機甲狩りのゲルダ・シュルツ

 モーターから放たれる重低音が、その深さを増した。

 それを聞くより先に、ゲルダは前方へ一歩踏み込む。直後、鋼鉄の拳が、先ほどまで立っていた瓦礫の山に突き刺さった。

 ゲルダは、さらに一歩踏み込み、身長の倍ほどもある機甲鎧の足元に着地する。左。右。電磁サーベルが鎧の膝関節を的確に捉えた。切断された配線から火花が飛び散ると同時に、鎧の胴部から男の叫び声。

 痛覚遮断機能も搭載していない安物ね。ゲルダは表情も変えず、前のめりとなった機甲鎧の左へ回り込む。PROM社製19年型パワーメイル。左後頚部に放熱装置への配線がある筈だ。

 ゲルダは鎧の死角へ駆け上り、頸関節の隙間に狙いを定める。その碧い眼はフルフェイスヘルメットに覆われ、外から表情を伺うことはできない。「フランクフルト市警 機甲犯罪課」と書かれたジャケットが、夜の湿った風になびく。

 目標は頭上50cm。ゲルダはサーベルを真上に構え、跳んだ。

【続く】

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