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映画「整形水」をみた

※この記事はネタバレを含みます。未鑑賞の方の閲覧はご注意下さい。

おはようございます。かにです。
9/24(木・祝)に公開となった、韓国のアニメーション映画「整形水」を観てきました。

美容大国韓国の外見至上主義問題について切り込んだ作品、さらにはサイコホラーとのことでどんな恐ろしい内容なんだろう…と、興味が湧いたので観てきました。

とはいえ鑑賞後の疲労感がすごかったんですが笑
ルッキズムに対する暴力をややファンタジー要素も絡めて如実に再現していてとても思うものがありました。
今回は映画を観て感じたことをつらつらと書いていこうかなと思います。

あらすじ
人気タレントのメイクを担当しているイェジは、幼少時から自分の外見に強いコンプレックスを抱えていた。タレントからは罵倒され、偶然から出演したテレビ番組では悪意ある書き込みをされ、自暴自棄に陥ってしまう。そんなイェジのもとに、巷で噂になっている「整形水」が届く。それは、顔を浸すだけで思い通りの容姿に変わることができ、後遺症も副作用もない奇跡の水だという。美しくなって新しい人生を歩むべく整形水を試すイェジだったが、しばらくすると周囲で不審な出来事が起こるようになり……。
映画.comより

監督のインタビューも彼が何を描きたかったのかや、今の韓国での問題が語られていて非常に良かったので、鑑賞前でも後でも読むことをおすすめします。(ネタバレはありません。)


■外見による差別

冒頭は主人公のイェジが外見によって虐げられる場面が度々登場します。

メイクアップを担当していた女優ミリから「ブタ」呼ばわりされ憤ったり、マンションの管理人に転んだところを見られ「そんな体型だから転ぶんだ、少しは痩せろ」などと言われたり、コンビニ店員からポテチやジュースを買う時に鼻で笑われたり…

イェジの性格はものすごく卑屈で家族にさえ反抗的でしたが、日々こんな暮らしをしていたらそら人格も歪むよなと。
本人が問題なのではなく周りが追い込んでいる節も大いにあって、それによって性格が歪み、また周りから非難されるの負のループ。

ここまで酷くないにせよ、私達も無意識的にどこか外見で差別していることが往々にしてあるんじゃないかと思ってハッとした。

■美しくなって変化した美への執着

ネットで容姿について叩かれたことをきっかけに完全に自暴自棄になったイェジの元に「整形水」が届きます。

そこからイェジは一気に美しくなるのですが、そこから異常なまでの美への執着が始まり精神もおかしくなっていきます。

一番胸糞が悪かったのはイェジの親への態度です。
最初に整形水で全身を美しくするために、2億ウォン(約1,877万円ほど)を親に用意するよう強要します。(この時点で無理)

全身美しくなった後、「私、いい子になるからね」と母親と抱擁するシーンがあり、多少は性格が良くなっていくのか…と思ったのも束の間、
その後もヒステリックを起こしながら両親へお金を請求するシーンが度々ありとても観ていられませんでした。

また、一度整形水を使いすぎて全身の肉が溶けてしまったイェジに、両親がガリガリになってまで肉を分け与えるのですが、
その後(恐らく醜形恐怖症のような症状によって)顔に傷がついたという錯覚を見てヒステリックを起こしたイェジは、ガリガリの両親へ「肉を分けて」と言います。両親にはもう分け与える肉すら無いのに。

友人はこの両親への当たりのキツさに苦しくなってしまったようで、中盤あたりでリタイアしてしまいました…

■美しい人へも向けられるルッキズムの暴力

終盤、整形水で美しさを手に入れたイェジは幻覚に苦しみながらも冒頭で出会ったイケメン男性と交際をスタートさせ、婚約指輪までもらい幸せの絶頂を迎えます。

しかし、男性の家へ招かれ訪れてみると…

ここからの展開は驚きでした。
このパートからは監督が言っていた「美しい人へも向けられるルッキズムの暴力」を表現していたと思います。

男性の正体は異常なまでに美に執着し、美を収集するという元女性のサイコパス。

美しい女性を捕まえるために美しい男性になったという思考も狂ってるのに、美しい人のパーツを整形水を使って自分の体の一部にするという(目とか鼻とかが体のあちこちに付いてた)、もうなかなかに狂っててちょっと笑ってしまいました。
その発想は無かった。

ただ、これは現実的に考えれば美しい人を狙った殺人事件などにも置き換えられるでしょう。

ラストはイェジが男性の膝上へ取り込まれ、また別の美しい人が標的になって終わるという感じでした。

今回は主人公のイェジの性格の悪さなどをふまえたうえでのラストなので、自業自得のような、または教訓のようにも感じられますが、
かと言って犯罪に巻き込まれて良い理由にはなりませんし、他にも整形水を使っていない普通の人もこの犯罪に巻き込まれていたため気の毒でモヤモヤしました。

主人公がイェジではなく整形水を使っていない女性だったら、またはこのサイコパスがただの殺人鬼だったら、恐らくただの胸糞映画になっていたと思いますが、
整形水を含めたファンタジー要素があるからこそ問題を浮き彫りにしつつもコンテンツとして楽しめる、とても(良い意味で)モヤモヤとした印象の残る映画になったのかなと感じました。

■おわりに

監督のインタビューで予算がなく表現できないことも多かったとのことで、アニメーションの質はめちゃめちゃ高いとは言えませんでしたが、私は特に違和感なく観れました。(苦手な方は苦手かもしれません。)

また、グロ表現も直接的な部分はほんの一部でしたので比較的見やすいかなと思います。ただ、直接的なグロよりも精神的なグロが多いので、精神状態の元気な方の閲覧をおすすめします。

韓国のみならず世界中でSNSが流行し、昔より良くも悪くも人との比較が容易になったことでこうしたルッキズムの暴力も加速しつつあるのでしょう。

他人は他人、自分は自分。という思考に世界がなるのが幸せだとは思いますが、この繋がりすぎた世界ではなかなか難しく感じます。

ただ、この映画を観て自分はどうだっただろうか?美とはなんだろうか?と、少し立ち止まって振り返るひとつのきっかけになれば良いなと思います。

長くなってしまいましたが、読んでいただきありがとうございました!

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