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匿名希望が丸裸!インターネットの誹謗中傷

みなさん、こんにちは
弁護士法人えそらの弁護士の鹿野舞です。

先日、おぎやはぎの殺害予告がニュースになっていました。
「おぎやはぎのメガネびいき」リスナーの私(通称クソガール)としては、とっても悲しい気持ちになりました。
小木さんが、今後の犯罪予防のためにも犯人に対して厳重な処罰をのぞむとおっしゃっていましたね。
そこで、私なりに今後の犯罪予防のために今日は、インターネット上の名誉毀損発生から、犯人特定に至るまでの仕組みについてお話しようと思います😃

今日のテーマ

隠れているつもり?丸見えだよ、匿名希望という薄い衣
です。

インターネットで発信している犯人を特定するためには、どのような手順を踏む必要性があるのかを知るためには、逆再生的発想が必要になります。
なので、まずは順行から(テネット的な!)

ストーリー

今回は主人公が犯人なので、名前は「A男くん」ということにします。

A男くんは、社会人になり、故郷の秋田を離れて、東京で一人暮らしをはじめました。初めての一人暮らし。住民票をうつして、各種手続きをしなければなりません。お仕事のストレスと慣れない家事でなんだか最近イライラしていることが多いようです。
社会人になったことをきっかけにスマホデビューA男くん。●ocomoさんがキャンペーンをしていたようで、●ocomoさんと契約をすることにしたそうです。住所変更が完了した免許証をもって、ばっちり契約をし、はれてスマホデビュー✨A男くんは掲示板の書き込みに夢中。身分がばれないように関西弁を駆使して日頃の不平不満をぶちまけています。
当初は、単なる日々の憂さ晴らしでしたが、辛辣なA男くんのコメントを面白いと思う人が増えていき、気がつくと掲示板において人気者になっていました。
A男くんは閲覧者の期待に答えるべく、あらゆる人に噛み付いていくようになりました。が、そのうちネタも切れていきます。人気が減ることが怖くなったA男くんはついに嘘を呟きはじめました。
人気ユーチューバの芸名とその人のツイッターアカウントを記載して、「こないだユーチューバの○○(@abc*****)がクラブでシャブ買ってるの見たわ」、「だから○○(@abc*****)の動画ぶっとんでるんだな」、「みんなが視聴した分、○○(@abc*****)のシャブ代に消えていくだけやで」
そんな書き込みが○○(@abc*****)さん本人の目に止まります。
ある日、その掲示板に○○(@abc*****)を名乗る方から書き込みがありました。
「法的措置をとらせていただきます」
頭が真っ白になったA男くん。でも自分は偽名だし、関西弁を使っているし、わかるはずがない…大丈夫だ。こんなん脅しに決まってる
(ストーリーおわり)

さて○○(@abc*****)さんは、どうやってA男くんの正体を暴いていくのでしょうか。

解説

A男くんが嘘の書き込みをするに至るまでの行動を必要最小限に絞ってみてみましょう
・携帯を購入する
・●ocomoと契約をする
・掲示板に登録して、アカウントを作成する
・掲示板に書き込みをする
・送信ボタンを押す
・みんなが見れるようになる

こんな感じですね。
○○(@abc*****)さんがA男くんの正体にたどり着くには、どこまで遡る必要があるかというと…??
A男くんの正体を知ってそうなのは、掲示板の運営者と●ocomoさんですね。
でも掲示板ではA男くんは偽名を使っていますから、ちゃーんと正しいA男くんの正体を知っているのは●ocomoさんです。
思い返してみてください。携帯の契約をするときには、住所も氏名も身分証も提示しますよね。つまり、基本的にはごまかしがきかないんです。

でも○○(@abc*****)さん的には、A男くんが●ocomoユーザーかどうかなんてわかりません。
そこで
逆行していきますよ〜〜

STEP1 掲示板の運営者に尋ねる(仮処分)
「2月10日8:23にこの投稿をした人の情報しりませんか?」


実は、インターネット上には住所があります(IPアドレスと呼ばれるものです)。
で、インターネットを使って情報を発信するときには、自分のIPアドレスから情報を発信します。
今回のケースを簡単にいうと
たとえば、A男くんの携帯電話のIPアドレスが123.456.789だとしましょう(IPアドレスはだいたい9桁の数字です)。
A男くんは2月10日8:23に123.456.789の住所から書き込みを発信しました。
すると123.456.789から発信された情報は、掲示板の運営者の住所(987.654.321)に到着します。
そして、掲示板の運営者は2月10日8:23に123.456.789から届いた情報を書き込みとしてアップロードするわけです。
つまり、掲示板運営者は2月10日8:23に書き込まれた投稿が123.456.789からきたものだということは知っています。

ここで○○(@abc*****)が仮処分の手続きという裁判手続きを掲示板運営者に対して行い、その書き込みが○○(@abc*****)さんに対する誹謗中傷だと裁判所が認めてくれた場合には、裁判所が掲示板運営者に対して、この書き込みのIPアドレス教えてあげなさい、と言ってくれます。
(仮処分という裁判手続きをしなくても教えてくれることもありますが、大抵は裁判手続きが必要です)

STEP2 ●ocomoであることをつきとめる

IPアドレスをゲットしたら、who isというインターネットサイトをつかえば、それがどこの会社を使っているIPアドレスかがすぐにわかります。
who isの画面に、123.456.789と入力すると
「●ocomo」と出てきます。
この手続きは裁判とかしなくても、大丈夫です。

STEP3 正体をつきとめる(発信者情報開示請求)

さて、●ocomoということがわかった以上、次は、●ocomoに対し、
「おたくの会社から2月10日8:23に123.456.789という住所で○○掲示板に書き込みした人だれ」という発信者情報開示請求の裁判を起こします。
●ocomoをはじめとする通信会社は日時とIPアドレスがあれば、ある程度までは契約者を特定することができるわけです。
これも仮処分と同様、裁判所がその書き込みは○○(@abc*****)さんに対する誹謗中傷だと認めてくれた場合には、●ocomoさんに対して「氏名と住所等を教えてあげなさい」と言ってくれます。

こうした道のりをへて、人気ユーチューバー○○(@abc*****)さんはA男くんの正体を突き止めます。

ただし、●ocomoさんがもっているのは契約当時の住所なので、そこからA男くんに損害賠償請求をする場合には、その住所が最新の住所かチェックしなければなりません(住所変更していない人もいるのでね)。

この点については弁護士ならば、住民票上の住所を追うことができるので、弁護士に頼んで住所をチェックする必要があります。


というわけで、道のりは長かったもののA男くんは、○○(@abc*****)さんに正体がバレてしまうわけです。そして○○(@abc*****)さんには損害賠償請求をされ、慰謝料を支払いました。

ほんの出来心だったA男くんでしたが、とんでもない目にあいました。
とほほ…

おわりに

今の裁判手続き上、犯人特定が簡単にできるとは言えません。
そもそも我々には表現の自由があるので、発信者情報開示を容易にみとめてしまうと言論統制になってしまいかねないと思います

でも!!決して匿名希望は匿名のまま終われません。
犯罪は犯罪として、然るべき措置をとれば、あっという間に丸裸にされてしまいます。あくまでも匿名希望は薄い衣でしかない、ということを覚えておいてほしいなと思います。

今日もありがとうございました〜

ほいじゃ!

弁護士法人えそら
弁護士 鹿野 舞

#弁護士 #法律 #誹謗中傷 #発信者情報開示 #中小企業 #個人事業主  


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