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たぶん、あなたの予想とは違うかも〜数字で見る2022年時点の世界のデジタルノマドの実態

※この記事は2022年9月19日に公開したものを再録しています。

このところ、デジタルノマドに関する記事を書いたり講演したりすることが多い。

だいたいが「ワーケーション」がテーマの文脈で、リモートワーカーのワーク(ライフ)スタイルを紹介するためにデジタルノマドという人たちの話に行き着く。どうしてもそうなる。まあ、必然ですね。

ただ、(日本で言ってるところの)ワーケーションとデジタルノマドをつなげて考えている人は少ないかもしれない。日本で、ですけど。

そもそも、移動(旅)しながら仕事もするというのは、もう何年か前から世界中のデジタルノマドと呼ばれる人たちが自由に国境を超えて実行していたことであって、今、日本でにわかに「ワーケーション」などと言って、企業に勤める会社員が会社の制度の中で、ある種、「やらされる」こととは全然別物。

そういえば、2年以上前にこれを書いて、「日本の企業主導型の(間違った)ワーケーションは2年もすれば廃れて誰もやらなくなる」と言ってた。

で、実際にやってみて企業も、そして関係人口づくりに役立つと期待していた地方自治体も、「やっぱ、こら無理やな」と判ってきた。ようやく。

ワーケーションてのは誰に指示されるのでもなく、個人が自分で行きたいロケーションを調べて、スケジューリングしてブッキングして、自律的に休暇を取ってやるもの。それのお手本がデジタルノマド。

ところで、そのデジタルノマドって、どんな人なのか?今、地球上にどれだけいるのか?どこの国の人で、どこの国に行ってるの?どんな仕事してる?で、旅しながら仕事していくら稼いでる?それがホントに未来の働き方?と、よく考えたら、実はあんまりその実態は知られていない。

ということで、デジタルノマドの現在地点についていくつか数字を挙げてチェックしておこう、と思い立ってあちこち漁ってたら、世界には同じこと考える人がいるもので、すでに膨大なデータが溢れかえっていた。うへ〜。

そのうちの3つのサイトからピックアップしてデータを以下にダーっと羅列して紹介する。サイトによって数字にバラツキはあるが、傾向としては同じ方向に向いていた。

今回参考にしたサイトは以下の3つ。

30+ Amazing Digital Nomad Stats, Trends and Facts 2022
41 MUST-KNOW Digital Nomad Statistics | 2022
15 Digital Nomad Statistics and Curious Trends [2022 Update]

では。

デジタルノマドって、いま何人いる?

・世界では、2021年で3,500万人のデジタルノマドが存在する。
・2035年には、デジタルノマドの数が10億人を超えると予想されている。
・アメリカのデジタルノマドの数は、過去数年間で2倍以上に増加しており、2018年の480万人から2021年には1,100万人を超えたと言われている。(一部、1550万人というデータもある)
・6,400万人のアメリカ人がデジタルノマドのコミュニティに参加したいと思っており、1,900万人が今後3年間に実際に参加する予定。

(参考)
・パンデミック以前は、自宅で仕事をする社員はわずか7%だったが、2020年7月(パンデミック開始の数ヶ月後)には、この数字は42%に上昇した。
・デジタルノマドの66%は従来のリモート社員で、個人事業者は34%。これはパンデミックによるリモートワークブームによる変化、とするデータもある。

デジタルノマドの人口統計

・デジタルノマドの男女比はほぼ均等(男性50.19%、女性49.81%)。
・アメリカのデジタルノマドの大多数は白人(70%)。
・アメリカのデジタルノマドは79%が男性で、20%が女性。1%がその他。
・そのうち70%はヨーロッパ系、7%はヒスパニック系、14%はアフリカ系アメリカ人。
・世界的にもデジタルノマドの多くはヨーロッパ系

年齢層

・デジタルノマドの平均年齢は32歳。ミレニアル世代に多い。
・全体の42%は25歳から40歳の間。
・Z世代からミレニアル世代後半までの若い世代もいるが、2番目に多い年齢層は40歳以上。
・Z世代とベビーブーマーはそれぞれ19%と17%で拮抗している。
・つまり、各年齢層にデジタルノマドは存在する。

