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(22)実らない恋フェチ

先日、

ほんの少しだけふたりで過ごせた夜の、須藤さんとのやりとり。

キミにはダンナさんがいるから…

と、すごくすごく、遠慮の体制を崩さなかった彼が、

そのふたりきりのひとときの中で、少しずつわたしの気持ちに応えるようにほぐれていって、

…会います。
これまでと同じように。
お互いに、無理しないで。
…かの子さんは、無理してると思うけど…

と言いながら、遠慮がちに、少し、なびいてくれた。

(これまでと同じように、ということは、ほとんど会えないということだけれど笑、気持ちは伝わった)


とはいえ、“なびいてくれた”、なんて感じ方、に、ふと我に返る。


ずいぶん歳上の、

いつも疲れていて、仕事人間で、わたしのことはいつもきっとほとんど思い出さないような彼に、

どうしてこんなにも、

好きがなくならないのか。


どうしてこんなにも、彼の愛が欲しいのか。


そんな、わたしのことを大切にしてくれない人にはさっさと見切りをつけて、

ほかの、もっと若いちょうど良い人をみつければ良いのに。

よく考えてみると、

ほかの、求愛してくれた七尾や清瀬も、

わたしに対するスタンスは、須藤さんと同じようなものだ。

でも、彼らにはまったく、寂しさや、やるせなさを感じない。


須藤さんにだけ、

焦げ付くような、ヒリつくような、心をまるごと持っていかれるような、気持ちになるのだ。

もちろん、口づけのときの溶けるような感覚も、特別に違う。


簡単に割り切れないのが、恋なのだな。


でもきっと、須藤さんが急に、

すべてを捨てて、こちらへすべての愛を向けてくれるとしたら、

それはそれで、

ひるんでしまうと、思うのです。笑

それは全然、違うのです。


なんて都合の良い恋心なんだろう。


彼がわたしに振り向かないから、

こんなにも、

彼を想い、気持ちを募らせることができているのです。


わたしは、”実らない恋”だからこそ、

こんなにも伸び伸びと狂おしく、

彼のことを想い続けていられるのかもしれない。

長年一緒にいる夫に対しても、

"実らない恋"のような、

ずっと片想いのような気持ちでいるのだから、

これはもう、

完全なるわたしの趣味的思考だ。

でもこんなにも誰かを好きになれることって、

もしかしたら人生で最後かもしれない。

だから、

全身でこの"実らない恋"をとことん味わい尽くしたい気も、してる。

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