見出し画像

無限賽銭

「おいガキ!なんしとんねん!」

駆け寄ってきた住職がガキの頭をひっぱたく。

不気味なことに、見つかってもガキは逃げようとしなかった。

「痛っ!なんすんねんハゲ!」

「誰がハゲじゃクソガキ!おい賽銭泥棒はお前やったんか」

「ドロボーちゃうわ!よう見てみぃ」

ガキが顔の前に、ヒモに吊るされた50円玉を持ってくる。

「なんやこれ?催眠術か?」

「ちゃうわ!見とけハゲ」

「ハゲ言うなガキ」

ガキが、ヒモを持った方の右手で、50円玉をつまむ。

ヒモの50円玉じゃない方の端は、ヨーヨーのように右手の中指にくくりつけてある。

つまんだ50円玉をひょいと賽銭箱へ向かって投げると、賽銭箱の中に入ったかと思いきやビヨーーーンとガキの右手におかえりしてきたのである。

そこで初めてヒモはヒモではなくゴムなことがわかった。

「これ無限賽銭やねん」

ガキは一連の動きを得意げに繰り返している。

「なにが無限賽銭やケチくさい。けったいなことしとらんとはよ帰れ」

「母ちゃんが死なんようにお願いしとんじゃ」

「…」

「もうちょいやらせてくれ」

「母ちゃん、なんの病気や」

「さぁ、言うてくれへんねん。言うてくれへんってことは、ヤバイんとちゃうか?」

「…なるほどな」

「ほんまは500円でやりたいんやけどな、できひんねん」

「なんでや」

「ハゲはアホやな」

「誰がアホや。ほんで誰がハゲや」

「マジで言うてんのか?」

「なにがやねん」

「500円でできひん理由よ」

「…え、あぁ、ないんか、小遣いが」

「もうええわ、アホでも住職なれるんやな」

「クソガキが。ずっとやっとけ。暗なる前に帰れよ」

「はーい」


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

サポートはクレジットカード支払いだと最高還元率85%くらいになります!1000円サポートで850円とかです!これはでかいのでよろしくお願いします!