(参考)
・どこのページか忘れたが、73歳で現役のデジタルノマドが紹介されていた。

デジタルノマドの主な職種

・デジタルノマドの33%は自分のビジネスを持っている。
・(他の調査では)18%は自分の会社を持ち、35%は企業に雇用され、28%はフリーランサーである。
・デジタルノマドに最も適した業界はIT(12%)、次いで教育・研修(11%)、コンサルティング・コーチング(11%)。
・以下、主な職種。
 マーケティング
 IT開発
 デジタルデザイン
 ライティング(コンテンツ/コピー)
 Eコマース
 オンラインクラス
 フォトグラファー
 バーチャルアシスタント
 通訳
 ジャーナリズム
 ビデオグラファー
 コーチング
 ソーシャルメディア・マネージメント
 ビジネス・コンサルタント
 建築家
・自分のビジネスを運営したり、株式や暗号通貨に投資したり、一時的に滞在する場所で短期的または季節的な仕事をしたりすることで、より高い収入を得ることもできる。

就労時間

・デジタルノマドの70%は週40時間以下、33%は週40時間以上働いている。
・デジタルノマドの4%は、週10時間未満の労働で完全に自活できる。
・45%が前年よりも労働時間が増えたと主張している。

(参考)
・フルタイムのリモートワーカーはデジタルノマド全体の中で大きな割合を占めているわけではない。
・アルバイトの場合、複数の会社に就職する可能性があるので、1週間の総労働時間は1社に常勤している人よりも多くなる可能性がある。
・長時間労働に関しては、ノマドの33%が1日の終わりに仕事から切り離すことが難しいと回答している。

気になる収入ってどう?

・平均的なデジタルノマドの年収は119,423ドル。
$25,000未満 / 年  6%
$25,000 〜 $50,000 / 年  18%
$50,000 〜 $100,000 / 年  34%
$100,000 - $250,000 / 年  34%

$250,000 / 年以上  8%

平均値 $119,423 / 年
中央値 $80,000 / 年

・デジタルノマドの49%が前職と同じ給与(またはそれ以上)を得ている。
・アメリカのデジタルノマドの44%は、(生活費を抑えながら)年間75,000ドル以上の収入を得ている。

※年収については末尾に追補。

満足度

・デジタルノマドの81%は、このライフスタイルに非常に満足している。
・25歳から40歳までの人の69%が、他のどんな会社の福利厚生よりも、リモートワークができることを選ぶと回答している。

生産性について

・デジタルノマドは、企業や事業所にとって従業員の生産性を35%向上させている。
・55%の企業経営者が、リモートワークは生産性に悪影響を与えないと回答。

※「生産性」という概念自体がデジタルノマドの職種にマッチしない、と思うけれど。

デジタルノマド歴

・多くのワーカーは、デジタルノマドのライフスタイルに比較的慣れていない。
・デジタルノマド全体の3分の2は、リモートワークを始めてから1年未満。 ・デジタルノマドの大多数(53%)は2年間リモートワークをする予定だが、34%は1年以下しか計画していない。

※これはコロナ禍の間における調査なので、従来、オフィスワークしていたワーカーの回答が多かったものと思われる。が、急増していることの裏返しでもある。

学歴

・デジタルノマドの83%は概ね大卒。
・6桁の給料を稼ぐ(あるいはそれに近い)デジタルノマドは、通常、需要の高い分野の学位を持っている。

※インドネシアがデジタルノマドビザを発行するに際して、STEAM(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、数学)の分野に強いミレニアル以下の世代の誘致を前提としていることとも一致している。

家族構成

・デジタルノマドの多くは既婚者(61%)で、未婚者は39%。
・デジタルノマドの63%は交際中で、20%は子供と海外に住んでいる。
・デジタルノマドの26%だけが18歳以下の子供を持つ。
・子供がいる人は長期の出張を避ける傾向がある。

滞在先での子供の教育

・ノマドの子供の大半は公立学校に入学している。
・ホームスクールに通うか、オンラインで学ぶこともある。

移動歴・滞在期間

・デジタルノマドの54%は、年に1~2カ国しか訪問していない
・デジタルノマドの多くはゆっくりと旅をし、年間5カ国以上訪問する人は17%に過ぎない。
・デジタルノマドの80%は3ヶ月〜9ヶ月、66%は3ヶ月〜6ヶ月の間に1つの場所に滞在する。
・デジタルノマドは平均して6ヶ月ごとに移動する。
・デジタルノマドの中には、1つの場所に数日間滞在することを好む人もいれば、数ヶ月間滞在する人もいる。
・1年以上その土地に滞在し、駐在員のような生活を送ることを好む人もいる。

デジタルノマドの傾向

・若いデジタルノマドは旅行が好きで、他の人よりも早く違う土地に移動することを好む。
・長時間拘束されることを嫌う。
・ノマドは食費の安い場所に住む。
・男性のノマドの74%が肉類を食べる。女性の47%は肉を食べない。12%のノマドはベジタリアン。13%がヴィーガン、5%がペスカタリアンと言われている。

デジタルノマドはどこに住んでいるのか?

