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人気の教養系Vチューバーの背景にあるもの

お世話になっております、かのえのです。

ブイチューバーというと、歌をやって、雑談をして、ゲームをやって、というような形がほとんどではありましたが、昨今はもっと雑多で多様になっていますよね。そうしなければ差別化&個性を出すのが難しいと言うのもあると思いますが、今回はその中から、切り口の一つである教養系ブイチューバーについて一つお話。


教養系はやったもん勝ちなので先行者メリットのあるジャンルだと思うのですけど、一方で難しい切り口だとも思います。そのへんについて、メジャーな方々を紹介しつつ「何故彼らは伸びたのか?なぜ彼らは伸びなかったのか?」という部分について、なんとなく思ったことを書き出してみる。

まあまあ結論はわりとシンプルなお話なんですけどね。

まず人気の教養系V一人目。

儒烏風亭らでん



教養系で、最近ぱっと思いつく一番目立ってるのは彼女ですよね。細かくは別に教養系でもないんですけど、期せずして「教養を発見されてしまった」ライバーの一人かと。

儒烏風亭らでんは、ホロライブから2023年9月にデビューした、新人バーチャルライバーですね。HololiveDEV_IS(ホロライブデバイス)」のメンバー。1stユニット「ReGLOSS」所属。余談ですがカオミン氏が手掛けたキャラデザイン、萌え萌えしすぎてなくてほんと良き。

でプロフィールをみると、落語好き噺家志望のおばあちゃん子なんて書かれてて、初期は酒カスヤニカス押しをする破天荒キャラ、飲む(酒タバコ)打つ(スロット)買う(文化教養美術関連)の三拍子揃ったキャラ。

教養系という部分で注目すべきは、学芸員資格持ちであることと、そこから繰り出される、美術伝統芸能文化関連における深〜い教養。

詳細は彼女の配信/切り抜きを見たほうが早いので割愛しますが、その文化芸能知識は専門家もニヤリとするもので、それは公式(美術界隈の公式/美術館他)からさまざまなアプローチをしてもらえるほどのもの。

ホロライブはデビュー当初、美術教養関連アプローチは伸びないだろうと考えていたようですが、ところがどっこいたぶんターゲットユーザー的には、30代以上の層にもドン刺さりして結局ReGLOSSん中でちゃんと目立つようになったのがらでんちゃんなのです。

素晴らしいのは、彼女の情報発信の際のバランス感覚ですよね。破天荒キャラではあるんですけど、文化関連のセンシティブな部分において地雷を踏まないというのも教養の高さがうかがえる。悩みは、品行方正な文化界隈を相手にしなければならないので、破天荒キャラを封印しがちにしなければいけなくなったあたりとか。

ホロライブでなければもちろんここまで注目されなかったのかもしれませんが、配信者として活動をしていくことを考えた場合、各種の文化振興、界隈のRPに今後彼女が引っ張りだこになることは大いに想像出来ますよね。

で、何故伸びたのか?という話については、当たり前の話でいえば──兎にも角にもホロライブだから、というのが一つ。詳しくは後述します。

続いて、この方。

犯罪学教室のかなえ先生

かなえ先生は、昨今話題のニュースについて、犯罪学方面からの丁寧なアプローチと面白い語り口で人気のライバーですね。彼も最近様々なところでよく見かけますよね。

教養系というと一瞬「ん?」となるかもしれませんが、豊富な知識をバックボーンとする点において間違いなく教養系のVだと思っています。

プロフィールとしては、法務省の職員として少年院の教官をやっていたことがあり、前述したらでんちゃんと同じく、現場経験と教養をセットで持ち合わせた、稀有な配信者。

得意なことは少年犯罪関連ですが、その深い知識と情報収集能力から少年犯罪以外も広く扱う。

また、ビジネスマンとしての側面があり、企業関連の「振る舞い」についても、正しい見識をもっているライバーさんです。本来は経営者向きの気質であろうと思いますが、それが自ら前面に出ているというのは面白いですね。
配信スタイルは、通常のVTuberと違って、ガチめの犯罪解説、考察形式で、加えて軽妙な切り口、豊富な知識量、そして歯に衣着せぬ物言いで人気を得ている。

こちらはらでんちゃんとは違って、バランス感覚で世渡りをするというよりは、ファンもアンチも、正当な法律知識と、社会見識、図太い神経でもって、相手をグーで殴り倒すストロングスタイルの配信者です。だからこその人気なのですが、一方でちゃんと良識あることから、ABEMAニュースへの出演や出版ほかメディア関連との関係も深まっています。

本も出してます↓。

彼の人気の秘訣は、法的根拠もちゃんとある豊富な知識と、取材力、そして最新の情報をすぐに解説してくれるフットワークの軽さか。

さて最後に理系からもう一人。

宇推くりあ

個人で活動する教養系バーチャルYouTuberで一番目立っているのは彼女でしょうか。

コンセプトは、ロケット工学アイドルVTuber。活動は、ゲームや歌も歌いますが、メインは世界各国のロケット打ち上げ実況。彼女を追いかけると、だいたい世界中のロケット打ち上げライブ配信を一緒に追いかけることができます。

ちなみにプロフィールとしては、「ラブライブ!」のスクールアイドルに憧れて惑星クラリスからやってきた宇宙人で、活動は2020年10月10日から。もう4年目っていう。活動方針は、ロケット関連に興味がある人に、VTuberとロケットをしってもらいたい、とのこと。

