【岩手県岩泉町】名水の故郷の鍾乳洞「龍泉洞」
岩手県岩泉町は、岩手県の中部にある太平洋に面した町だ。
北東北に住んでいる人なら、岩泉ヨーグルトでその名前を知っていると思う。大谷翔平が絶賛した影響もあってか最近はコストコでも売られているという話も聞くが、残念ながらコストコは北東北に店舗がないので確認できなかった。
さて、この町には日本三大鍾乳洞の1つに数えられる龍泉洞が存在する。
数多くの地底湖を有するこの洞窟は名水でも知られ、岩手県内の各地では龍泉洞の水や龍泉洞の水を使用したコーヒーなどが売られているので、実際に訪れたことはなくても名前は知っているという方も多いだろう。
龍泉洞があるのは岩泉町の郊外の山の中。盛岡市から来る場合は車で2時間ほどかかる。
龍泉洞周辺には売店などが整備されているほか、近くには龍泉洞温泉ホテルもありそれなりに開けている印象だ。近くにコンビニなどはないが売店で蕎麦などを食べることもできる。
龍泉洞に入る際は入り口の向かいにある券売所でチケットを購入するのだが、このチケットは龍泉洞の向かいにある龍泉新洞科学館と共通になっている。
龍泉新洞は後からその名の通り発見された鍾乳洞で、龍泉新洞科学館は科学館と名前がついているが建物ではなく鍾乳洞に直接説明の看板などが建てられておりそれを見る仕組みになっている。
なお最初の方に断っておくが、龍泉洞は整備こそされているものの自然にできた鍾乳洞だ。
奥には階段も多く、足腰が不自由な方にはお勧めしない。また、そこに住む生き物はもちろん洞窟そのものも保護対象だ。急な階段などが多いことを含め、小学校低学年程度以下の小さな子供連れもあまりお勧めできない。
龍泉新洞科学館の方も坂と階段は多いが比較的緩やかなため、こちらなら比較的子供でも見やすいと思う。それでもかなり暗く、好奇心などで解放区間の外に立ち入ってしまう可能性もあるため子供だけの立ち入りは厳禁だ。
この日は雨による増水の影響で、上から水が常時滴り落ちていたり地底湖の流れがいつもに増して激しかったりと普段とは違う表情を見せていた。
さて、この先は折り返すルートと階段を登って三原峠に向かうルートとがある。
この階段はかなり急かつ狭く天井が低い場所もあるので、子供を抱いて行くことはほぼ不可能に近い。万が一小さな子供が登りたがっても、途中で怖がったり疲れてしまったりで動けなくなった場合は詰む可能性がある。
また、踏み面部分に生木が貼られており、湿度が高く床が濡れている時もこれが滑り止めになってくれているとはいえ、特に下りは歩いていてそれなりに恐怖を感じた。体力に自信があっても、ハイヒールなど歩きにくい靴で来ていた場合も避けた方がいいだろう。
かつては看板にもある通り、龍泉洞のある山から名前を取った宇霊羅という名称で龍泉洞で熟成させた山ぶどうワインを製造・販売していた。
しかし2018年に日本産ワインの基準厳格化に伴い、岩泉町内のうち宇霊羅山以外からとれた山ぶどうを使用していることを理由に名称をいわいずみ山ぶどうワインに変更した。現在もこちらの名称で様々な場所で販売されており、通販もあるので気になる方はこちらも是非飲んでみてほしい。
そして遂に蝙蝠穴に到着。
冬場には多数のコウモリがここで冬眠しているらしいが、そろそろ冬眠から目覚めている頃だろう。
コウモリの保護のためだろうが、写真は補正しているとはいえこの辺りは特に暗い。
写真にはできるだけ他の観光客が写らないようにしているが、この日は観光客も多い。
奥を覗けば見られるかもしれないが相手は野生動物。下手なことをして起こすのも悪いしなと思った次の瞬間、顔のすぐ近くに何やら黒いビロードのようなものが。こ、これは……
コウモリ!?
なんと通路近くどころか通路の真上、というかうっかり顔がぶつかりかけるような位置にコウモリがいた。しつこいようだがこの日は観光客も多い。よくこんな場所で眠っていたものだ。
それにしてもこのコウモリ…ものすごく可愛い。
「コウモリなんてどこが可愛いんだ?」と思われるかもしれないが、これは実物を見てほしいとしか言えない。コウモリを間近で見た経験など標本くらいで、あとは遠くで飛んでいるのを見かけた程度だったのだがこうして間近にみると想像していたよりもずっとフワッフワの生き物だ。ポケモンの例えになるが、ズバットよりもコロモリの方が遥かに実物のコウモリの印象に近い。
それに小さくて柔らかな生き物が目の前で無防備に眠っている姿は、なんというか人間の心の脆弱性を突いてくる。理性というよりも、本能の部分に訴えかけてくるタイプの愛らしさだ。
天然記念物として国をあげて保護してほしいレベルの可愛さだが、実際とっくの昔 (1938年)に指定されていた。納得である。
思わず「かわいいねぇ〜」と奇声を発しそうになったのをギリギリで耐える。そんなことをしたらこんな真っ昼間に起こしてしまう。可哀想だ。
とはいえ前述の通り、この日は観光客も多かった。そんな中でこんなにも無防備にコウモリが眠れている理由の1つは、観光客たちが適切な距離をとっているからだろう。いくら可愛いからと騒いだり触ったり、ましてや掴んだりしてしまうようならコウモリだってこんな場所では眠れない。
観光地でのルールやマナーを1人1人が守ることは、こんな形でもご褒美として返って来るのだなと思った。
そして続けて、龍泉洞の向かいにある龍泉新洞科学館に向かう。
また、龍泉洞から更に車で20分ほどいくと同じく天然記念物に指定されている鍾乳洞安家洞にいくことができる。
安家洞の営業期間は4月中頃から11月いっぱいまででこの時はまだ入れなかったが、鍾乳洞好きにはこれからの時期こちらもおすすめだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?