スベり高等学校【毎週ショートショートnote】
その高校に今までなかった野球部が新設されて、初めての県大会出場だった。中学野球の有名選手もいないし、それほど強そうにも見えない。
まぁ1回戦で敗退かな、と誰もが思った。
1番のAくんが打席に立つ。投球をよく見て四球を選んだ彼は、1塁ベース手前で足からスライディングした。
「おいおい四球だぞ」客席はざわめいた。
2番のBくんはレフト前ヒット。余裕で1塁に向かうが、ここでもスライディングでベースを蹴る。
「なんだあいつら」相手チームの監督がベンチから身を乗り出した。
3番のCくんはホームランを放った。1塁、2塁、3塁は、さすがに普通に走っていたが、本塁はやはりスライディングで踏んだ。
相手チームはあっけにとられている間に負けてしまった。
実は彼らの意志とは関係なく、出塁する時に体がスライディングになってしまうのだ。昔在籍した、スライディングが怖くてできず、辞めていった部員の怨念らしい。
やがて誰かが呼ぶようになった「スベり高等学校」。
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