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Buen Camino 2022 あなたも巡礼に出かけてみませんか? ㉝

(33)グラナダへ

 9/15
 宿をチェックアウト(2泊で81.62€)して、アトーチャ駅に向かった。昨日、折角教えてもらったが列車の出発まで時間があったので、町の見物がてら駅まで歩いて行った。私が乗った14:35発の列車は4人がけの対面式であった。SILENCIO(沈黙)の席で、照明を暗くしてあった。「こんな席があるのだ!」。ひとり旅の私には好都合であった。前の男性が電話をしていたら、早速、後ろの女性から注意されていた。
 グラナダへは17:52到着。アルハンブラ宮殿はずっと行きたいと思っていた所なので、期待感で心が躍った。それほど大きな町ではないので、町の様子を見ながら宿まで歩いて行った。途中に大学があり、大勢の学生とすれ違った。
「Googleマップ」は宿の近くでその役割を終了した。問題はここからで、すぐ近くにある筈の宿が見つからないのだ。スペインでは看板を外に出せないようになっているようだ。美観の問題からだろう。だから、お目当ての店の前まで行かないと、それだと分からない。
 ここでも、近くまで来ているのに当の宿が見つからない。スマホに入っている宿の住所と名前をかざして、飲食店やカメラ屋、警官に尋ねたがよくわからない。うろうろしていると警戒中の警官が二人、暇そうにしていたので尋ねたら、スマホで検索までしてくれ、指図された方に行ったがわからなかった。そこで、開いていた店で聞いたら、すぐそこであった。
 行ってみると、これでは前を通過しても、わからずに通り過ぎてしまうのではないかと思うほど、民家と変わらない外観であった。小さな紙切れが扉に一枚貼ってあった。不案内の者には限りなく不親切であった。もう一つは、すぐ近くなので、そこまで案内してくれればいいのに。これはバルセロナでも同じであった。

 なぜ、こういう問題が起こったのか、それは私が宿泊した宿が大きなホテルではないので繁華街にはなく、住宅地の中にあって見つけにくかった事にもよる。こちらでは日本ではあまり見ないこのタイプの宿が主流のような気がする。
 教えられたドアコード番号を入力して中に入り、部屋に行くと鍵が差し込んだ状態にしてあった。「やっと着いた!(管理人とは翌日会った)」。ここからは一人部屋となる。

 食事のために外に出た。前にも書いたが、大勢の警官隊に囲まれて、学生たちがシュプレヒコールをあげて騒いでいた。最近、日本では見ない風景なので興味を持って見ていた。どうも、大統領の「ファッショ的政策」に対する抗議活動のようであった。それを見ていた二人の中年男性が、彼らを「虫けら」と批判的に呼んでいたのが印象的であった。

 夕食は近くのレストランで食べた。隣の席に女子大生らしき二人連れがいたので、アルハンブラ宮殿までどれくらいかかるのか尋ねたら、歩いても30分ほどだという。(15,480歩)

アルハンブラ宮殿(9/16)

 翌日は、早めに宿を出て「Googleマップ」でアルハンブラ宮殿に向かった。古い街並みをくねくねと抜け、川を渡り、最後はかなり急勾配の坂道を登ると、そこが入り口であった。ここでもパスポートの提示を求められるなど、警戒が厳重であった。

城壁の上から麓の町を見下ろす

 宮殿は市街を見下ろす丘の上に建っていた。標高差は50m以上あるのではないだろうか。園内は建物と庭園、大量の水を用いた植物園で構成されており、ライオンの中庭やパティオ、庭園などには豊富な水が噴水として使用されている。この乾燥した大地でこれだけの水を使うこと自体が、その主人の権力の強大さを窺わせる。ましてや、川は坂の下にあり、今ではポンプを使って汲み上げているのだろうが、当時はどうやってその水を上に運んだのであろうか。
同じ水を用いた日本の回遊式庭園などとは、水がもっている意味がまるで違うのだ。
 その直前にマドリードのプラド美術館で溢れるほどの人物画像を見てきた目には、あまりにも対照的であった。ただ、この図柄ばかりでは線の単調さに飽きてくる。日本画の花鳥風月が懐かしくなる。
 キリスト教も同じ一神教で偶像崇拝を禁止しているが、この点に関してはプロテスタントと大きく違っている。カトリック教会にはキリスト像だけでなく、マリアや使徒など諸聖人の像や絵画が会堂にあふれている。

手前は噴水

建物内部の壁や天井には、抽象的で繊細なアラベスク模様がびっしりと施されている。イスラームは偶像崇拝を禁止したので、ここでは徹底的に具象が排除されているのだ。だから、ここには、この建物の主人を描いた絵もなければ像もない。

光を遮り、それを模様にしている
壁に描かれたアラベスク模様
可愛らしいライオンの噴水

ただ、同じ図柄を繰り返しているのであるが、それが人のようにも見えてきたものがあった。それは私だけにそう見えたのか、それとも作者の意図なのかはわからない。

たくさんの人のように見える

 イベリア半島からイスラム勢力を駆逐するレコンキスタ(国土回復運動)が起こり、キリスト教勢力が、1492年にここを陥落させた。この時、彼らはこの宮殿を見て、その美しさに魅せられ、これを破壊することができなかったと言われている。それは宗教を超えた普遍的な美しさが、そこにあったからなのだろう。歴史の教員としては、ぜひ見たいと思い続けてきた場所であった。

様々の噴水がある

 帰りは別の坂をぶらぶらと下り、町の見物をした。
午後は駅に行き、バルセロナまでの列車の切符を買った。もう少し観光したかったので、明日の夜行便が欲しかったが、座席がなく、明日の朝早い便しか取れなかった。
 宿に帰ろうとしたら、駅前にTOKYOという日本食レストランを見つけた。スペインに来て、日本料理はずっと食べていなかった。味はともかくとして、土産話になるだろうと思って入った。ラーメン、餃子から寿司まで一通りのメニューが揃っていた。こういう場合はカレーだろうと注文したら、箸とフォークが添えてあったのには驚いた。ここまで「日本式」にしなくてもいいのに。どうやって食べたらいいかと一瞬考えたが、諦めてスプーンを頼んだ。こちらではスプーンはスープ限定ということなのだろうか。家庭味の普通のカレーで、「美味しかった」と日本語でお礼を言った。(24,308歩)

カレー

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