ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

マグさんと見た

ファンタビ、本当に優しい気持ちになるし一作めはただただ楽しい。


1番恐ろしい動物

ニュート・スキャマンダー、改めて見ると序盤は本当に人間に興味がないし、こいつが1番心を閉ざした動物の挙動をする。ファンタスティック・ビーストはジェイコブが指を噛んでくるニュートに「怖くないよ…大丈夫だよ…」ってする映画なんだなって見返して思った。

ニュートが「1番恐ろしい生き物は人間だ」って明言して、魔法省に捕まった時も自分の身の潔白ではなく「その子達を傷つけないで!危険ではないんだ!」って叫ぶ背景には明らかに人間不信になるに足りるエピソードがふんだんのはずなのに「オブスキュラスの女の子を助けようとしていた」「クリーデンスに優しく声をかける」「ティナを見捨てない」「クイニーを拒否しない」「ジェイコブに歩み寄る」をこなしていて、全然人類のこと見捨ててない。
それはそうとうっすら人類に興味がないというか期待しないようにしているというか自身が誰かに理解されることに対しては諦めがあるし、そもそも言葉数が少ないのでいろんな人が魔法動物を見て「それは一体?!?」ってニュートに聞くけど大抵は魔法動物の名前しか教えてくれない。この言動が「前は色々説明もしていた」けど「大抵は鬱陶しがられるし黙れって言われてきたから」とかだと悲しくなってしまうが、私が勝手に悲しんでいるだけでニュートは「人間は水の中で息ができない」と同じ場所に「魔法動物の説明を聞けない」ってメモしてるだけな気がする。

魔法動物を世界を巡って保護してる関係なのか、それともグリンデルバルドが闊歩しているこの時代において大抵の魔法使いがそうなのかは明らかじゃないけどニュートがめっちゃ強い。ハリポタを見た直後だと尚更そう思う。
あとハリーたちが不死鳥の騎士団あたりから他人に対して攻撃性のある呪文を使うのを躊躇わなくなっていくのに対してニュートはその辺の人を医師にするのに初めから躊躇いがないのもある。マグルの銀行員をスッと石にするな。躊躇えよ。
あとハリーがよく使う麻痺の呪文は多分自然に麻痺が治るんだろうけど石にするやつはルーナが使ってた「終われ」みたいな呪文をかけてもらう必要がありそうなのもめちゃくちゃ経験を感じる。マグルに呪文を使用した際に、麻痺が勝手に治って歩き回られたら困るけど石たなってたらどこかの魔法使いが処置しなくてはならず、その時に記憶処置もしてくれるので自分に手間がないし法も犯さなくていい。ここまで全部は勘なので一切の正しさはないです。

人間のことを「そういうものだ」として捉えてるニュートが受け入れてもらえないので受け入れてない。っていうのはありそうで、ニュートはつねに「観察」と「模倣」を繰り返す人で、今回もフェロモンをつけて求愛ダンスをして気を逸らすシーンがあるしここから先も動物に対して模倣で歩み寄るシーンが沢山あるけどそれと同じくらい人間に対してかなりしどろもどろに「模倣」するから初めの方は話を聞かず拒絶を繰り返すティナに対して話を聞かず拒絶するけど、ぜーんぶ受け入れて笑ってくれるジェイコブの横では色々話すし笑ってくれたりするので、ハリポタに出てくる大人と比べてはるかに器用で個人をしっかり区別して捉えている節がある。
この辺の「人間にうっすら興味がない」「個人個人を切り離して捉えている」「誰に言われても大切なものが揺らがない」あたりがダンブルドアのお気に入り要素なんだろうなーと思う。ハリーとかかなり真逆だし…。