前述したとおり、彼女の配信はロケット打ち上げライブ中継が多いのですが、特筆すべきは、そのロケット打ち上げにおける、各種関連知識の豊富さ。

航空宇宙関連の専門用語はもちろん、諸々の打ち上げプロセス、各国の航空宇宙産業のスタイル、文化背景その他、明らかに素人ではない言動の数々が、界隈の人間の心を掴んでいます。

加えて、航空宇宙産業関連の発達を真に願っているようで、2024年のH3ロケット2号機打ち上げ成功の際には、配信中に嬉しさから号泣までする気持ちのいれよう(H31号機失敗もあって)。その姿は、ちょっと心に来るものがありました。

らでんちゃんもそうだけれど、教養系配信者は、そのジャンルが本気で好きな人がやるべきで、それは正しい形だよな、と思わせてくれるライバーですね。彼女は、すでに、JAXA他、宇宙関連の案件を始めていて今後も活動が期待されますね。

以上、いままで上げた三名が、教養系といったところである程度人気を得ていて今後盤石であろうVTuberです。

この他でいうと、星見まどかさんとか、北白川かかぽさんとか、まあまあ数名いる感じで、その下?には多くの更新するも伸び悩む教養系VTuberというのが存在しています。

で、なにが人気の分かれ目となったのか?

教養系のVTuberって本当はむずかしいと思うのですけれど、何がちがうのかというと、もうね、この3人と他をくらべた際に圧倒的にエンタメ力が違うんですよね。

エンタメ力というのは、小難しい専門的ジャンルのお話を扱いつつも、飽きさせず楽しませることができるかって話です。

特に大事なのは一般人へのアプローチです。一般人は難しい用語なぞ飛び交
ったら一瞬で睡魔に襲われます(僕がそう)。

この三人は、どれも一般視聴に耐えるんですよね。

まずらでんちゃんの補足。

らでんちゃんは、本人自身の魅力や物事の丁寧な解説はもちろんですが、それ以上にホロライブという「楽しませることのノウハウをもった」集団のFBをえられることが本当に大きいと思う。

これは細かくは箱としてのPRだけでなく、バナーや配信スタイル一つとってもノウハウをもっていて、そのFBを受けられたことの恩恵が大きいと思うのです。

ホロライブは先行者だけあってノウハウや事例の宝庫です。「教養系でこういう配信をしたい」⇒「ならこうしたらいいんじゃないか?」の助力が半端ないと思うのです。その結果が配信の隅々に現れている=飽きないんですよね。

そしてもちろん、そういう彼女が、他の箱内のライバーと絡むことも面白さにつながっている。

これはホロライブという箱を含むエンタメ総合力が彼女の能力をさらに引き出して、一つ上のステージに押し上げているって話です。

もし彼女が個人勢だった場合、おそらく単に美術をひたすら解説して睡魔を誘い、キャラを知られることもなく、フォロワーも伸びなかったと思われます。

続いてかなえ先生。

彼もまたエンタメ力が高いですよね。

犯罪学という、これまたそのまま拝聴したら睡魔しかイメージできないジャンルにおいて、ニュース&事件ごとのトピックの要点をまとめ、もり立て、世にはびこる悪い意見については、法的根拠や社会的合理性をもって、殴り、煽り、大事なものはしっかりと持ち上げます。

その言葉の裏には、元少年院指導教官として世を憂う真摯な気持ちと信念があるのもまたすごい。口当たりの良さや場渡り的な正義感ではない、野太い軸があることが配信に価値を与えているっていう。

腹をくくった人間が本気で何かを発信することというのは「スリル」なんですよね。そしてスリルはエンタメなんです。だから、かなえ先生の配信はみていて楽しいのです。

そして、最後に宇推くりあちゃん。

彼女のスタイルは好きこそものの上手なれ、です。宇推くりあちゃんについては、個人的には彼女自身にそこまでエンタメ力がある訳では無いと思っています。配信も一見さんお断り的な専門用語が飛び交いますし、一般向けではない部分も多い。

じゃあなんで彼女が伸びたのか?

それはエンタメを借りてきたからなんですよね。

彼女のエンタメ力はそこまで強くない代わりに、彼女が扱う題材である「ロケットの打ち上げ」がめちゃくちゃエンタメなんですよ。

ロケットの打ち上げは、専門用語を知らない一般人がみても「なんかスゲー」となるのです。彼女は、それを丁寧に気持ちを込めて解説する。これがセットでエンタメになっているんですよね。またロケットの打ち上げに涙するひたむきなロケット好き女子の姿も、視聴者の気持ちを刺激するエンタメになってるっていう。

教養系エンタメというのは、内発的なもの、外的総合力、借りてきたもの、なんでも良いのです。ただし、あることで圧倒的に一般層の心を掴むものである必要がある。

そういうものを感じさせるのがこの三人ってことです。結局ライバーに求められるのはエンタメ力なんですよね。

そうして見ていくと他の教養系のライバーが、いかにしんどいかよくわかります。

だから、教養系をやっていくのであれば、その教養ジャンルごとに一般人を巻き込むエンタメをいかに活動に重ね合わせて提供していくのか、というのが一つの方策だよな、と。

以上、伸びる教養系ライバーの背景にあるもののお話でした。

どうぞよろしくお願いいたします。


らでん絵:かのえの作




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