・ノマドの大半はホテル(51%)に住み、次に友人・家族と(41%)、Airbnb(36%)、車・RV・バン(21%)、ホステル(16%)。
・2021年にはバンライバー(バンで寝泊まりしながら旅をする人)が260万人に増加し、アメリカのデジタルノマドの17%を占める。

※バックパッカーといえば、ドミトリーと相場が決まっていたが、現代のデジタルノマドは必ずしもそうではない。

人気/不人気のロケーション

・2021年、個人的な満足度に基づき、台湾がデジタルノマドに最適な国であると報告された。これにメキシコ、コスタリカ、マレーシア、ポルトガルが続く。
・一方、イタリア、クウェート、南アフリカは、ノマドライフを提供するという点で、最も低い支持率となった。
・デジタルノマドは、エキゾチックな場所に集まってくる。東南アジア(特にバリ島とタイ)、コスタリカ、カリブ海などは、最も人気のある目的地の一例。

※あるサイトでは日本(東京)もデジタルノマドに相応しくないと挙げられていた。理由は「非常に人気のある都市だが、日本の国のために働くのでなければ、長期滞在のビザを取得するのは難しいかもしれない」。だから、デジタルノマドビザを日本も早く発行すべき。

悩みと課題

・リモートワーカーの約50%が、高速で信頼できるWiFiを見つけることが最大の課題であると回答している。
・独立したプロフェッショナルの9%が、気が散ることなく、モチベーションを維持することが困難であると感じている。
・その他の困難としては、孤独(33%)、過労(33%)、キャリアアップ(25%)、異なるタイムゾーンの同僚とのコミュニケーション(20%)など。

(参考)
・しかし、海外在住のリモートワーカーの多くが帰国する理由の第1位は「寂しさ」。判る。

デジタルノマドに対する関心度

・「デジタルノマド」という言葉は、2019年1月から2021年4月にかけて、Google検索で247%の伸びを示した。デジタルノマド生活への人々の関心がますます高まっている。

蛇足として

どうですか?思ってたのと違うということもあったのではないだろうか?

ひとつ、収入に関して補足しておくと、上記の数字とは別に、

・デジタルノマドの平均年収は、51,116ドル。
・男性は女性に比べて若干収入が多い(年間$55,744に対して$46,488)。

というデータもあったけれども、他のソースを見ても、少なくとも年収に関しては上記の数字が体感に近い。

というか、デジタルノマドを昔のバックアパッカーの貧乏旅行と同じと考えている向きがいまだにあるが、実際は違う。忘れてはいけないのは、彼らは仕事、生業、ビジネスを抱えて世界を移動している、ということ。

前述のように、多くが自分の時間とビジネスをコントロールしているれっきとしたビジネスパーソンであり、その結果として5万ドルから25万ドル稼いで旅に出ている人が7割近くいる、と見たほうがいい。

ただし、その一方で「リモートワーカーのうち、オフィスで働く場合よりも収入が多いのはわずか18%」「ほとんどのデジタルノマド(46%)は、自分の収入が少ないと報告している」というデータもあったことを付記しておく。

お金で思い出した。面白かったのは、少なくとも6ヶ月を海外で過ごすデジタルノマドは、「食費」「交通費」などのコストを削減できるので、年間2,500ドルから4,000ドルの節約になる、という報告の中に「子供やペットの世話」も含まれていた。あー、必ずしも家族と一緒にノマドする人たちばかりではない、ということね。

それと「やっぱり」と思ったのは、デジタルノマドってやたらあちこち移動しているようなイメージがあるみたいだけど、その多くが「年に1~2カ国しか訪問していない」し、「80%は3ヶ月〜9ヶ月」の間に1つの場所に滞在している、という点。

むしろ、予定をギュウギュウ詰めにして、時間ばっかり気にしながら移動せず、ゆったり腰を落ち着けて、予定していなかった「余白」を愉しむということ。オトナ。

何かにつけ忙(せわ)しい日本で最近流行りのアドレスホッパーとは、明らかに違うこの時間間隔を身につけたいものです。

ところで、パンデミックがやや落ち着いて、またぞろ世界中でデジタルノマドが動き出している。いずれ、彼らに人気のロケーションと、彼らがよく利用する情報サイトをまとめてみたい。

それでは。

(Cover Photo:Selina)

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