まだアイカツフレンズを見ていないなんておまえは幸せだ

おれは百合が主食のカンガルーだ。長年百合を食べて生きてきた。これはじりきで百合を見つけることがむつかしいHOOMANたちにおいしい百合を紹介するために書いている。よって百合が主食でない者は今すぐ立ち去って近所のすごくおいしいラーメンやさんでも検索するがいい。
カンガルーは容赦のないネタバレをする。これはラーメンやさんがラーメンにメンマを入れるくらい自然なムーヴなので避けようがない。嫌なら今すぐ近所のおいしいカレーやさんを検索しろ。


2018年の4月からアイカツフレンズとゆうすごい番組が始まった。まずはこのPVを見ろ。動画のはりかたは検索してしらべた。とても簡単だった。

見たな? 見たならおまえたちHOOMANにも、これが女の子と女の子の密な関係性を描いたすばらしいアニメであることが理解できただろう。

人気アニメ「アイカツ!」シリーズ3作目

いくらなんでもアイカツ!シリーズを知らないHOOMANがいるとは思えないので詳しい説明は省くが、これはすごいアイドルを目指してアイドル学校に通いなんかはちゃめちゃにアイドル活動する女の子たちの生態をえがいた人気アニメシリーズの最新作だ。
3作目となっているが話はつながっていないので前の2作品を全部見る必要はない。1作目(アイカツ!)は全178話、2作目(アイカツスターズ!)は全100話もあるとほうもないアニメだ。あまりのおもしろさにカンガルーはいっき見したが、HOOMANのちいさな胃には刺激がつよすぎる。
その点、アイカツフレンズはまだ始まったばかり。これを書いている時点でまだ13話しかない。子どもでもおかわりを欲しがる量だ。まずは軽い気持ちでAmazon Prime Videoやバンダイチャンネルなどおまえのナワバリ内にある動画配信サービスで見るといい。1話と最新話は公式チャンネルの慈悲で無料配信される。


見たならおまえはこの先、最短でも2年間にわたって百合の安定供給を保証される。野性を失いなにを食えばいいかわからず途方にくれるHOOMANに向けた、すばらしいサービスであると言える。

これまでのシリーズとは異なる、「ふたりひと組」が前提のアイドル活動

アイカツ!に出てくる女の子はたいていがアイドルだ。そしてみんなトップアイドルを目指している。つまり大前提として、女の子たちは共にアイドル活動に励む仲間であり、ライバルなのだ。
仲間でありライバル、その構図をくつがえす強烈なギミックが今作には新たに仕込まれている。それが「フレンズ」という制度だ。
アイカツフレンズ!の世界では、アイドルたちが「フレンズ」と呼ばれるふたりひと組のユニットを組んでアイカツし、トップアイドルである「ダイヤモンドフレンズ」を目指す。強くエモーショナルな女の子同士の絆が描かれるとゆうわけだ。

カンガルーはせっかちなので先に言ってしまうが、「フレンズ」は友情と別枠にある、恋愛感情や結婚に近しい概念だ。13話かけて展開される主人公あいねとみおのフレンズ結成までの道のりには、まるで少女漫画のようなロゥマンチックラブストーリーの文法が用いられている。
13話まで見た時点でおまえは最初クールキャラに思えた湊みおちゃんの不器用でモダモダした告白ムーヴに手元のクッションを叩き、あいねちゃんがフレンズ結成を喜ぶ姿に慈母めいた微笑みを浮かべ、ご家族への挨拶をすませたあとに迎えたふたりっきりの夜に穏やかじゃないものを感じたはずだ。
わかりやすい百合ムーヴを見せるみおちゃんにすっかり感情移入したおまえは、ハハーン、これは百合だな? とわかりきったことをゆう。しかしおまえは気づくべきだ。「フレンズ」とゆう関係を友情とは別のなにかにしているものの正体が、主人公なのにいまいち本心が見えづらくミステリアスな友希あいねその人であることに。

