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知られていない「学校の看護師」

「学校の看護師」を皆さんはご存じですか?
または、イメージができるでしょうか?
なかなか知られることのない看護師かと思います。

「医療的ケア」がある子ども達が学校に通う時、学校で医療的ケアを実施する看護師です。
と言っても、ピンとは来ないかもしれません。

新生児の命を救う医療の進歩

日本は、新生児が世界一死なない国と言われています
医療の進歩により小さく生まれても、病気をもって生まれても、医療によって助けられ生きることができるようになったのです。
そうして命を救われた子ども達は、病院のNICUなどで「治療」を受け、「治療」がなくなると退院して在宅に移行となり、おうちに帰って来ます。家族で生活できる喜びは皆さん感じられることです。

しかし、退院する時に生命を維持するために医療機器が必要であったり、医療処置が必要であったりする子ども達が少なくありません。
病院では、医師や看護師が交代で実施していたことをご家族が実施しながら生活する事になります。これらの処置や対応が「医療行為」(病院では医療職が行うもの)が「医療的ケア」として、家族に任されていきます。

家族に任される「医療的ケア」

例えば、気管切開といって気管に孔をあけて筒(カニューレ)を入れて気道を確保している事があります。その場合、痰などがカニューレに詰まると呼吸ができなくなりますので、「吸引」という処置が必要になります。カニューレが抜けないような管理も日常的に必要ですし、もしカニューレが抜けた時の対応も家族がしなければなりません。

また、呼吸が弱い子どもには、そのカニューレに人工呼吸器という呼吸をするための機械をつけている事もあります。「人工呼吸器」と聞くと、「怖いもの?」「終末期に使用するもの?」というイメージを持たれる方も多いと思います。しかし、人工呼吸器は、治療のためのものではなく、身体の一部として生きていくための機械です。それらの管理も家族が行っています。

生活は一変。仕事は継続できず、睡眠時間も削られ、片時も目を離せない状態で日々を過ごしながら、いとおしい我が子を育てます。

数年経って、保育園や幼稚園、学校の年齢になると普通の子育てと同じように社会の居場所を探します。しかし、その子たちを受け入れる社会がない現実にぶつかるのです。

医療的ケアが必要な子どもたち、大人たちとの出会い

私は、看護師として重度心身障害児・者施設や小児専門の訪問看護ステーションの所長を経験する中で、たくさんの医療的ケアが必要な子どもたち、大人たちに出会うことになりました。
それより以前には、重症心身障害児の母でもありました。自分の子育てから施設や訪問で出会った子ども達が、どうしたら社会に受け入れられるようになるのかを長年考えながら子ども達に接してきました。

医療的ケアがある子ども達の就学の壁

中でも「学校」「教育」は、全員就学が謳われてからも、医療的ケアのある子ども達にとっては、多くの条件が課せられてしまい望む教育を受けられないことが多いのです。私の子どもが就学を迎えた約30年前とほとんど変わらない状態が横たわっているように私には見えました。

医療、福祉、教育・・・それぞれに施策はできるのですが、それがなかなか現場で形になってこない。
それは何故か?また自分には何ができるか?

私が出会ってきた障がいが重くても、医療的ケアがあってもたくましく生活する子ども達。
その一人ひとりに教えられた生き方、生きがい、希望、目標・・・。
医療的ケアのある子ども達が必ずぶつかる就学の壁・・・。

そう思って見回すと、医療も福祉も教育もみんながどうしたらいいか悩んでいる。悩んでいる社会に飛び込んで、子どもや家族は更に悩む・・・。そんな景色が見えてきました。

多様な子ども達への対応に悩む医療・福祉・教育の現場

医療の分野が進歩して多様な子ども達が社会参加を求める時代になり、定型ではない対応が必要になり、現存する仕組みでは対応しきれないところで、フリーズしてしまう。

そんな社会に私は、看護が多様化する医療的ケアを(医療部分)を支えることができたら、そして医療と教育のつなぎ役ができたら、子ども達の人生と切っても切れない学校へ通うことができるはず。
そう考えて、2020年8月に一般社団法人MEPL(メープル)を設立しました。

学校への看護師配置

MEPLはまだどこにもない学校への看護師配置を中心に行う法人です。
介護保険や、医療保険のような報酬の仕組みもなく無謀だったのかもしれません。そんな中、2021年6月に医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(以下医療的ケア児支援法)が設立し、同9月には施行となりました。医療的ケア児や家族が生きていくための社会の基本的支援のありかたといった内容です。
医療的ケア児にとって、やっと社会の扉が開きました。

医療的ケアのある子ども達の未来にむけて

新たなステージです。そして変化の時です。
関わる人達が子どもを中心にできることを組み立てていけば、医療的ケアのある子ども達も、障害や病気をもって成長する子ども達も教育を受けて将来が描けると信じています。

このnoteには、私の経験や、想いを載せていきます。
教育関係、在宅を支える福祉の皆様に現状を知っていただくとともに、私のホームグラウンドでもある看護師の皆様にお伝えすることで、「学校の看護」に携わって一緒に支えていただけたら幸いです。

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