見出し画像

DPP2021終演とリブート。

「リブート」する。
パソコンの再起動の意味だが、今はフィクションに対して〝仕切り直し〟のニュアンスもあるらしい。

SAIの一番最初のリブートはどこだったのか。
毎公演.毎作品.が リブート対象のようにも感じる。

明確な記憶の記録。
2005年11/23 路上音楽超劇ケロイド
2010年12/03 FOOLS PARADISE〜愚者の楽園※初演
2014年11/23〜 イト-変異する演劇/展示する演劇
そして今回の「17th DARK PARADE」がそうなる。

周年単位でコレクションコンセプトを変えているようなところがあるから毎度再起動してる感じだが、根本的な変更などは上記の4回が大きい。上から路上演劇転向、活動休止期間を経てからの改名と再開、俳優部解散からの作品主義への回帰、そしてコロナ禍の分断を経ての活動再開の意思表示とアクションである今回となる。

本来なら期間中に作品紹介をするぐらいの気概があっていいはずだがその体力がなかった。
その体力がなかったということすらも、これまでの自分の活動を振り返った時に、まったく違うタームに入っていることの明暗を理解した。

私は舞台を総合芸術と捉えている。
そのスタンスのまま17年「劇団」という形式を好み、活動を続けている。
長年のメンバーであるCuu-の活動休止や、舞台芸術創造機関SAIとなってからは随分長い付き合いになった麻宮チヒロの脱退、また近年のコアメンバーでありSAIとしては今まで良い意味で自分より強い顔役がいなかった中で現れた常盤美妃の療養休暇など.
僕のスタンスに疑問符が浮上することが、コロナとそれに伴うメンバーの転機とあいまって多数浮上した。
なぜ続けるのか。なぜやるのか。
やらなければいけない理由はなんなのか。
どこにいきたいのか。
去来する葛藤と煩悶の日々。その中で決めた道を進み、進んでは私の至らなさなどもあり、それは違うのでは?という声も受けたりと、何をしても98%の賛成と2%の反対とを.都度比率は違えてども目に耳にしながら.続けてきた。

9/1に「限界をむかえました」という、自虐的な動画を公開しYouTubeでの路線変更を発表した。SAI以外の活動で、映像や配信の活動が活発になり、手が回らなくなってきたことが大きな要因だった。
続けることの希望と絶望をリアルに感じた数ヶ月だった。自分自身がカメラを回しながら自分に問いかけるような日々であったようにも思う。
「私たちの代わりにスポットライトを浴びる.あなたたちのその美しさを私は多くの人に届けたい」
純粋にその気持ちで動き続けてきた。
11月に入る頃になって、常盤とも対話する機会が増える中で、何かをやりたいという話になり、
「今やるならDARK PAIN PRAYERかな」という彼女の言葉に少し驚いた。私の中であのステージはけじめと見送りのようなところがあったから、常盤にとってはまた違った作品として育っていたことが本人の口から聞けたことにより、私の中でも意味が変わったのだ。

「私もいつかここに帰ってくるんだなと思って、当時の映像を見ていた」

その言葉を聞いた時に、そうか、彼女にとってはこのコロナブランクはそう影響しているのか。無論、期間中の活動を知らないわけではないのだ。それを差し引きしてもそう思える誠実さに感化された。
そこからDARK PAIN PRAYER2021をやる理由と、企画が先行していたWEEKEND THEATERについてを結びつける因子が見えたのだ。

〝止まった時計の針を動かそう〟

と。

過去はなかったことには出来ない。
全てを受け入れて、未来へ持っていく。
この一連の気持ちは、当日に披露したパフォーマンスである「FUCK THE COVID19」に込めた。

人の習慣が大きく変化したのがこの2年なら、私たちもまた変わっていかなければならない。「元に戻す」ことはさながらテセウスの舟の様な話だ。そしてそれでいいのだと言える。本質を違う事無く、創り、進む事だ。

私は今回のリブートを以てして
「演劇は総合芸術である。」ということを、見失わず、向き合うことになった。
その機会を与えてくれた多くの方に感謝を。

わがままに付き合って一緒に戦ってくれた、とっきー。
当日のライブであらためて楽曲を歌わせてもらった
永井幽蘭さん。見守ってくれた大島おねえちゃん。未だに「贋作マッチ売りの少女」はたくさんの人の心で鳴っている。
そして2015年の周年ツアー作品「BORDERS」のEDテーマである「都忘れ+BORDERS」こちらは、こもだまりさんと西邑卓哲さんによるユニット麻邑楽の曲で、作品用に新規パートを加えた楽曲だった。
これを歌わせて欲しいなと思ったのは、常盤がはじめてSAIを目撃したのがBORDERSだった事もあり、止まった時間を動かすならはじまりから
という気持ちもあった。

全ての想いはステージに込めた。
見返しても、配信を担当してくれた恩田純也のSAI愛(プレイヤーのアクションを想像してカメラを合わせてくれていた。最高だった。)もあり、押さえるべきところは押さえた良い絵になっている。配信では珍しく、PCやスマホにダウンロードして永続的に視聴することも出来る。もし今日のこの記事を観て興味を抱いてもらえたなら、アクセスしてみて欲しい。(12/27迄の販売である。あっという間だ・・・)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?