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連載小説『エミリーキャット』

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(2018年・8月~現在も連載中)画商の彩は誰もが認めるキャリアウーマン、優しい年下の彼と婚約中。 然し本当は人知れず幸せよりも生きづらさに喘ぐ日々を送っている。彩はある日、森奥… もっと読む
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#エミリー

小説『エミリーキャット』第58章・心の眼帯

大塚梗子(おおつかきょうこ)というその少女は、 普段、温和しく無口なほうであったのでエミリ…

小説『エミリーキャット』第54章・heads or tails?

401号室は水を打ったような鎮けさで彩は自分が息をしてもその呼気が極度の静寂の中で大きく…

小説『エミリーキャット』第46章・Gloomy Sunday・暗い日曜日

目覚めて彩は暫く自分が今居る場所が一体どこであるのか、咄嗟に理解出来ずに思わず惑乱した。…

小説『エミリーキャット』第44章・草上の昼食

絹漉(きぬごし)されたような柔らかく理目(キメ)の細かい闇の被膜にしっとりと内包され、彩は一…

小説『エミリーキャット』第43章・時の橋を越えて…

ホテル・デル・コロナドの海を望むバルコニーテラスつきのバーでふたりはアイスティーを飲んだ…

小説『エミリーキャット』第41章・pie in the sky

サンディエゴ新聞のごく小さな見出し記事ではあったが、あのいかにもフェイク・ブロンドのバタ…

小説『エミリーキャット』第38章・ニューヨークの憂鬱

『……』 窓枠に両腕を突いて凭(もた)れかかり、まるで光の吹き溜まりのような遠い街を、黙って見つめていたエミリーは窓外から視線をすべらせ、 彩の眼をじっと見据えた。 『ダルトン?それ、誰のこと?』 『…ビリー・C・ダルトンって画家、エミリー、知らない? 私、ダルトンの絵を観たことがあるの…ロイとそっくりの猫が描かれていて…それに…』 『それに?』 『……それに…その猫と一緒に描かれていた少女が…』 彩はうつ向いて夜風に揺らぐ漆黒の森の繁みが波濤のように続くのを、上から眺めてい

小説『エミリーキャット』第37章・薔薇の告白

『エミリー?』そう言って彩は目覚めた。 傍の暖炉で薪がはぜる優しい音がする。だが彩はまだ…

小説『エミリーキャット』第36章・ブルー・ベルの泪

森へ入りどんどん歩くうち彩は徐々に嘘のように気持ちが凪いでくるのを感じたが、今更後戻りも…

小説『エミリーキャット』第35章・魔少女の誘惑

『ちょっとちょっと、人間のままで野原を駆け回りたかったのに』 と彩は言ったがもう小鳥の囀…

小説『エミリーキャット』第34章・マジック

食事が終わって彩は通された2階のゲストルームの浴槽に浸かり天井を眺めたまま、ぼんやりとし…

小説『エミリーキャット』第33章・ハロー・アゲイン

木曜日は学習会が行われる時がある。その為、いつもは午前中から外商部は外へ出るのだが、月に…

小説『エミリーキャット』第32章・Mirage

まだ火曜日…と彩はドレッサーの前でため息をついた。 いえ、もう火曜日、もう火曜日になった…

小説『エミリーキャット』第31章 Beautiful World

『うちは…ホテルや結婚式場や、 沢山の花が必要な固定のお客様がいて、そこへ花を車で定期的に大量に運ぶの、 うちはだから、普通の生花店ではないのよ』 ふたりは庭を歩き、やがて前庭の広々とした表玄関周辺へと近づいた。 『ここが我が家の玄関よ、 彩はいつも森の中から何故だか迷子の小鹿のようにやってくるけれど、それだと大変でしょう? 花屋の店先に面した硝子のドアーを開けて入らなくても、あの門から入って…彩が来る時は門の施錠を解いておくから…。 正面玄関の呼び鈴を普通に押せばいいのよ