恋する女の子はミステリアス

これまでのアイカツ!シリーズには、主人公がアイドル活動を始めるにあたって目標となる「憧れのアイドル」がいた。
星宮いちごにとっての神崎美月、虹野ゆめにとっての白鳥ひめ。それでは友希あいねにとっては誰か?
湊みおなのだ。あいねはスターハーモニー学園のトップアイドルである湊みおに誘われてアイドル活動に身を投じる。そして3話のみおのステージを見て、はっきりと「すごい! 私も、もっとアイカツしたい!」と決意するのだ。
ここまで前作に忠実なラインを取っておきながら、「フレンズ」とゆう制度によって憧れ≒ライバルの構図がぐるりとくつがえされる。あいねにとってみおは目指すべきアイドルの高みではなく、「フレンズとして一緒にアイカツしたい」憧れのパートナーとなるのだ。
あいねは「目指せ、友達100万人!」を公言してはばからない自他共に認める社交性モンスターだ。目が合ったな、おまえは今日からおれの友達だ。ウォンバットのようなクレバーさで日々友達アルバムを埋め尽くさんと欲している。
そんな女の子が、「自分はまだまだ釣り合わないから」という理由でみお相手にフレンズ結成を申し込めないでいた。これはフレンズ≠友達であることの証左であり、断言するがまぎれもない恋心なのだ。
恋をするとおまえたちHOOMANは時に不可解な行動に走る。友希あいねは文字通り走った。「みおちゃんとフレンズを組むために、目指せランニング100万km!」という謎予言めいた目標を自ら課し、ことあるごとに走っていた。そのことにおまえは11話の告白が成功したあとで気づく。それまでのあいねは、よくわからないタイミングで突然走りだし視聴者を置き去りにするミステリアスな女に見えていたはずだ。
「あいねちゃん、みおちゃんとフレンズ組むためにすっごくがんばってたもんね!」というセリフを聞いてあの行動の真意を理解したおまえは、その想いの深さに頬を打たれ、滂沱し、フフッてする。

パートナーの夢≠自分の夢

「フレンズ」という制度によって変化が生じたものの、主人公たちにとって目標となるアイドルは今作にもいる。それがダイヤモンドフレンズとして君臨するラブミーティアのふたりだ。
彼女たちはこれまでのアイカツ!同様、とんでもない強キャラとしてあいねとみおの前に現れる。現状ではライバルとも呼べない実力差があり、開始2話早々で圧倒的なステージを見せつける。2話? 気づいたHOOMANにはジャーキーをやろう。憧れのアイドルのステージを見て主人公がアイドルを目指すのがこれまでのアイカツ! 友希あいねにとってそのタイミングは3話のみおのステージであり、ラブミーティア打倒はあくまでパートナー・湊みおの夢なのだ。

みおはラブミーティアに強く憧れている。彼女たちのような強い絆で結ばれたパートナーと一緒に、ダイヤモンドフレンズの称号を戴くのが夢だ。あまりにもラブミーティアが好きすぎてその行動はちょっとファナティックめいており、通報されないのはひとえに周囲の懐の深さゆえにほかならない。
それではあいねの夢はなんなのか? これは1話からぶれずに「目指せ、友達100万人!」である。
ふたりの夢が違うことは毎回挿入されるアバンでもはっきりと強調される。「目指せ、友達100万人!」「ふたりでなろうよ、ベストフレンズ!」……矛盾している? そんなことはない。フレンズと友達が違う存在であることは明言されているし、惹かれあって隣を歩くパートナーとは、思い描く夢が違っていても全然いいのだ。お互いの夢が相手の夢を叶えるキーにもなっている。アイドル活動をすることによって普通の女の子だったあいねは友達100万人を達成する可能性を得たし、友達=フアンであるなら100万人にもなった頃にはダイヤモンドフレンズカップ優勝の可能性も見えてくるだろう。
強い絆で結ばれた相手と支え合うことができれば、とほうもない夢でも追い続けることができる。そして二人が抱く夢は違っていていい。それが今作アイカツフレンズ!で発せられる強いメッセージなのだ。

昨今のHOOMANはコテコテに過剰装飾されたロゥマンチックラブイデオロギーなどに縛られつかれきっており、恋愛や結婚といったフォーマットによって自分が消耗されることを忌避する。これまでのHOOMANはあまりに自分を大切にしなさすぎたのでそれも当然だ。ジャーキーをやろう。おいしいカレーやさんを検索せずにここまで読み進めたおまえにも、「フレンズを一緒にするな!」とふんがいする心持ちがあるかもしれない。
しかしこの「フレンズ」とゆう制度で提案されているのは、自分にもパートナーにも過度な献身を強いるフォーマットではない。自分の夢を大切にし、相手の夢も大切にする。新たな形のパートナーシップだ。
そしてそれは、アイカツのアイは愛情のアイかも、と神城カレンが示唆するとおり、アイドルに自分の夢を投影し、過剰なまでに献身を強いる現実の「アイドル」フォーマットとも異なる。

フアンは友達、パートナーはフレンズ。それくらいの距離感でお互いアイデンティティを確立して隣のHOOMANを大切にできれば、愛で溢れている未来を受け取ることができる。
友希あいねのアイドルオーラは五線譜だ。自分とは違う他人とどうハーモニーを奏でていくべきか、彼女の指揮が示している。
ロゥマンチックな感情を否定せず、実際どう扱えばいいのかをこどもたちに現実的に示そうとゆう、勇敢なおとなたちの挑戦に、カンガルーは敬意を表したい。ジャーキーをやろう。