやる類の店じゃないですね。そもそも出している寿司のクオリティが高すぎなんですよ。本当にピン物を入れているのは間違いない。これは付いて来れないお客さん結構いるだろうな。銀座や麻布だって本当に良い物を出していても分からない人が多い(主に食っている最中他のことに夢中になっているせい)のに、関内でお姉ちゃん相手にウンチク垂れたところで裏で文句言われるのは仕方ないんじゃないかな・・・。やま幸社長を舎弟扱いして笑いを取るとか完全に上級者向きでしょw
 私?大歓迎ですよ。〆鯖でキマったなんて人生初めての経験なんですから。
美味しんぼの京極はんみたく泣きながら食ってました。ここは寿司好きなら絶対に行って後悔はしない店です。

・さかい&我逢人(中州川端)
 青山の名店・海味、今は亡き長野親方の弟子。笑えないレベルで予約が取れない東麻布天本と、世代的に黄金期から外れていてぶっちゃけ大したことのない龍次郎を除けば、この堺大将が長野親方のメインストリーム。
 事実このさかいを初めて訪れた時は衝撃だった。ミシュラン3つ星に相応しく、全てにおいて完璧な料理が提供される。大将の人柄、サービス、品質。トータルで見たなら恐らくこれを超える寿司屋は福岡に存在しないと思う。しかし年々値上げをして東京と変わらない価格帯、コロナが明けてさらに予約困難になった後、果たしてわざわざ飛行機乗ってこれを食いにくる来る価値はあるのか。お大尽でもない私にとっては用事と抱き合わせてギリギリ使えるかという価格帯なので、むしろ都内の寿司に憧れを持つ九州の方に、東京出なくても良い所あるよと薦める類の店な気もする。我々余所者ばかりが枠を埋めてしまうのは少々気が引ける。 
 値段と使いやすさでみればさかいの弟子が回している我逢人がおすすめ。一時期はさかいと同じ仕入れの寿司を数日前予約で簡単かつお値引き価格で食えてしまう素晴らしい場所だったが、さすがに最近はバレてしまったので週末の直前予約は厳しくなった。それでも2階の本店と比較すれば3階なのにぐっと敷居が下がる。
 著名美食アカウントのタケマシュランが、この我逢人でダメすぎる水商売女と同席してしまったが故に色々と酷評していたが、少なくとも私はそんな下賤の者とこの店で同席したことは一度もないので、むしろ彼の引きが単純にないだけやろと言いたい。つーかあれだけ色んなところで経費飯やってりゃ一度や二度は外れ回も引くわな。事前に客層を電話確認した方がいいのでは笑。
 それにしても去年は色々燃えていましたね。あっちの件(知らない人は検索)に関しては同情します。ではそろそろ本題に戻ります。

ブルペン(荏原中延)
 そのタケマシュランも絶賛の立ち食い寿司。本年一番の衝撃は当店。これで座ったら意味ねえだろ笑というツッコミは置いておいて(※なお自分は同氏を大変尊敬しています。特にフレンチやワインに関する教養記事は勉強させていただきました。)、ふざけた店名と外観、食事後半からチャンテが流れるという謎のコンセプトからは到底想像できない圧倒的な美味さ。これを酒込み1万円レベルで食えるのはまさに奇跡。有名店の仕入れパワーで本気の立ち食い寿司を目指すとここまで違うのか。ブルペンとは名ばかりで変化球、反則球のオンパレード。これじゃ野球じゃなくてスペースコブラのラグボールだよ。ゲームチェンジャーすぎて笑える。
 大将の佐々木男駆もしっかりした方で、この辺は会話をしていて同門の先輩・島津千周と通じるところがあった。何が通じるって、若いけど自分を持った職人って話です。おそらく会社の教育方針で自主性、独立性を重んじているんでしょうね、あくまでも想像ですけど。
 最近は労働環境改善の絡みもあって、比較的小規模な有名店でも分業制を敷いているところが増えていると思いますけど、あれをやると独立する妨げにもなりますし、何より店側の都合の良いように単純労働力として使われてしまうので若い子のモチベーション低下にも繋がる恐れがあると感じます。 
 まぁ一概に日本料理特有の徒弟制度が良いとも思えませんし、基本的な調理技術や業界文化も知らずに動画だけ見せて寿司を握らすようなアホなコンサルは論外ですが、業界としては若くともチャレンジできる環境というのはいつまでもあって欲しいものですね。それこそが最大のインセンティブ。
 予約方法は先着整理券方式やら鳴っても出ない電話やら、一時期迷走していましたが、現在はインスタのDMで予約を受けつけています。大将も時より言っていたが、究極形は予約客オンリーだけではなく、当日飛び込みでも気軽に食べられる店にしたいとの事だったので、この辺の思想も個人的には全面同意。全力で食べて応援をしてあげたい店。ショートストップすごい。

パッと見では何の店か全く分からない。
プレイボール!
1合瓶やワンカップが置いているが一升瓶もあるよ。
やま幸の三厩180キロ台が食える立ち食いとは・・・。
カワハギの肝添え旨すぎ
別の握り方でおかわり
多分ノドグロの炙り(酒入ってよく覚えてない)
エビウニとは何とも映えるが、残念ながらピンボケ。
軍艦ではなく手巻きでいくら
この日の「隠し玉」炙りカマは口の中でとろける

 ブルペンは現在、昼と夜3部ずつの計6部制の営業になっているが、夜の最終回は実質的に延長戦突入状態なので2時間コース。追加をしながらゆっくり呑み食いしたい方におすすめだが、早速知れ渡っているので真っ先に枠が埋まる。ただ最終回が絶対的に良いとも限らず、隠し玉や通常コースには含まれない希少ネタが早い回で使われているっぽいので、日時に縛られず訪問できる方はいろんな回にチャレンジしてみるのも面白いかもしれない。
 平日の昼間や夜早い時間帯はちょくちょく空きがあるのでインスタをフォローしてマメにチェックしていると幸せになれそうだ。

 というわけで2021年も食って食って食いまくりました。秋口から体重増加がヤバい。去年から一応OMAKASEのプレミアムとやらに入っては見たが、過去そこまでこのサービスに依存していたわけでもないので、プレミアムグリーン(笑)と一番低そうなステータスに落ち着いているのでした。
 よしたけや龍次郎が少々、あと何故か前日キャンセルで蛎殻町すぎたが急に落ちてくるが当然に反応できず。しかしながら肝心の天本、なんば、すし良月あたりは全く降りてこない。それじゃ意味ねえんだよ!!熊谷金返せよ!!

今年の目標?銀座に店出す予定の渡辺健とワイキキのすし匠訪問。以上!!

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