ジェイコブがニコニコでトランクの中を歩き回って一切の拒絶を見せずに受け入れて、楽しそうに説明を聞いてくれるところにときめき続けているシーンかなり好き。
この時ニュートは「この人は人に好かれるんだろうなあ」と思っているのがすごい良い。ジェイコブの魔法動物への理解と許容が「彼が良い人だから」って思うことって「自分と同じで魔法動物が好き」の期待を一旦おいておいた結果な気がしていて、「性格がいいから魔法動物も拒絶しない」んだなってニュートの中では処理しているっぽくてこの辺りにちょっと人間不信というか「他人は魔法動物に興味がない」って理解がちらついている。
実際ジェイコブはハリポタを含めた上でもトップに君臨しうる善人だし、未知に対して目をときめかせる人なので魔法動物に限らず全てにキラキラした瞳を向けるんだけどこの問いに対してジェイコブは「それはあんたもだろ」って返して「好ましい人間の興味関心を否定しない」まで持ってきてくれるのでジェイコブはパーフェクト回答しかしない。
この二人の友情がめちゃくちゃ好きなんだよな〜!!ファンタビはハリポタより魂のあり方の話をしてくれるので大好き。

クイニーが人の心を読める上であんなに可愛らしくて強いのは当然メンタルが強いからなので魔法を使うシーンがあまりなくても彼女は窮地に陥らないし、人の心を読めることは息をすることと同じなのでそれを使うことに躊躇いがないし、だからこそジェイコブに惹かれてしまうって設定の全てがクイニーのあり方を表していてファンタビの人物描写がめちゃくちゃ好き。
開心術は意志の力で拒めるっぽいので、クイニーが心を読めることを苦に思ったり、それに傷ついていたらあんなにとろけるような見た目と発言を選ぶわけないのであの「はわわ」みたいな女、かなり強かに人の心を読んでいるしその上であんまり気にしていない。
いろんな人の心を読めるからこそ金輪際現れない一番星の生まれ変わりみたいなジェイコブにめろめろになって帰ってこれないのでクイニーとジェイコブの二人は人工の魔性が天然の魔性に負けているペアなのでかなりいい。ファンタビにはダンブルドアとかグリンデルバルドなどの人工人たらしも出ますが基本的にジェイコブに勝てない。やっぱり1番怖いのは人間なのかも。

実感が嫌

ファンタビ一作目と言えばディテールに富んだ虐待描写なわけですけど…。
浮浪児の世話をしている施設が激ヤバ思想の持ち主であり、虐待を絶えず行なっている上で洗脳にも余念がないの、かなり嫌。そいつらの団体名が「セイレム魔女狩り集団」なのも輪をかけて嫌。だけど、だからってその集団をまとめてみてはいけないという話なので…個体に寄り添い声をかけ続けろという話なのでこれくらい「嫌」な組織にする必要がある。
あと長官がクリーデンスに対してしきりに「君は特別なんだ」「私のそばにいて欲しい」を繰り返して酷使するのもだいぶ酷いし、愛を受けてない子供に対してスキンシップを繰り返して受けた傷を無かったことにするのに欲しい言葉は一切くれないまま「いつか言ってくれるかも」を期待させ続けるのも嫌な人身掌握だった。
クリーデンスが長官に抱き締められた後、体が離れていく方向に顔を寄せるシーンがあって、この数秒に「愛に飢えている」が詰まっていた。クリーデンスは「自分は特別だ」って思うことでかろうじて生きていたけど彼が本当に欲しいのは単に隣にいていつでも抱き締めてくれて価値なんてなくてもいいって言ってくれる存在であることがめちゃくちゃわかるからすごい悲しくなる。

終盤に長官が「君は奇跡だ!」って語りかける横でニュートが「君みたいな子を見たことがあるよ」って話しかけるのが印象的だった。あの言葉はニュートにとってなにか確信があって選ばれた言葉ではないけど「すでに自分のような存在を受け入れている」大人の存在がクリーデンスには必要だったからあそこでニュートの言葉が届くし、前もってクリーデンスに気をかけて抱き締めて「絶対に助けるからね」っめ言っていたティナの存在も思い出させてくれる。
あのシーン、どう考えても勝ち確なんだけどニュートとティナの言葉選び能力というか人に寄り添う力が二人合わせてもグリンデルバルドの言葉の力に勝ててないので勝ちになかなか至らない感じがあって味がある。ニュートとティナ、言葉に抑揚と自信がない。

これからの展開も知ってるしハリポタも直近で見たのでグリンデルバルドが喋るたびにアルバス・ダンブルドアのことを思ってる。2作目も楽しみ

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