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ビジュアルの吸引力が強すぎるにごり酒「白うさぎ」は合法だけど危険なやつ

 ジャケ買いという言葉がある。

 元はレコードやCDなどに使う言葉で、魅力的なデザインのパッケージに惹かれ試聴せずに購入することを指す言葉だ。


 さて、昨今は情勢により数年前と比べて店頭での試飲・試食自体かなり減った。
 しかも基本的に自家用車で移動する北東北‪在住の現在、飲んだことのない酒の購入となるとネット上の評判などを参考に購入することが殆んどだ。
 しかしそんな中でも自分も店頭で見かけた魅力的なデザインのラベルや缶のデザインに惹かれ、普段は飲まない酒を評判などを確認せずに手にとってしまうことは時折ある。そして当然がっかりすることもある。

 さて、そんな中でも今年の初め、過去最高にそのビジュアルに惹かれてしまい、そのまま購入してしまったジャケ買い酒がある。
 それがこちらの純米吟醸にごり酒「白うさぎ」だ。

広口瓶にそのまま入っているという
素朴すぎるフォルム。
これにはちゃんと理由がある

 店頭で見かけた際、思わず「えっ!?合法!?」と声が出てしまった。
こちらは青森県弘前市にある白神酒造にて毎年新酒のシーズンに数量限定で作られている酒白うさぎであり、当然合法である

 一応は濾す作業自体は行っているために清酒に分類されているそうだが、かなり目の荒いザルを使用しているためしっかりと米粒が残りほとんどどぶろくのようになっている。
 また、加熱をしていないために販売されている最中も発酵が進んでおり、蓋を開けた際に勢いよく蓋が開かないように広口の瓶を使っているとのことだ。

 そんな白うさぎ、当然保管のみならず開封の際にも手順がある。
 発酵が進んでいる場合はまずは画鋲などで蓋の真ん中に穴を開け、そこから少しずつガスを逃してから開封する必要があるようだ。
 なるほど、確かにこれは普通の酒瓶ではガスを逃すのは難しいだろう。

取扱説明の書いたメモ。
これが輪ゴムで止められた状態で販売されていた
蓋を見ると確かにかなり盛り上がっている。
相当内圧が高いようだ
穴を開けると凄まじい勢いでガスが吹き出し
中の酒が吹きこぼれそうになった。
指先で穴を押さえつつ慎重にガスを抜いていく
数分にわたる駆け引きの末に
何とかガスを抜いた。
今更ながら一気に飲み切らないとダメそうだ
ワイングラスに注ぐとこんな感じ。
不透明なた目に見た目ではわからないが
発酵によりかなり強い炭酸を感じる

 飲んでみると確かに濁り酒らしく米や麹の香りはする。しかし素朴な見た目とは裏腹に、飲み口は驚くほどに軽やかだ。更に開封時に苦しめられたガスは喉越しを爽やかにしている、まさに水のような酒だ。
 微かな甘みと、しっかりと存在しながらも残らないさっぱりとした旨味が舌の上を流れた後、心地よく爽やかな苦味が一瞬だけ顔を出し消えていく。
 あまりにもするすると飲めてしまうので、実はそれほどの度数ではないのではないかと思わずラベルの度数を確認したのだがやはり15.5度とある。
 素朴な見た目に反し、雑味のない研ぎ澄まされた味わいだ。
 日本酒の例えとしては適切ではないだろうが、まるで上質なピルスナーを思わせる。この度数でこの飲みやすさである。

 美味しいうちに飲み切れるものか不安だったが、むしろハイペースに飲みすぎないように注意する必要さえある。これは危険なやつだ。

2杯目からはお気に入りの津軽金山焼の器で呑んだ。
こちらの方が粒がしっかり残っているのが分かりやすい

 どぶろくといえば遠野など岩手のイメージが強かったが、青森にもこのような酒があると知り驚いた。
 値段は手頃ながら、非常に面白く、そしておいしいお酒だった。

 数量や取り扱う店舗は限られているものの、来年も手に入るならば是非口にしたい酒だ。

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