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バボ(未来世紀サクライ)の転職劇

今年のお正月、1月1日に、高校時代からの友人、バボ(あだ名)に会った。未来世紀サクライ(ポットキャストラジオ)のプロデューサーである。前に会ったのは2019年の年始だから、3年ぶりの再会だった。

バボは慶応大学を卒業後、テレビのアシスタントディレクターになった。テレビといっても、バラエティー番組の制作会社。下請けである。だから、めちゃくちゃな労働環境だった。休みがずっとなしで、編集室に何日も徹夜で閉じこもるとか。上司から蹴られたりとか。上司のまえでは怖くてタバコも吸えなかったらしい。向こうが吸っていても。

しかもつらいのは、クリエイティブなことを全然させてもらえなかったことだったという。バボ曰く、「クリエイティブなこと以外全部」をやらされていたそうだ。これがかなりきつかったらしい。労働環境がぎりぎり耐えられても、ひたすらアシスタントの仕事はたいそう辛かったという。

そんなバボは、1年半で制作会社を辞めた。そして、できたばかりの、スタートアップのコンサルティング会社に入った。入った当初は8人くらいの規模だったという。

そこから3年がたった。会社は500人規模になり、バボの年収は入社時の2倍になっていた。

しかも、ここからがすごい。

バボはなんと、会社内でバラエティー番組を作っていた。

コンサルティング会社のため、社員は外で営業や仕事をすることが多い。リモートワークも進んでいる。そのため、会社内でのコミュニケーションは少ない。社員規模の拡大も相まって、社内での交流が課題になっていたという。

そこでバボは、出演、制作をともに社員でこなすバラエティー番組の制作を提案した。社長が旅番組の主人公になり、社員の名前を冠したアトラクションに挑戦し、その様子を番組にする。ナレーターやディレクター、カメラの撮影も社員がする。そして、その番組は社内で共有され、社員たちの共通の話題になるというわけだ。実際に作られた動画は本物のテレビ番組のようで、社員からも大好評だったという。

バボは、彼の野望を自信たっぷりに語ってくれた。「社内コミュニケーションの改善ソリューション(解決策)として、コンサルティングの一つとして売り出したい。いつか、テレビ会社にもコンサルティングしてみたい」

3年前、バボから「制作会社辞めた」と聞いた時の顔を思い出す。目の焦点はどこか定まっておらず、自信なさげにうつむいていた。首は縮こまり、猫背はさらにひどくなっていた。タバコのヤニで黄ばんだ指の爪を見て、「ああ、苦労したんやなあ」と思った。

そのバボがどうか。将来の野望を語るバボの目は、まっすぐ前を見つめていた。背中は定規を一本入れたようにまっすぐで、手指と爪はアルコール消毒されていた。目の光は、まぶしかった。集まったみんなに、自分のつくった番組を誇らしげに見せていた。充実感が、体中からほとばしっていた。

人はこんなに変われる。転職したら、こんないいことがあるのかもしれない。そう思わせるには十分な、バボの目ざましい変化だった。


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