無世界Wふきふき

今、世界が終わった。動物園でアリクイを眺めているとふとそう感じた。感じたというよりは確信。世界が今確実に終わった。本長閑ロンパス(ほんのどかろんぱす)は、うろ覚えのイマジンを口ずさんだ。「お前んち、天井低くね~」

ずっと前から世界は終わると言われ続けてきた。しかしこうもあっけなく終わるとは思ってもみなかった。本長閑はポケットに入れた小銭を掴み、とっさに投げた。「何奴!」

小銭を投げつけられた「影」は華麗にそれを回避し、シュルシュルと機敏に舞った。それはまさしく忍。本長閑は槍を虚空から取り出し、構えた。「参る!」

槍はあらゆるものを貫いた。今治タオル、母恵夢(ポエム)、うずしおパイ…。しかし「影」だけは貫けない。

そして、本長閑は気付いた。世界は終わっていたのだった。しかし、すべてが流れていく。終わったのは偽りの自己が紡ぎ出す偽史としての「世界」…。アリクイはゆっくりと立ち上がると、祝福のように威嚇を始めた。


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